大学院進学の際に日本の大学院に興味を持つ方もいるでしょう。日本の大学院に進学すれば、新しい環境、自分の国とは異なる文化や価値観の中で興味がある内容について研究することになります。しかし、大学院に進学するためにはどうすればいいのか、何に気をつけるべきか、知りたい方もいるのではないでしょうか。
この記事では留学生が日本の大学院に入学する方法と注意点、家を探す方法や学生生活に役立つ制度について解説します。
留学生が日本の大学院に進学するメリット
日本の大学院への進学にどのようなメリットがあるのか、3つのメリットを解説します。
最先端の研究に携われる
日本には数多くの世界的に有名な大学院や研究機関があります。過去にも世界初の青色LEDの実用化や、iPS細胞の開発など著名な研究成果を残しており、工学や生命科学などの分野で確かな研究開発力を持っています。日本の大学院で学ぶことで、各分野の第一人者と研究をする機会を得られるでしょう。
キャリアの選択肢を増やせる
日本には自動車産業や半導体、ロボット工学などの分野で世界最先端の技術を持つ企業があります。日本の大学院に進学すれば、そういった企業の人々と繋がりを持ったり、直接訪れたりする機会が得られる可能性があるので、キャリアを広げやすくなります。最先端の技術を持った企業で働くことは、とても有意義な経験となるでしょう。
日本文化への理解を深めることができる
日本には固有の文化があり、それらに直接触れることでより深く理解できるでしょう。多種多様な国の文化が合わさった料理や、古くから残る寺社仏閣、世界に影響を与えた漫画やアニメーションなど、さまざまな日本文化に直接触れる機会を得られます。
日本の文化に触れる貴重な体験ができることは、日本の大学院に留学するメリットです。また、研究を進める中で直接教員や生徒と交流する機会があるのも日本の大学院に留学する良さだと言えます。
留学生が大学院に入学する方法
ここでは日本の大学院に入学する方法を解説します。
学びたい分野の学位を取る
日本の大学院に入学するには、原則としては16年の教育課程を修了し、学士(Bachelor)、もしくはそれに相当する学位を取得する必要があります。まずは自分の国の大学で勉強し、学士の学位を取得しましょう。
また、どの分野の大学院にも進学できますが、一部の大学院によっては、特定の分野の学士号が必要になる場合があります。自分が行きたい大学院に進学するために必要なこと(出願資格・入学資格)を満たしているか確認しておきましょう。
大学院入試に合格する
進学したい大学院を見つけたら、その大学院に出願しましょう。大学院によっては、外国籍(日本以外の国籍)を持つ人を対象にした入試(外国人留学生入学試験)を実施しているところもあります。出願の際には、学部の成績証明書や卒業証明書などの書類が必要になるので準備しておきましょう。
また、日本語能力を証明する書類(JLPT(日本語能力試験)やEJU(日本留学試験)のスコア)の提出を求められる場合もあるので、事前によく確認しておく必要があります。
大学院に出願した後に入試を受け、合格すれば入学できます。大学院入試の試験科目は、大学院のホームページなどにある入学試験要項(募集要項)に記載され、公開されています。筆記試験(筆答試験)と面接(口述試験)の両方があることが多く、日本語で試験が課されることも多いです。
筆記試験では出題範囲の内容を理解していること、面接では志望動機を話せることが重要になります。試験科目や出願の条件は大学院によって異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
費用を用意する
大学院に留学するための費用をどうするかも考えておきましょう。大学院留学には次のような費用が必要です。
- 入学費…国公立は28万円、私立は20~30万円程度
- 授業料…国公立は毎年約54万円、私立は80~200万円程度
- 家賃…毎月3~10万円程度
- 食費や光熱費…毎月5万円程度
学費を用意するには、事前にお金を貯めておく、奨学金に応募するなどの方法があります。早い段階から学費を用意する計画を立てましょう。
留学ビザを取る
日本の大学院に長期間留学する場合、留学ビザが必要です。留学ビザを取得するには、行きたい大学院からビザ発行に必要な書類を受け取り、自国の駐日外国公館(大使館)で申請手続きを行いましょう。詳しい申請の手順は、行きたい大学院と自国の駐日外国公館(大使館)に確認しましょう。
留学生が大学院に入学する際の注意点
次に日本の大学院に入学する際の注意点を解説します。
学びたい分野について学士に相当する知識を持つ
自分が学びたいと思う分野を勉強しておくことが重要です。学士に相当する知識がないと、大学院入学後の授業や研究内容が理解できない可能性が高く、そもそも入試に出願できないことも多いです。進学を希望する分野の基礎的な知識は専門書を読むなどして身につけておきましょう。
大学で優れたGPAを取得しておく。
修士課程(博士前期課程)に進学する場合、入学試験で学部のGPAが審査の中で考慮されることがあります。GPAとは、大学の成績を簡単に数値化したものです。大学で優れた成績をとるほどGPAは高くなります。
学部での学業に励み自身の研究に必要な知識を深めることで、GPAを高めることにもつながるでしょう。
志望動機書を書く
日本の大学院に入学する際は、志望動機書(出願理由書)という書類の提出が求められることがほとんどです。志望動機書とは、志望理由や学問、職業における目標を記した書類です。志望動機書の内容をもとに、面接で質疑応答が行われるため、時間をかけて作ることが大事です。
日本語の勉強をする
大学院や研究科によって異なりますが、授業は日本語で行われることが多いです。内容を理解するためには高い日本語能力を身につけておく必要があります。大学院に進学する前に、日本語の文献を読むなどして、日本語に触れる時間を増やしましょう。大学院入学前に日本語学校へ通っている留学生も多くいます。
また、大学院によってはJLPT(日本語能力試験)やEJU(日本留学試験)などの日本語能力を測る試験を受験し、一定以上のスコアを取得している必要があります。行きたい大学院がどのような試験(スコア)を求めているのか確認しておきましょう。これらのテストの受験条件を満たしていることを確認し、十分な準備をすることが重要です。
留学生が家を見つける方法
日本での生活を始めるには家が必要です。以下では家を見つける方法を説明します。
賃貸物件を探す
アパートやマンションなどの賃貸物件を探しましょう。不動産情報を紹介するウェブサイトを使えば、賃貸住宅を見つけることができます。地域や家賃、設備等が住宅により異なるので、事前にどのような物件に住みたいのか考えておくとよいでしょう。住宅を選ぶ際には、以下のような条件に注目しましょう。
- 大学から近いか
- 近くに買い物できる店があるか
- 部屋は十分な広さがあるか
- セキュリティがしっかりしているか
- 騒音等がないか
賃貸物件の契約には保証人が必要
賃貸物件の契約時には日本人の保証人が必要です。保証人がいない場合は、一定の条件を満たすことで大学が保証人になれる場合もあります。
中央大学の場合は、『留学生住宅総合補償制度(連帯保証人委託制度)』があり、連帯保証人を引き受けてくれる人が見つからない留学生のために、中央大学が連帯保証人(機関保証)になるという制度を用意しています。
この制度には、以下のような条件があります。
- 日本学生教育支援協会取扱の「留学生住宅総合補償制度」に加入すること。
- 賃貸契約書にある賃借人(入居者)の欄に本人氏名が明記されていること。
- 連帯保証人としての保証範囲は「留学生住宅総合補償」の範囲内に限ること。
- 契約者本人が居住すること。(他人に部屋を貸さないこと)
- 同居人がいないこと。(中央大学生同士の同居も不可)
また、賃貸物件の契約の際にはいくらかの費用が必要です。
家賃3~6ヶ月分=敷金(1~2ヶ月分)+礼金(1~2ヶ月分)+前家賃(1ヶ月分)+仲介手数料(0~1ヶ月分)が一般的です。加えて毎月、家賃+共益費+水道光熱費+食費がかかります。
ホームステイ先を探す
ホームステイは、留学している間、日本の家庭に泊まる滞在方法です。その土地の習慣や文化に深く接することができる、語学力を向上させられる、日本人の家族と交流できる等のメリットがあります。ホームステイ先は、Homestay.comなどのウェブサイトを使って見つけることができる他、大学院によってはホームステイ先の紹介を行う場合もあります。
大学寮を探す
大学院によっては留学生を対象に寮を用意しています。大学寮は洗濯機や冷蔵庫など、生活に必要な設備がそろっており、入居にあたって用意しなくてもよい、住人が同じ留学生なので友人を作りやすい等のメリットがあります。大学寮の申込みは大学の公式ホームページ等に掲載されています。入寮申込みには期限があることが多いので、しっかり確認しておきましょう。
留学生が使える制度
日本で留学生が使える制度について解説します。
奨学金制度
奨学金は学費をもらったり、借りたりする制度であり、お金の負担を少なくできます。奨学金は以下のような機関が給付しています。
大学
文部科学省
日本学生支援機構(JASSO)
地方自治体
民間奨学団体
金融機関
各種奨学金はStudy in JAPANの「日本留学奨学金パンフレット2022-2023」などで紹介されているので確認してみましょう。
また、中央大学大学院では外国人留学生を対象に、奨学金・学費減額制度を準備しています。以下のページで詳細を記載しています。
https://www.chuo-u.ac.jp/international/inbound/scholarship/
国民健康保険制度
日本には、国民の医療費の負担を減らす国民健康保険制度があります。国民健康保険制度に加入していると、風邪や怪我などで病院を受診するとき、医療費全額のうち3割を負担します。しかし、国民健康保険制度に加入していない場合、医療費をすべて自己負担することになるため、高額になります。留学生には国民健康保険制度に加入する義務はありませんが、加入しておくとよいでしょう。
国民健康保険制度への加入は、住民登録を行った市区町村の役所にある国民健康保険課で行います。窓口に「在留カード」を持参して手続きを行うと、「国民健康保険被保険者証」を受け取れます。
毎月の保険料は、住んでいる地域や所得額により変わります。所得額が一定額より少ない場合は減額制度もあります。
まとめ:研究したい内容があるなら日本の大学院に進学しよう
研究したい内容について今までと異なる環境で学べる大学院へ留学することは、とても意味のある経験となります。まずはしっかり学部での学習で専門的な知識を身につけ、自分が研究したい内容を見つけることから始めましょう。
また、資金調達や住居探しなど考えるべきことも多いです。奨学金制度や国民健康保険制度など、日本での大学院生活の助けになる制度も用意されているので、積極的に利用しましょう。