大学院進学

大学院の研究室・指導教員の選び方は?重要なポイントを解説

大学院生活の中で、入学後の研究内容に大きな影響を与えるのが指導教員や研究室です。研究室の指導教員や研究環境によって、大学院での自身の研究や大学院生としての生活、修了後の進路は大きく変わってきます。しかし、大学院への進学を考えている方の中には、どのように指導教員・研究室を選べばいいのかわからない方もいるでしょう。

この記事では大学院での指導教員・研究室の選び方を解説します。指導教員・研究室を選ぶ際に重要になるポイントについて詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

大学院生活において指導教員・研究室選びが重要な理由

指導教員・研究室選びは、大学院生活やその後の進路に大きく影響を与える、重要なポイントです。

大学院は、自分自身が興味関心を持っているテーマについて、専門的かつ高度な知識・能力を身につける場所です。大学院生活では、指導教員の指導の下、研究活動を行う時間が大半を占めると言っても過言ではありません。また、就職活動の際も、どのような研究活動を行い、どのような成果を出したか、が重視されます。

興味のある分野を突き詰め、理想の進路に進むためにも、自分に合った指導教員・研究室を選ぶことが大切です。

大学院の指導教員・研究室の選び方

大学院では同じ研究科であっても、教員(研究室)の違いにより、研究内容や研究の進め方が異なります。ここでは、大学院の指導教員や研究室を選ぶために重要な11のポイントを解説します。 

  1. 研究できる内容
  2. 進路状況
  3. 研究資金の獲得状況
  4. 教育・研究方針
  5. 研究実績
  6. 学会発表の機会
  7. 研究室の設備
  8. 指導教員・スタッフとの相性
  9. 研究室の雰囲気
  10. 留学生の受け入れ状況
  11. 研究室のコアタイム

【指導教員・研究室の選び方】1.研究できる内容

教員・研究室選びでは、どの教員、どの研究室の研究内容が自分の興味関心と一致しているか確認することが大事です。

まずは自分がどのような研究内容に興味があるのかを洗い出します。その後に複数の教員や研究室を比較して、誰(どこ)が自分の興味関心に最も近い内容の研究を実施しているかを把握し、そのような教員や研究室を選びましょう。

教員や研究室を比較する際は、可能な限り実際に教員や研究室を訪問して、教員やその指導学生などに話を聞いてみて、研究室の雰囲気や研究内容が自分に合っているかを確認するとよいでしょう。

【指導教員・研究室の選び方】2.進路状況

大学院修了後に企業への就職を考えている場合、特に理系の場合は、自分の就きたい就職先につけるかどうかは研究室、教員を選ぶ大事な要素になります。例えば工業化学系の研究室に進めば、研究を通して養った専門知識を活かして化学メーカーに就職するなどの道が開けます。そのため研究室の進路状況を調べておきましょう。

【指導教員・研究室の選び方】3.研究資金獲得状況

研究活動を自由に進めるためには、研究資金の獲得状況もチェックしましょう。教員・研究室は研究資金を使って研究を行っています。研究資金の財源には、以下のような種類があります。

  • 大学からの研究費、科研費(科学研究費補助金)などの公的機関からの補助金・助成金
  • 民間企業等からの研究助成金
  • そのほか委託研究費
  • 共同・受託研究費
  • 寄附金

こうした研究資金を潤沢に確保できているかを、教員・研究室選びの参考にするのもよいでしょう。特に、理系の場合は機器や薬品等の購入にコストがかかるため、注目しておきたいポイントです。

各教員や研究室の獲得研究費は、科学研究費助成事業データベース(KAKEN)やresearchmapなどの教員の名前で検索すると確認できます。

【指導教員・研究室の選び方】4.研究・教育方針

教員・研究室の教育方針も、重要なチェックポイントです。

指導教員・研究室によって、教育方針・研究指導の方針は異なります。指導教員が大学院生に対してやるべきことを積極的に提示する教員・研究室もあれば、大学院生がやることはすべて自分で決めなければならない、自主性を重んじる教員・研究室もあります。

どのような教育方針・研究指導の方針が合っているかは、人それぞれです。やるべきことをある程度提示してもらう方がスムーズに研究活動を進められる、という人もいれば、自由度が高い方がモチベーション高く研究活動に取り組める、という人もいるでしょう。

研究活動をスムーズに進められるよう、自身のタイプと教員・研究室の方針がマッチしているかも重視して教員・研究室を選びましょう。

【指導教員・研究室の選び方】5.学会発表の機会

大学院では研究した内容を発表し、他大学の研究者たちと意見交換を行う学会・研究会があり、これらを通じ自らの研究内容を深めることができます。

研究室や指導教員によっては修士(博士前期)課程の学生でも学会発表できる機会を得ることができます。学会発表は、研究を発表し、他大学の教員などからフィードバックをもらう貴重な成長機会となります。指導学生の学会発表内容から、修士課程の学生でも学会発表できるのか確認しておくとよいでしょう。

【指導教員・研究室の選び方】6.研究実績

研究実績を把握するために、研究室から発表される論文の頻度や掲載先、論文の内容をチェックするのもおすすめです。

学生がファーストオーサー(筆頭著者)である論文が多く発表されている研究室であれば、自身もファーストオーサーとして論文を執筆できる機会が十分にあると考えられます。また、「Nature」や「Science」といったトップジャーナルへの掲載実績が多い場合は、研究レベルや指導の質が高いことが期待できます。

もちろん、実際に論文に目を通し、内容や論理性、データの信憑性などがしっかりしているかを自身でチェックすることも大切です。

論文を見れば、研究スタイルやアプローチ方法もある程度把握することができます。共同研究者と1つの大きなプロジェクトを進めていくタイプなのか、仮説先行型なのかなど、研究スタイルにも注目して論文に目を通しましょう。

【指導教員・研究室の選び方】7.研究室の設備

大学院で自分のやりたい研究をするためには、研究設備が整っているかも大事です。例えば普段から1部屋を学生数名で利用できる学生研究室などの設備が用意されている大学院がありますが、学生研究室を使うことで、学生同士が共同で研究を進めることができます。また、研究内容によっては特定の研究設備を必要とすることもあります。

研究室の設備は教員・研究室訪問の際に見せてもらえる場合があります。教員に見せてもらうように頼んでおくと良いでしょう。

中央大学大学院の法学・経済学・商学・文学・総合政策研究科では、博士前期課程のうちから、一人一人に研究スペースが確保されており、大学院生が研究や学修活動に専念できるよう環境を整えています。次のページにて詳しく紹介しているので、ぜひ確認してください.。
https://www.chuo-u.ac.jp/academics/facilities/

【指導教員・研究室の選び方】8.指導教員・スタッフとの相性

指導教員や研究室のスタッフとの相性も確認しましょう。

研究室は、大学院生活の中心となる居場所です。指導教員やスタッフと相性が合わない場合、研究室で過ごすのが苦痛になってしまう可能性があります。

指導教員だけでなく、どのようなスタッフが在籍しているかもチェックしましょう。特に理系の場合、研究室には研究補助員やポストドクター、技術職員など多くのスタッフが在籍している場合があります。指導教員以外のスタッフから研究を進めるサポートを受けたり、相談に乗ってもらったりする機会も少なくありません。スタッフとの相性がよければ、研究活動をスムーズに進められるでしょう。

研究活動のモチベーションを維持できるよう、指導教員やスタッフと相性が合うかも重視してください。

【指導教員・研究室の選び方】9.研究室の雰囲気

研究室全体の雰囲気も重要なポイントです。研究室によって雰囲気は大きく異なります。

メンバー同士の距離が近く、積極的にイベントが開催される研究室もあれば、研究活動以外ではあまり関わりがないという研究室もあります。

居心地がよいと思える雰囲気の研究室を選ぶことが大切です。

【指導教員・研究室の選び方】10.留学生の受け入れ状況

留学生を積極的に受け入れているかは、研究室の雰囲気や研究室内で使用する言語を左右します。

留学生を積極的に受け入れている研究室は、国際色が強くグローバルな雰囲気になります。研究に関する議論や研究室内での連絡、日常会話なども英語で行う場面が増えます。

バックグラウンドが異なる多様なメンバーと接したい方や、英語を積極的に使いたい方にとっては、貴重な機会となるでしょう。一方、コミュニケーションや英語に苦手意識がある方は、ストレスを感じてしまう可能性があります。

留学生の割合についても、チェックしておくとよいでしょう。

【指導教員・研究室の選び方】11.研究室のコアタイム

研究活動とプライベートを両立し、研究活動で成果を出すためには、コアタイムの有無や時間のチェックも欠かせません。コアタイムとは、研究室にいなければいけない時間のことです。特に理系の研究室で多く定められていることが多いです。

コアタイムの長さは研究室によって異なります。コアタイムの間は必ず研究室にいなければならないため、自身のスケジュールや事情などを考えて、問題がないかを確認しましょう。

また、コアタイムを設定していない研究室もあります。コアタイムがない場合は、より自由に研究活動を進められるため、アルバイトやインターンとも両立しやすいのがメリットです。一方、スケジュール管理や自己管理能力に自信がない方にとっては、研究活動が二の次になり、思うような成果を得られなくなってしまうリスクがあります。

大学院の指導教員・研究室を選ぶ前にすべきこと

自分に合った研究室や指導教員を選ぶためには、大学院に入って何をやりたいのか、やりたいことを実現するためにどういった環境があるのかを知ることが重要です。大学院の研究室や指導教員を選ぶ前にやっておくべきことを解説します。

キャリア設計

大学院では自らのキャリアパスの実現に役立つ研究を行うことが重要です。その研究を行うために研究室や指導教員の選択はとても重要です。研究室を選ぶ前に自分がどのようなキャリアを歩みたいのかを考えておくと良いでしょう。

将来、研究職に就きたい場合は博士課程(博士後期課程)まで進学する必要があります。また、専門職への就職を目指すなら、就職したい業種の業務内容を調べて、業務に関連する分野の研究を大学院で行えば、就職後にとても役立つでしょう。

研究室・教員訪問

大学院進学にあたっては、出願前に希望する指導教員(研究室)を訪問するといったことも行われています。教員(研究室)訪問では研究内容について質問したり、実際の雰囲気や研究設備を確認したりすることできるため、自分の興味のある研究に取り組めるか確認できます。

研究室・教員訪問は事前に教員とアポイントメントを取ることが大事なので、まずはあらかじめメールを送り、時間を取ってもらった上で訪問するようにしましょう。また、研究に取り組んでいる理由や、現在力を入れている研究など、ウェブサイトだけではわからない部分についての質問を用意しておくと良いでしょう。

先輩の話を聞く

志望する研究室に入った先輩から直接話を聞くことも重要です。自分の興味のある研究を行えるか、理想のキャリアパスを歩めるかなどの大きな判断材料になります。また、研究室に所属している先輩と交流することにより、その研究室の雰囲気もある程度判断できるでしょう。

知り合いの先輩に話を聞くことはもちろん、教員・研究室訪問の際に積極的に繋がりを持つことが大切です。

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大学院の指導教員・研究室選びでよくある質問

最後に、大学院の指導教員・研究室選びでよくある質問と回答を紹介します。

Q.大学院の研究室選びでは、規模の大きさも重視するべき?

A.規模が大きいからといって、必ずしもよい研究室であるとは限りません。

規模が大きい研究室や指導教員の知名度が高い研究室は、人気が高く活気のある雰囲気である可能性が高いです。多様なメンバーと交流できる機会にも恵まれています。

しかし、人数が多い分、指導教員が一人ひとりを細かく気にかけることが難しくなることもあるでしょう。十分な指導を受けられなかったり、コミュニケーションの溝が生まれたりすることもあるかもしれません。

一方、少人数の研究室の場合、指導教員との距離がより近く、手厚い指導を受けられる可能性があります。指導教員に気軽に相談しやすいのも魅力です。

研究室の規模の大きさのみを重視するのではなく、指導教員の教育方針や研究方針、指導教員との距離などもチェックしましょう。

Q.大学院の指導教員・研究室選びに失敗したらどうする?

A.指導教員との相性や研究室の方針が合わず、研究活動に支障が出てしまっている場合は、変更が認められるケースがあります。研究環境を変えることで、ストレスなく研究活動に専念できるようになるでしょう。博士後期課程に進学する場合は、進学のタイミングで研究室を変えることも可能です。

ただし、研究活動がやり直しになったり、新しい分野を一から学ぶ必要があったりと、時間や労力がかかるリスクも否定できません。新たな環境に適応するための努力が必要な点も考慮して、やむを得ない場合には、指導教員や研究室を変更するか検討しましょう。しかしながら、基本的には大学院を修了するまでの間は、研究の継続性の観点から、同一の指導教員の下で、一貫した指導を受けることが望ましいので、入学時の指導教員・研究室の選択には慎重を期しましょう。

Q.大学院の指導教員・研究室選びは就職活動に影響する?

A.大学院の指導教員・研究室選びは、直接的に就職活動に大きく影響するわけではありません。

就職活動では、「どの研究室にいたか」「どの指導教員のもとで研究活動を進めたか」ではなく、「どのように研究活動に取り組んだのか」「どのような成果をあげたのか」が重視されます。

そのため「この研究室に行けば必ず〇〇に就職できる」という保証はありません。

しかし、研究活動をスムーズに進めて成果を出すためには、指導教員との相性や研究室の設備、雰囲気などが重要です。指導教員とのやりとりや研究室での経験がきっかけで、将来やりたいことを見つけられる可能性もあります。自身のキャリア選択に活かすためにも、指導教員や研究室選びは慎重に進めましょう。         

まとめ:大学院の研究室の選び方

今回は、大学院の指導教員や研究室の選び方と、選ぶ前にやるべきことを解説しました。大学院の指導教員や研究室を選ぶ際は、自分の研究したい内容を明確にした上で、以下のポイントをチェックしましょう。

  • 研究できる内容
  • 進路状況
  • 研究資金の獲得状況
  • 教育・研究方針
  • 研究実績
  • 学会発表の機会
  • 研究室の設備
  • 指導教員・スタッフとの相性
  • 研究室の雰囲気
  • 留学生の受け入れ状況
  • 研究室のコアタイム

研究室選びでは、情報収集が欠かせません。口コミやインターネットで調べるだけでなく、実際に教員(研究室)訪問を行って、指導教員や研究室全体の雰囲気、力を入れている分野などの情報も集めましょう。

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