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大学院の税理士試験科目免除制度とは?条件や進学するメリットについて説明

税理士を目指すために大学院に進学する人も増えています。その理由には、大学院の修士(博士前期)課程を修了することにより、「税理士試験科目免除制度」の対象になる可能性があることが挙げられます。しかし、大学院に進学するメリットは、それだけではありません。

今回は、税理士になるために大学院に進学するメリットや、税理士試験の合格率、税理士試験科目免除制度について解説します。把握しておくべき大学院進学のデメリットも紹介するため、税理士になるために大学院への進学を検討している方はぜひ参考にしてください。

税理士になるために大学院に進学するメリット

税理士試験の科目免除を受けられることは、大学院進学の大きなメリットです。しかし、大学院への進学のメリットはそれだけではありません。

ここでは、税理士を目指す人が大学院に進学するメリットについて説明します。

  1. 税理士試験科目免除制度を利用できる
  2. 税法と会計学の学術的な知識が身につく
  3. 専門性の高い文章の執筆・発表の力が身につく
  4. 税理士を目指す仲間を作れる

1.税理士試験科目免除制度を利用できる

大学院に行くと、税理士試験科目免除制度を利用できます。この制度を利用すると税理士試験の科目の受験が一部免除されるため、税理士試験の負担が大きく減ります。税理士を目指す人が大学院に進む大きなメリットと言えるでしょう。

税理士試験は、ほとんどの科目の合格率が20%を切る難関試験であるため、税理士試験科目免除制度を利用するメリットは非常に大きいでしょう。

ただし、前述の通り、税理士試験科目免除の実績がある大学院を修了したからといって、必ずしも科目免除につながるとは限りません。国税庁の審議で認められる必要がありますので、科目免除を目指す場合には、関連分野に関する専門知識を修得し、当該分野に関する一定のレベルを満たす修士論文を執筆することが求められます。入学後は、目標に向けて計画的に研究活動を行うとよいでしょう。

2.税法と会計学の学術的な知識が身につく

大学院では、税理士試験で問われる税法と会計学について、体系的に学びます。

例えば、税法判例研究や租税法、会計学の歴史をはじめ、授業や研究会でのディスカッションを通して、教員の意見を聞けます。税理士試験に向けた試験勉強では触れないような内容も勉強できるため、税法と会計学について深く理解するのに役立ちます。

3.専門性の高い文章の執筆・発表の力が身につく

論文の執筆や授業、研究会を通して、文章力やプレゼン力を鍛えられることも大学院に行くメリットです。専門知識は試験勉強でも身につけることができますが、大学院に進学することで、専門的な内容を他者に向けて伝える機会を多く得ることができます。

税理士は顧客とのやり取りの中で、専門用語を分かりやすく噛み砕き、書類やオンラインメディアで知識を提供することや、直接対面して説明することが求められます。税理士試験の勉強だけではこれらを向上させる機会は少ないため、大学院での経験は税理士の職務を遂行するにあたって大きく役立つでしょう。

4.税理士を目指す仲間を作れる

大学院には、同じように税理士を目指す人達がたくさんいます。税理士試験の情報共有や相談はもちろん、将来仕事をする上でもお互いに助け合えるような、大切な関係になる可能性があります。協力し共に高め合えるような人間関係を作ることができる機会はとても貴重です。試験勉強では一人の時間が多くなるため、人とつながることができるのは大学院進学の大きなメリットだといえるでしょう。

税理士試験は合格率21.7%の難関資格

税理士試験に合格するには、会計学に属する2科目と、税法に属する3科目の計5科目に合格する必要があります。2023年度の税理士試験の合格率は21.7%であり、合格することは容易ではありません。

なお、科目別の合格率は、以下のとおりです。

受験者数 合格者数 5年度合格率
簿記論 16,093 2,794  17.4
財務諸表論 13,260  3,726  28.1 
所得税法 1,202 166  13.8 
法人税法 3,550 497 14.0
相続税法 2,428 282  11.6
消費税法 6,756 802 11.9
酒税法 463 59 12.7
国税徴収法 1,646 228 13.9 
住民税 462 68 14.7
事業税 250 41 16.4
固定資産税 846 146 17.3
合計 46,956 8,809 18.8

簿記論と財務諸表論は会計学に属しており、いずれも選択が必須です。税法に属する科目については、所得税法または法人税法から1科目以上を選択し、さらに所得税法、法人税法、相続税法、消費税法、酒税法、国税徴収法、住民税、事業税、固定資産税から1〜2科目を選択する必要があります。

参考:国税庁|令和5年度(第73回)税理士試験結果

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​​税理士試験の科目免除を受けられる大学院の研究科

大学院にはさまざまな研究科がありますが、税理士試験の科目免除を受けるにはどの研究科に進めばいいのでしょうか。ここでは、科目免除を受けられる研究科について説明します

科目免除を受けられる研究科

税理士になるには、商学研究科や法学研究科、経済学研究科などに進む必要があります。ただし、税理士試験科目免除対象の授業を受ける必要があるため、入学以前に対象の授業があるか確認しておきましょう。免除対象となる授業は以下の通りです。

  • 会計系試験一部免除対象…簿記論、財務諸表論
  • 税法試験一部免除対象…所得税法、法人税法、相続税法、消費税法、酒税法、国税徴収法、住民税、事業税又は固定資産税のいずれか1科目

引用:国税庁|修士の学位等による試験科目免除(研究の認定を含む。以下同じ。)について〔税理士法改正後〕

中央大学大学院で税理士資格取得につながる研究科

中央大学大学院では、「税法」科目免除を目指す方に向けて、経済学研究科と商学研究科に税理士試験を受験する際の科目免除対象の授業が用意されています。税法に関する修士論文を執筆し、国税庁から認定されることで、税法科目の免除対象になります。

税法に属する科目を履修し、修士論文執筆に必要な知識を蓄えておくのが望ましいです。経済学研究科の場合、入学時に税理士コースを選択すれば、租税法や財政学についても学べるため、より専門的な知識をつけることができます。商学研究科で税理士を目指す場合は、研究コースに所属し、専門分野に精通した論文(修士論文)の作成を目指します。

税理士を目指す人が大学院に進学するデメリットも知っておこう

大学院に進学するためには、入学金と年間授業料が必要となります。国立・公立・私立別の費用の目安は、以下のとおりです。

 

入学金 年間授業料
国立 282,000円 535,800円
公立 392,391円 538,734円
私立 249,985円 904,146円

参考:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」

 

私立よりも授業料の低い国立や公立でも、年間授業料として50万円ほどの費用が必要となるのです。2年通う場合には、卒業までに100万円の学費が発生します。このように、高額な費用が発生する点は、大学院進学の大きなデメリットといえるでしょう。

以下の記事で大学院進学にかかる学費について詳しく解説しています。費用が気になる方は、ぜひ参考にしてください。

大学院の学費はいくらかかる?自分で学費を確保する方法も解説

まとめ:大学院進学には科目免除など多くのメリットがある

税理士になるために必ずしも大学院に進む必要はありませんが、科目免除制度を使うことにより、税理士試験合格に近づくことができます。また、税法や会計学について広い知識も身につき、職務遂行に必要な文章作成能力やプレゼンテーション能力も養える、貴重な機会になるでしょう。税理士を目指す場合に、大学院に進むのも1つの選択肢だと言えます。

すべての大学院で、税理士の科目免除を受けられるわけではありません。事前に募集要項やカリキュラムをしっかり確認し、科目免除を受けられるのか確認しておきましょう。

なお、中央大学大学院の経済学研究科と商学研究科でも、税理士の科目免除の実績があります。中央大学大学院に興味がある方は、以下よりお問い合わせください。

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