大学院への出願を控えている方の中には、大学院入試では併願できるのか、どのように併願先を選ぶべきかなど、受験先をどう選ぶべきか知りたい方が多いでしょう。
大学院入試では、併願が可能です。ただし、併願には時間や費用がかかるため、併願先の選定が非常に重要です。併願する場合は、受験日程や試験科目、研究内容・研究環境など、併願先を決めるためのポイントについてもよく理解しておく必要があります。
この記事では、大学院入試における併願について、併願のメリットや併願先の選び方、併願時の注意点を解説します。大学院への出願を控えている方は、ぜひご覧ください。
大学院入試は併願できる?
そもそも大学院入試における併願とは、複数校・複数専攻を受験することです。大学院入試では、国公立・私立問わず併願できます。併願数に上限はなく、受験日程が被らなければいくつでも受験できます。
また、大学院によっては、秋季と春季など、年に複数回試験を実施している場合もあります。その場合は、同じ大学院を複数回受験できます。
大学院を併願するメリット
大学院を併願するメリットは、以下のとおりです。
- 1つも受からないリスクを軽減できる
- 第一志望の受験に落ち着いて臨める
1つも受からないリスクを軽減できる
大学院を併願すれば、それだけ進学できる可能性が高まります。ある大学院の試験で実力が発揮できなかった、面接(口述試験)でうまくアピールできなかった場合でも、次の受験機会で経験を活かし、実力を発揮できるかもしれません。このように、併願することで「1つも受からなかった」というリスクを軽減できます。
第一志望の受験に落ち着いて臨める
大学院を併願することで、入試の雰囲気に慣れることができます。試験会場独特の緊張感ある雰囲気にのまれてしまい、試験本番で実力を発揮できなくなるケースは多いです。第一志望の受験の前に併願先の入学試験がある場合、入試の雰囲気を経験した状態で第一志望に望めます。
また、第一志望の大学院を受験するまでに併願先に合格していれば、気持ちに余裕が生まれ、落ち着いて受験できるのもメリットです。
大学院入試で併願先を決める3つのポイント
大学院入試で併願先を決める場合、以下の3つのポイントを重視しましょう。
- 入試日程
- 試験の内容・科目
- 研究内容
入試日程
入試日程が第一志望と重なっている場合、その大学院は併願できません。もちろん、入試日程が複数の大学院で重なるケースもあります。
また、日程が重なっていなくても、試験日が集中してしまう場合は、併願を避ける方が良いかもしれません。入試は、精神的にも身体的にも大きな負担がかかります。日程が連続すると、心身ともに疲弊してしまい、ベストパフォーマンスを発揮できない可能性があります。
自身の精神力や体力を踏まえて、「なるべく連続2日まで」など基準を設けるといいでしょう。できれば、試験日程が分散するようにスケジュールを組むことが望ましいです。
さらに、第一志望の受験日がなるべく後になるように併願先を選ぶことによって、ある程度受験に慣れた状態で入試に臨める可能性が高いです。また、第一志望の入試日より前に併願先の合格がわかっていれば、不安感が少ない状態で受験できるでしょう。
入試日程は、大学院のホームページなどで発表されるほか、入学試験要項にも記載されています。事前にチェックして、受験のスケジュールを立てましょう。
試験の内容・科目
大学院の入学試験では筆答試験と面接(口述試験)があります。筆答試験では外国語科目(英語など)と専門科目が課されることが多いです。併願先を選ぶ際は、専門科目の出題内容が近くなるように調整しましょう。大学院進学後の希望する研究分野を、進学先によって大きく変えることは困難であり、課される専門科目の分野が大きく異なる受験先への受験は避けた方がよいでしょう。
しかし、専門科目の出題内容がなるべく近くなるように、受験先を選定することは可能です。例えば、第一志望校の専門科目が物理である場合は、なるべく物理の試験が課される併願先を選ぶと良いです。別の科目の対策をする必要がなくなるため、その分の時間を物理の対策や第一志望の面接対策などに回せます。入試対策を効率的に進められます。
また、外国語の外部試験にも注目しましょう。大学院によっては、独自に外国語の試験を実施するのではなく、外部試験のスコアを入学試験に採用している場合があります。大学院によって、TOEICやTOFELなど、採用している外部試験の種類は異なります。
もしTOEICを課している大学院とTOFELを課している大学院のどちらも受けるとなると、双方の対策が必要です。英語の対策に時間が取られてしまい、専門科目や面接対策に十分な時間を割けなくなるリスクがあります。併願先を選定する際は、課されている外部試験が1種類で済むように調整すると良いでしょう。
研究内容・研究環境
大学院を併願するうえで最も重要なのは、自分が希望する分野の研究ができるかです。せっかく大学院に入学しても、研究したい内容が深められないのであれば、本末転倒になってしまいます。
また、希望する研究内容をもとに併願先を選ぶことは、入試に合格するためにも重要です。大学院入試では、志望理由書や研究計画書の提出が求められる場合が多いです。関心のある研究内容ができる大学院・指導教授(研究室)を選ばなければ、熱意の伝わる志望理由書や研究計画書を書くことはできません。
また、筆記試験だけでなく面接も課されることがほとんどです。面接では、志望理由や希望する研究について、面接を担当する教員にわかりやすく説明する必要があります。本当に希望する研究分野であれば、その分熱意が伝わりやすくなり、合格に近づけるでしょう。さらに、大学院入試対策を進めるモチベーションにもなります。
大学院での研究内容や研究環境、指導をしている教員については、ホームページに記載されているほか、大学院が実施している説明会や教員(研究室)訪問などで確認できます。特に教員訪問は、研究室を訪れて、研究内容を見学できたり担当教員から直接話を聞けたりする貴重な機会です。教員訪問ができない場合でも、指導を希望する教員にメール等で連絡をとり、研究について相談し、指導してもらえるか確認しましょう。
大学院を併願する際の注意点
ここでは、大学院併願時に注意すべき3つのポイントについて解説します。
- 受験校は3つが目安
- 併願校の入学金を支払わなければならない場合がある
- 併願先では推薦入試を利用できない
受験校は3つが目安
受験校は、トータルで3つが目安、と理解しておきましょう。
あまりにも多くの大学院を併願してしまうと、対策に時間がかかってしまいます。また、その分の費用も必要です。大学院入試を受験するためには、検定料を支払う必要があります。例えば、国立の大学院の研究科では、入試1回あたり3万円の検定料が発生します。私立の大学院は、大学によって異なりますが、3~4万円程度の場合が多いです。
さらに、遠方の大学院を受験する場合は、別途交通費や宿泊代もかかります。3つの大学院を受けるだけでも、決して安くはない費用がかかることが分かるでしょう。
このように、受験に必要な時間と費用を考慮すると、受験校はトータルで3つ程度が限度といえるでしょう。
ただし、大学院入試対策が遅くなってしまった場合は、3つも受けると各大学院の試験対策に手が回らなくなる可能性があります。第一志望の対策に十分な時間が割けなくなるリスクがあるため、第一志望の1つに絞るか、あるいは第2志望までの2つに抑えましょう。
逆に、早期から大学院入試対策を始めており、リスクをなるべく軽減したいという場合は、複数の大学院を受験すると良いでしょう。その際は、第一志望の受験に影響が出ないように、入試日程が連続しないスケジュールを組むことが望ましいです。
併願先の入学金を支払わなければならない場合がある
大学院を併願する際は、検定料だけではなく、入学金の支払いが必要になる場合がある点に注意しましょう。
第一志望の大学院の合格発表までに、併願先の入学金の支払い期日が来る場合、併願校の入学金も支払わなければなりません。入学金は数十万円程度かかることが多く、決して安いとは言えない金額です。文部科学省が令和3年度に実施した調査では、私立の大学院の入学料の平均金額は、博士前期課程で202,598円、博士後期課程で189,623円となっています。
参考:私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
入学金は、最終的に進学しなかった場合でも返還されないので注意が必要です。そのため、入試日程だけでなく、入学手続きの締め切り日も把握したうえで受験スケジュールを組みましょう。
併願先では推薦入試を利用できない
推薦入試を受けて合格した場合、原則として辞退できません。例えば、第一志望の大学院を一般入試で受験し、併願先を推薦入試で受験する場合、推薦入試に合格したら併願先に進学する必要があるため、第一志望の大学院に進学することは難しいです。そのため、第一志望でない併願先では、推薦入試を利用しないように注意しましょう。
併願先を十分に検討して大学院入試に臨もう
この記事では、大学院入試における併願について、メリットやポイント、注意点などを解説した。大学院入試では併願が可能であり、併願することで第一志望の受験に落ち着いて臨みやすくなります。しかし、併願する分、費用や対策にかける時間が必要になるため、併願先を入念に検討することが大切です。
そのためには、受験日程や試験内容、大学院でやりたい研究内容と、さまざまなポイントから総合的に志望校を選定することが求められます。何よりも、進学後に自身が希望する研究テーマにあった研究内容・研究環境・指導体制(指導教員)が揃っているかを踏まえて併願先を選ぶことが肝要です。この記事を参考に併願先を選定し、大学院入試のスケジュールを組んでみていただければ幸いです。
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