大学院での所属研究室(あるいは、どの教員から指導を受けるのか)は、大学院生活において自分がどれだけ充実した時間を過ごせるかに大きく影響します。自分に合った研究室・指導教員を選ぶには、研究室訪問(教員訪問)がとても重要です。しかし、研究室訪問の意義や進め方がよくわからない人もいるでしょう。この記事では、そのような疑問や戸惑いに寄り添いながら、研究室訪問の意義や進め方を紹介します。
研究室訪問(教員訪問)とは
研究室訪問(教員訪問)とは、自分の研究を進める場となる研究室・指導希望教員を事前に訪問し、研究室の雰囲気や指導教員の方針、研究内容などを具体的に知るための活動です。
理系学生だけでなく、文系学生にとっても研究室訪問(教員訪問)は重要です。文系の研究科でも、研究環境は大学院生活の質に大きく影響します。文理問わず、研究室訪問を通して、志望する大学院や研究室、指導希望教員を絞り込むことが重要です。
研究室訪問は、大学院入試の前の学部3年の夏〜学部4年の初夏に行なうのが望ましいです。出願期間の1か月前までに訪問しておきましょう。ただし、卒業論文や修士論文の執筆時期と重なる12月から2月上旬頃は教員が忙しい可能性が高いので、避けるようにしましょう。
研究室訪問が重要な3つの理由
研究室訪問は今後の大学院生活でとても重要なステップです。以下では研究室訪問が重要になる3つの理由を解説します。
教員について知れる
まず、研究室訪問で教員について知ることが重要です。
教員は、研究テーマの決定や研究方法の提案、研究成果の評価など、研究活動全般において大きな影響を与える存在です。また、教員は学会発表や論文投稿などの学術活動にも関与し、研究者としてのキャリア形成にも影響を与えます。教員との相性が悪かったり、研究内容に興味を持てなかったりすると、今後の大学院生活で大きな支障となるでしょう。
そのため、教員の指導方針や人柄を知り、自分に合っているかどうか確認しておきましょう。
研究室の雰囲気を知れる
次に、研究室の雰囲気を知ることも重要です。
研究室での生活は、教員だけでなく、周りの大学院生との関わりにも影響されます。大学院生活では、研究だけでなく、学会発表や論文執筆などの学術活動にも取り組むことになりますが、その際、周りの大学院生と協力しながら研究活動を進めることが重要です。
また、周りの大学院生から刺激を受けたり、アドバイスをもらったりすることで、大学院入試の対策や研究室選びをスムーズに進めることもできるでしょう。このように、研究室の雰囲気が自分に合っているかどうか確認することが重要です。
疑問点を聞ける
研究室(教員)選びに疑問や不安を抱えているなら、訪問する際に質問しておきましょう。
研究室(教員)訪問の際に積極的に質問を行うことで、研究テーマや指導方法が自分に合っているか見極められます。具体的には、研究成果の評価方法、教員の指導スタイルや細かい指導方針などは、大学院の説明会に参加するだけでは見えてこない部分も多いので積極的に質問するとよいでしょう。
また、自分の研究したいことが実現可能か、どのように実現できるのかを教員に積極的に質問するのもよいでしょう。自分の疑問点を解決するだけでなく、興味関心や熱意を教員に伝えることもできます。
研究室訪問の流れ
次に研究室訪問のプロセスを解説します。以下の6段階を経て、自分に最適な研究室を見つけることができます。
情報収集
研究室訪問の第一歩は、自分の興味や研究分野に関連する研究室の情報収集です。大学のウェブサイトや研究室のホームページを調べ、教員の専門分野や研究テーマを確認し、行きたい研究室、指導を受けたい教員を決めましょう。また、先輩や同級生からも情報を得ることで、更に詳しい情報を得られます。
事前連絡と準備
情報収集が終わったら、希望の研究室・教員に訪問希望の旨を連絡し、アポイントを取りましょう。
連絡の方法は多くの場合はメールになるでしょう。研究室訪問の趣旨と希望日時を伝え、教員のスケジュールに合わせて、訪問日時を調整しましょう。教員は多忙な場合が多いので、アポイントの取得は、可能な限り早めに行い、最低でも2週間前には済ませておくのがおすすめです。
また、訪問日が決まったら、事前に研究室の状況や自分の関心を整理しておきましょう。具体的な質問事項にまとめておくと研究室訪問がスムーズに進みます。
研究室訪問当日
訪問当日は、礼儀やマナーを意識することも重要です。まず、教員やその教員の指導学生に挨拶をし、自己紹介します。その上で疑問点を積極的に質問し、研究室の雰囲気や教員の指導方針、研究テーマなどを確認しましょう。質問に答えてもらった後は、教員や学生に感謝の意を伝えましょう。
研究室訪問の服装は、清潔感があり、場に適したものを選ぶことが重要です。基本的には、ビジネスカジュアル程度の服装が適切ですが、研究室の雰囲気や文化によってはよりカジュアルな服装が許される場合もありますので、SNSやホームページに過去の研究室訪問の様子が掲載されていればそれらを見返すのもよいでしょう。
また、理系の研究室では、実験室を訪れる際に、安全靴や防護眼鏡の持参が必要になる場合もあります。訪問を受け入れてもらった場合、そうした準備が必要か確認しておきましょう。
複数の研究室と比較
可能であれば、複数の研究室・教員を訪問し、それぞれの研究室を比較検討することが望ましいです。
この際、自分の研究目標やキャリアプランを明確にし、それに合った研究室・教員を選ぶことが大切です。研究内容や研究手法、指導教員の専門分野など、自分にとって重要な要素をリストアップし、各研究室と比較しましょう。
また、一人で決めるのが難しい場合、先輩や友人に相談するのもよいでしょう。また、就職と大学院への進学でどちらを選択すべきか悩んでいる場合には、キャリアセンターなどに相談することも有益でしょう。
志望の研究室・教員の決定
研究室訪問を終えたら、自分の目標や将来のキャリアを考慮して、最適な研究室・教員を選択し、入学試験に出願しましょう。
研究室訪問で聞くべき質問や事柄
次に研究室訪問で聞くべき質問や事柄を解説します。
研究内容と指導方法
まず自分が取り組む予定の研究テーマや、指導教員の専門分野について質問し、理解することが重要です。具体的な研究計画や研究手法、今後教員が重点的に取り組む予定の研究テーマなど、研究活動に関する様々な側面を質問して確認しましょう。
すでに携わりたい内容が明確な場合、具体的な内容を教員や先輩に説明し、どうすれば実現できるのかを質問するのが望ましいです。自らの研究に明確なイメージが持てるようになる上に、教員に熱意を伝えることもできます。
また、教員の指導方針は研究の進め方に大きな影響を与えるため、事前に把握しておきましょう。フィードバックや評価の仕方、個別指導とグループ指導のバランスなどについても質問しておくとよいです。
研究成果の実績と評価
研究成果の研究実績や評価についても聞いておきましょう。
研究室選び・指導希望教員探しでは、学術論文の発表数や賞の受賞状況、修了後の進路などを把握し、自分の目指すキャリアに適した研究室を決定することが重要です。
研究室・教員訪問では、教員や現在在籍している大学院生から、実際の研究に近い情報を得られます。例えば、インターネット等で公開されている実績を得るまでに何の研究を、どのような経緯で行ったのかは直接聞かないとわからないことも多いでしょう。
研究室を訪問すると、他の研究室と比較してどのような強みや特徴があるのかについて、直接見たり聞いたりできます。これにより、自分がどの研究室・教員を選ぶべきか、より具体的な判断材料が得られるでしょう。
また、研究室・教員を訪問し、質問することで、修了後の進路やキャリアプランについても具体的なイメージを持つことができます。自分の目指すキャリアに対する研究室のサポート体制や進路指導の内容を確認できます。
大学院生活について
研究室・教員訪問では、研究活動以外の大学院生活について質問することも大切です。例えば、学生の一日のスケジュールについて尋ねることで、研究と私生活のバランスをどのように保っているかを把握できます。研究スケジュールの組み方が自分のライフスタイル、研究スタイルに合っていると、より成果を挙げやすくなるでしょう。
また、訪問が研究室の先輩と良好な関係を築くきっかけになることもあります。先輩と良好な関係を築くことで、研究室選びに役立つ情報をもらえるだけでなく、研究室に入った後も大きな助けとなるでしょう。
まとめ:研究室訪問で不安点を解消しよう
これから大学院に進学したいという方にとって、研究室訪問は自らの研究環境を見定める貴重な機会です。研究内容や指導方針、実績などで不安な点を解消できるだけでなく、教員や研究室の雰囲気を理解し、研究室の人たちとの関係構築できるなどのメリットもあります。
研究室訪問の際は、できるだけたくさんの情報を収集するために、事前に自分の研究したいことを固めた上で、質問を用意しておくことが重要です。実際に訪問する際は、時間を割いて応対してくれる教員に対し、失礼のないよう、雰囲気に合った服装を用意し、丁寧な受け答えを常に意識しましょう。