大学院進学

高度専門職業人になるために大学院に行くべき?おすすめの研究科も解説

「高度専門職業人」は高度で専門性のある職業能力を持つ人材のことです。経済・社会活動が多様化した現代社会では、そのような人材が求められています。しかし、高度専門職業人がどのようなものかわからない、もしくは高度専門職業人になるため大学院に行くべきか迷っている方は少なくないでしょう。

この記事では、高度専門職業人について説明した後に、高度専門職業人になるために大学院を活用する方法を解説します。

高度専門職業人とは

「高度専門職業人」とは、社会の各分野での活躍が期待される、高度な専門スキルを持つ人材のことです。一般的には、大学院、もしくは高度専門職業人の養成を目的とした専門職大学院で専門的な教育や訓練を受け、修士号以上の学位を持つことが求められます。

日本の大学院制度は、もともと研究者の養成を目的としていました。しかし、21世紀に入ると、科学技術の進化やグローバル化など、さまざまかつ複雑な問題が生じ、学術研究に加えて専門スキルによって社会課題を解決できる人材が必要とされるようになりました。高度専門職業人は、現代社会で強く求められる人材です。

高度専門職業人の例

高度専門職業人の具体例を紹介します。

公認会計士

公認会計士は、会計、監査、財務に関連する業務を担うプロフェッショナルです。具体的には企業の財務の管理業務、税務アドバイザーや経営コンサルティングを行います。グローバル化や情報技術の進化に伴い、国際的な会計基準や情報セキュリティなどの知識も求められることがあります。

大学院で習得できる会計や経営理論に関する専門知識は、公認会計士の実務に大きく役立つでしょう。また、公認会計士は単なる数字の検証だけでなく、背景にあるビジネスの状況を理解し分析する能力が求められるため、大学院で身につく高度な分析能力も実務に役立つでしょう。

法曹

法曹(裁判官・弁護士・検察官)は法の専門家として、公正かつ迅速な司法の実現に貢献する役割を担う職業です。法の専門知識を身につけ、場合によっては資格を取得することが必要になります。国際的なビジネス取引やデジタル技術など、最新情報に対する理解が求められることもあります。

大学院では法について専門的に学び、実践的なスキルを身につけることができます。法の基礎だけでなく、専門分野の深い知識や法律が制定された背景を学べるのが大学院独自の強みです。

教職

教職は、小・中学校・高等学校・特別養護学校の教員のことを指します。自身の専門分野の深い知識を有し、適切な教育方法で生徒・児童等を指導する能力が求められます。

生徒や児童一人ひとりの個性や能力を引き出すための、コミュニケーション能力やカウンセリング能力をもつことも欠かせません。また、グローバル化や情報技術の発展に伴い、新しい学びの形態や教育内容が求められています。例えば、ICTを活用した授業や、国際的な視野を持った授業を行う能力が必要です。

大学院において、教育方法やカウンセリング、教育心理学などの専門的知識を深めることにより、生徒の多様なニーズに応える力を養えます。国際的な視野を持った教育やICTを活用した教育方法など最新の知見に触れられるため、現代の教育現場で求められるスキルも磨けます。

弁理士

弁理士は、知的財産権に関する専門的な知識を使い、企業や個人が技術やブランドを保護・活用する職業です。技術の競争が激化する中で、独自の技術やブランドを法的に保護することが企業戦略の一部となっている現在、弁理士の重要性は大きく増しています。

大学院では知的財産の保護に関する専門知識を養えます。また、新しい技術分野や国際的な特許法の理解も深められるため、グローバル化が進む現代で活躍する人材となれるのも大学院で学ぶメリットです。

心理職(公認心理師・臨床心理士)

公認心理師は、心理支援を求めるクライエントの心理状態の観察や相談への指導・助言・援助、心の健康に関する知識の普及を目的とした教育・情報提供など、4つの業務が業務内容として定められています。公認心理師は、心理系では日本で唯一の国家資格です。

臨床心理士は、メンタル面の課題や障害を診断・評価し、適切な心理的支援や治療を提供します。臨床心理士は主に病院やクリニックでの診断・評価を中心に業務を行います。また、コミュニティや学校、企業などで勤務する場合もあり、さまざまな場所で活躍する職業だと言えるでしょう。

時代の変化に合わせて、発達障がいや学習障がい、若者の自殺防止、高齢者の認知症対応、災害後の心のケアなどの新たな課題への対応も心理職には求められています。また、多文化共生社会の進展に伴い、異文化間のコミュニケーションや異文化背景を持つ人々の心のケアも重要なテーマです。

心理職を目指す者にとって、大学院は心理学の深い理解と臨床技術の習得の場です。基礎的な心理学の知識に加えて、ケーススタディや臨床実習を通じて、実際の現場での対応能力や専門的判断力を養えます。

研究職

研究職は、専門知識を用いて研究を行い、社会に貢献する職種です。基礎研究から応用研究、さらには開発まで、幅広い領域で活躍しています。専門知識や技術はもちろんのこと、多様な分野の知識を横断的に活用する能力や、チームでの協働スキル、コミュニケーション能力も必要です。

研究職には、国際的な視野も求められるようになっています。グローバル化が進む中、研究のフィールドは国境を越え、多国籍の研究者との連携が日常的に行われるようになりました。そのため、異文化間のコミュニケーションスキルや、グローバルな視点からの問題解決能力が必要とされています。

大学院での学びは研究職を目指す上で極めて価値あるものです。大学院で求められる深い知識は、研究職が直面する多様な問題や課題に対応するための基盤となるでしょう。

また、大学院では異なる背景や専門分野を持つ研究者や学生との交流が日常的に行われます。このような環境下でのディスカッションや協力を通じて、異なる視点やアプローチを学べます。さらに、データの取り扱い方や研究成果の発表方法、他者の研究との関係性の認識など、研究職における作法を学べることも、キャリア形成に大きく役立つでしょう。

会社役員

会社役員とは、企業の経営方針や戦略を決定するCEO(最高経営責任者)やCOO(最高執行責任者)、CTO(最高技術責任者)のことを指します。

会社役員は単に業績を追求するだけでなく、持続可能性や社会的責任の理解、長期的な人材育成、イノベーションを促進する能力など、より幅広い視野と戦略的思考を持つことが要求されています。

会社役員を目指す者にとって、大学院は経営学の基礎を固め、戦略的思考を養う場所となるでしょう。技術経営の概念やイノベーションを促進する方法、人材育成の手法など、実務での応用を前提とした深い学びが必要です。こうした知識や技術を習得することで、先端技術の導入や新しいビジネスモデルの創出、組織の風土作りに取り組むための土台を築けます。

大学院で高度専門職業人を目指すメリット

高度専門職業人になるには大学院に進学することが望ましいです。大学院に進学する3つのメリットを解説します。

深い専門知識の習得

高度専門職業人の業務を遂行するには、深い専門知識が必要です。指導教授をはじめとする大学院の教員は、研究や実務経験を有する専門家であり、そうした教員から学べる専門知識や最先端の知識や考え方は大きく役に立つでしょう。

また、大学院では単に知識を学ぶだけでなく、実験やフィールドワークを通じて、理論と実践を結びつける能力を培うことで、知識を活用する力も身につけられます。

研究能力の育成

データや事実を基に理論的な背景や仮説を立て、それを検証する過程は、高度専門職業人の実務に大きく活かせるでしょう。高度専門職業人の業務では、ある特定の問題や課題に対して、独自の視点やアプローチで取り組むことが求められます。

また、大学院での研究活動はしばしばチームで行われることも多いです。異なる背景や専門知識を持つ他者との協力の中で、コミュニケーション能力や協調性も同時に養成されます。異なる視点や意見を取り入れながら、共通の目的に向かって進めることは、実際のビジネスシーンでも極めて重要です。

幅広い人脈形成

大学院は学問の最前線であり、多岐にわたる分野の研究者や学生が集まります。新しい知識や技術の交換、また、仕事で役に立つ人脈を築くのに適した場所です。

大学院では、学会に参加したり海外で研究や発表を行う機会があったりするため、幅広い分野の専門家や学生と交流できます。

また、同じ研究室(指導教員)のもとで研究する学生たちとの日常的な議論や情報交換を通じて、多様な視点や新しいアイディアを得ることができます。学生同士のつながりは、研究活動だけでなく、修了後のキャリア形成にも大きな影響を及ぼすため、さまざまなシーンで活動の幅を広げるのに役に立つでしょう。

大学院で高度専門職業人を目指すために必要なこと

次に大学院で高度専門職業人になる方法を解説します。

大学院・専門職大学院を修了する

高度専門職業人を目指すためには、大学院に進学することが望ましいです。

前述の通り、大学院では高度な専門知識や技術を修得でき、研究を通して論理的思考力や分析能力も養えるためです。また、学部よりも教員や学生と密接に交流する機会が多く、コミュニケーション能力も自然と身につくでしょう。大学院は高度専門職業人として活躍するための基礎能力が習得できる場所です。

もし就きたい職業がはっきりしているなら、専門職大学院も選択肢として考えられます。専門職大学院は、経営管理、会計、ファイナンス、公衆衛生、医療経営などの分野で、実践的な教育を提供しています。学問的な理論だけでなく、現場で求められるスキルやノウハウの習得が可能です。例えば、法曹に必要な知識が学べる法科大学院や教員免許の取得を目指す教職大学院などがあります。

興味や目指すキャリアに応じて、一般的な大学院と専門職大学院のどちらを選ぶかを決めることが重要です。深い研究を行いたい場合や、特定の職業に対する深い知識を持ちたい場合は、一般的な大学院を選ぶとよいでしょう。一方、早く現場での実務を学びたい場合や、特定の職業に就くことを明確に目指している場合は、専門職大学院が適しているでしょう。

国家資格を取得する

一部の高度専門職業人には国家資格の取得が求められます。国家資格は一定の専門性や能力を有していることの公的な証明であり、その信頼性は非常に高いです。多くの場合、大学院で研究を重ねて、資格試験に合格することが必要です。

高度専門職業人として成功するには、国家資格を取得した後も、その分野の最新の知識や技術を継続的に学ぶことが求められます。国家資格はあくまで「出発点」であり、その後の努力や経験が重要です。

高度専門職業人につながる授業を受ける

高度専門職業人に必要なスキルや、知識を学習できる授業を受けることも有用です。

高度専門職業人には専門的知識や技能が求められるため、その基盤となる知識についての学習は、学部時代から始めるとよいでしょう。この時期に、将来の専門職業人としてのキャリアを意識し、関連する授業を受けることで、基盤となる知識をしっかりと身につけ、実務で力を発揮しやすくなるはずです。

また、学部時代に専門的な授業を受けることは、将来の研究や職業の方向性を見つける手助けともなります。自分の興味や適性を確認することができるため、後のキャリア選択の際に大きな助けとなるでしょう。

まとめ:高度専門職業人になりたいなら大学院を検討しよう

高度専門職業人には、国際的な知識や最新技術など、より高度で時代に即した専門性が求められます。現代社会の課題解決に最前線で携わることができるため、社会的意義ややりがいも大きいです。

しかし、その分求められる知識やスキルも高度になるため、大学院に進学することが望ましいです。

中央大学大学院には法学研究科や商学研究科などの研究型の大学院や法科大学院(法務研究科)や戦略経営研究科といった専門職大学院があり、高度専門職業人に必要な専門知識が学べる研究科があります。興味がある方はぜひ一度お問い合わせください。