大学院進学

大学院の学費はいくらかかる?自分で学費を確保する方法も解説

大学院進学にあたっては、決して安くはない費用がかかります。学費がネックで進学を躊躇している方もいるでしょう。しかし、多くの方に大学院で学ぶ機会が確保されるよう、さまざまな奨学金や学費減免などの制度があります。制度の存在を知り、必要なものを利用できるよう準備しておきましょう。

今回は、大学院の学費や生活費、学費負担を軽減する制度や奨学金制度について解説します。

大学院進学にかかる学費

ここでは、大学院の学費を国立・公立・私立に分けて紹介します。

国立の大学院の学費

国立の大学院は、大学と同様に学費が統一されています。法科大学院を除く大学院の入学金と授業料は以下の通りです。

入学金 282,000円
年間授業料 535,800円

博士前期課程(修士課程)に進む場合は、入学金と授業料合わせて2年間で1,353,600円かかる計算です。

参考:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」

国立の法科大学院の学費

国立の法科大学院は、他の一般的な大学院よりも授業料が高く設定されています。

入学金 282,000円
年間授業料 804,000円

出典:文部科学省「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」

2年制のコースに進学する場合は合計1,890,000円、3年制のコースに進学する場合は合計2,694,000円かかる計算です。

公立の大学院の学費

公立の大学院の場合、入学金や年間授業料は大学院によって異なります。2019年入学者の入学金と年間授業料の平均は以下の通りでした。

入学金(※) 392,391円
年間授業料 538,734円

※地域外からの入学者の平均

出典:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」

公立の場合、国立とあまり授業料は変わらないものの、入学金の平均額が高い傾向にあるのが特徴です。なお、大学を設置する自治体の住民には、学費の減免措置がある場合があります。

私立の大学院の学費

文部科学省の調査によると、私立の大学院の入学金や年間授業料の平均は以下の通りです。

入学金 年間授業料 合計(施設設備費や実験実習料なども含む)
修士(博士前期)課程 201,752円 798,465円 1,134,590円
博士後期課程 192,686円 604,592円 893,594円
専門職学位課程 194,492円 1,067,207円 1,411,846円

 

出典:文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」

私立の大学院は、国立や公立に比べ、在学料や施設設備費をはじめとする学費が高く設定されているのが特徴です。

中央大学大学院の学費については、以下をご覧ください。
大学院学費一覧(2025年度入試 受験生用)

大学院入試にかかる費用

大学院入試を受ける際は、検定料を支払う必要があります。国立大学院の検定料は30,000円です。私立の場合は大学院によって異なりますが、3~4万円程度が目安です。

なお、遠方の大学院を受験する場合は、別途交通費や宿泊代も発生することも考慮しておく必要があります。

参考:文部科学省「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」

大学院生活でかかる費用

その他、生活費がかかる点も考慮しましょう。日本学生支援機構が2020年に実施した調査によると、1年間の生活費の平均額は以下の通りでした。

修士課程 1,003,700円
博士課程 1,617,900円
専門職学位課程 1,212,800円

出典:日本学生支援機構「令和2年度 学生生活調査結果」

生活費としては、主に以下のような費用がかかります。

  • 家賃
  • 水道光熱費
  • 食費
  • 通信費
  • 交通費
  • 書籍費
  • 交際費
  • 娯楽費
  • 健康保険料・社会保険料
  • その他雑費

特に、自宅外通学の場合は家賃や水道光熱費などを負担する必要があるため、生活費が多くかかることを踏まえて収支計画を立てることが大切です。

大学院の学費負担を軽減する制度

ここでは、大学院の学費負担を軽減する制度として以下の2つを紹介します。

  • 大学院独自の学費免除・減額制度
  • 日本学術振興会の特別研究員制度

大学院独自の学費免除・減額制度

多くの大学院では、独自に学費を免除あるいは減額する制度を設けています。対象は、経済的な事情で学費の支払いが困難な家庭の学生や、学力や研究能力が優秀であると認められた学生などです。

減免額や制度を利用するための要件、必要書類などは大学院によって異なるため、事前によく確認しておきましょう。

特別研究員制度

博士(博士後期)課程に進学する場合は、日本学術振興会の特別研究員制度を利用できる可能性があります。

特別研究員制度とは、優れた研究能力を有する者に対し、日本学術振興会が研究奨励金を支給する制度です。大学院博士課程在学者は、特別研究員の「DC1」または「DC2」に申請できます。

特別研究員として採用されると、研究奨励金として月額20万円が支給されます。

参考:日本学術振興会「特別研究員制度の概要」

申請資格

DC1の申請資格は以下の通りです。

採用年度の4月1日現在、日本の大学院博士課程に在学し、次のいずれかに該当する者

1. 区分制の博士課程後期第1年次相当(在学月数12ヶ月未満)に在学する者

2. 一貫制の博士課程第3年次相当(在学月数24ヶ月以上36ヶ月未満)に在学する者

3. 後期3年の課程のみの博士課程第1年次相当(在学月数12ヶ月未満)に在学する者

4. 医学、歯学、薬学又は獣医学系の4年制の博士課程第2年次相当(在学月数12ヶ月以上24ヶ月未満)に在学する者

※1〜3については、採用年度の4月に博士課程後期等に進学する予定の者も含む。

DC2の申請資格は以下の通りです。

採用年度の4月1日現在、日本の大学院博士課程に在学し、次のいずれかに該当する者

1. 区分制の博士課程後期第2年次以上の年次相当(在学月数12ヶ月以上36ヶ月未満)に在学する者

2. 一貫制の博士課程第4年次以上の年次相当(在学月数36ヶ月以上60ヶ月未満)に在学する者

3. 後期3年の課程のみの博士課程第2年次以上の年次相当(在学月数12ヶ月以上36ヶ月未満)に在学する者

4. 医学、歯学、薬学又は獣医学系の4年制の博士課程第3年次以上の年次相当(在学月数24ヶ月以上48ヶ月未満)に在学する者

採用期間中は、事前に提出する申請書に記載した研究計画に基づき、研究に専念しなければなりません。

参考:日本学術振興会「特別研究員 申請資格・支給経費・採用期間」

大学院の学費を自分で用意する方法

大学院の学費を自身で工面する必要がある場合は、奨学金制度の利用を検討しましょう。

前述の通り、大学院進学にあたっては決して安くはない費用がかかります。アルバイトをするという方法もありますが、研究活動と両立しながらアルバイトのみで学費を工面するのは容易ではありません。

ここでは、大学院進学や在学中に利用できる奨学金制度を紹介します。

日本学生支援機構の奨学金制度

日本学生支援機構は、返済が必要な貸与型の奨学金と、返済不要な給付型の奨学金制度を用意しています。このうち、大学院進学にあたって利用できるのは貸与型です。

貸与型は、利子がない第一種奨学金と利子がある第二種奨学金の2つに大別できます。また、両者を併用できるものや、入学時の一時金として借りられる入学時特別増額貸与奨学金も存在します。

以下では、無利子で奨学金を借りられる第一種奨学金について見ていきましょう。

第一種奨学金の申込資格

第一種奨学金の申込資格は以下の通りです。

予約採用 修士・博士前期課程または専門職大学院(法科大学院含む)、一貫制博士課程前期相当分へ進学予定の方 現に大学等に在学している、または卒業しており、毎年定める時期までに翌年度の初めに大学院研究科の修士・博士前期課程または専門職大学院(法科大学院を含む)、一貫制博士課程前期相当分に入学が予定されている方
博士・博士後期課程または博士医・歯・薬・獣医学課程(6年制学部卒)、一貫制博士課程後期相当分へ進学予定の方 現に大学院研究科の修士・博士前期課程の最高年次に在学している、または修了しており、毎年定める時期までに翌年度の初めに大学院研究科の博士・博士後期課程または博士医・歯・薬・獣医学課程(6年制学部卒)、一貫制博士後期相当分に入学が予定されている方
在学利用 正科生であって、経済的理由により就学が困難であり、優れた学生等であると認められる方

ただし、大学院によっては予約採用の募集を行っていない場合もあります。事前に大学院の奨学金担当窓口に問い合わせて確認しましょう。

参考:日本学生支援機構「進学前(予約採用)の第一種奨学金の申込資格」
参考:日本学生支援機構「進学後(在学採用)の第一種奨学金の申込資格」

第一種奨学金の採用基準

第一種奨学金の利用者として採用されるためには、一定の学力基準と家計基準を満たす必要があります。

学力基準は、予約採用と在学利用ともに以下の通りです。

修士・博士前期課程または専門職大学院(法科大学院含む)、一貫制博士課程前期相当分へ進学予定の方 大学並びに大学院における成績が特に優れており、将来、研究能力または高度の専門性を要する職業等に必要な高度の能力を備えて活動できると認められる方
博士・博士後期課程または博士医・歯・薬・獣医学課程(6年制学部卒)、一貫制博士課程後期相当分へ進学予定の方 大学並びに大学院における成績が特に優れており、将来、研究者として自立して研究活動を行い、またはその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力を備えて活動できると認められる者

また、家計基準は以下の通りです。

予約採用 生計維持者の貸与額算定基準額が189,400円以下である
在学利用 修士・博士前期課程・専門職大学院(法科大学院を含む) 本人の収入と配偶者の定職収入の金額の合計額が、299万円以下である
博士後期課程・博士医・歯・獣医・薬(6年制学部卒)学課程 本人の収入と配偶者の定職収入の金額の合計額が、340万円以下である

参考:日本学生支援機構「進学前(予約採用)の第一種奨学金の学力基準」
参考:日本学生支援機構「進学後(在学採用)の第一種奨学金の学力基準」
参考:日本学生支援機構「進学前(予約採用)の第一種奨学金の家計基準」
参考:日本学生支援機構「大学院で受ける第一種奨学金の家計基準(在学採用)」

第一種奨学金の貸与月額

第一種奨学金の貸与月額は、いずれかを選択できる仕組みです。

修士課程相当 50,000円、88,000円
博士課程相当 80,000円、122,000円

出典:日本学生支援機構「平成30年度以降入学者の貸与月額」

民間団体・地方公共団体の奨学金制度

その他、民間団体や地方公共団体が運営している奨学金制度も利用できます。他の奨学金制度と併用できるものや一定の条件を満たせば返済が不要になるものなど、実施内容はさまざまです。

特に、民間団体による奨学金では、研究分野・テーマを限定した形での募集も少なくありません。受給を検討している場合は、自身の研究分野・テーマに合う奨学金が募集されていないか、定期的に情報収集しておきましょう。

地方公共団体等が行う国内向け奨学金制度については、以下より検索できます。
日本学生支援機構「大学・地方公共団体等が行う奨学金制度」

大学院独自の奨学金制度

大学院が独自に奨学金制度を設けている場合もあります。返済不要の給付型も多いため、希望する大学院の奨学金制度について調べてみましょう。

例えば、中央大学大学院では3つの給付型奨学金制度を設けています。

制度 対象 給付額
中央大学大学院給付奨学金 博士前期(修士)課程1〜2年次/博士後期課程1〜3年次 <法学・経済学・商学・文学研究科>

40万円(*1/2額給付の場合あり)

<理工学・総合政策・国際情報研究科>

50万円(*1/2額給付の場合あり)

中央大学大学院指定試験奨学金 中央大学大学院が指定する国家試験の受験を志し、学力、研究能力及び人物ともに優れている修士・博士前期課程に在学する学生 在学料相当額または1/2相当額
飯塚毅奨学金 大学院法学研究科博士後期課程1年次に在学する学生  25万円

参考:中央大学大学院「中央大学大学院 奨学金ガイド(給付)」

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まとめ:大学院の学費を負担する際は必要な制度を活用しよう

大学院進学にあたっては、国立・公立・私立問わず決して安くはない費用がかかります。また、進学後の生活費も考慮して収支計画を立てることが必要です。

しかし、大学院への進学は、興味のある学問を突き詰めて高度な専門知識や研究能力を身につけられるチャンスです。費用がネックで進学を迷っている方は、費用負担を軽減できる制度を利用しましょう。また、自身で学費を確保する場合は、奨学金制度を活用できる場合があります。

まずは、自身が利用できる制度について調べてみることから始めることが大切です。

中央大学大学院で利用できる奨学金については、以下を参考にしてください。
学生サポート 奨学金