大学院進学

短大から大学院に入学できる?編入学制度の仕組みや注意点を解説

短大に在籍している方の中には、研究したい学問を突き詰めようと、大学院への進学を希望している方も多いでしょう。短大では学士の学位を得られないため、大学院の出願資格を得るためには、4年制大学に編入する方法が一般的です。

そこで今回は、短大に在籍している方が大学院に入学する方法として、4年制の大学への編入学制度の仕組みや受験科目、注意点などを解説します。短大から大学院への進学を目指している方は、ぜひご覧ください。

短大卒でも大学院に入学できる

文部科学省(学校教育法、学校教育法施行規則等)によると、以下の資格のうちいずれかを満たせば大学院入学資格が与えられます。

  • 大学を卒業していること
  • 大学改革支援・学位授与機構によって学士の学位を授与されていること
  • 海外で、16年の学校教育課程を修了していること。医学、歯学薬学または獣医学を履修する大学院への入学については18年の学校教育課程を修了していること
  • 海外の学校が実施する通信教育を履修し、16年の学校教育課程を修了していること。医学、歯学、薬学または獣医学を履修する大学院への入学については18年の学校教育課程を修了していること
  • 文部科学大臣指定外国大学日本校を修了していること
  • 海外の大学などで、修業年限が3年以上の課程を修了し、学士に相当する学位を授与していること。医学、歯学、薬学または獣医学を履修する大学院への入学については、修業年限が5年以上の課程を修了し、学士に相当する学位を授与していること。
  • 文部科学大臣に指定された専修学校の専門課程を修了していること
  • 旧制学校等を修了していること
  • 防衛大学校、海上保安大学校、気象大学校など、各省大学校を修了していること
  • 大学院個別の入学資格審査で認められた22歳以上の者であること

参考:文部科学省「修士課程・博士課程(前期)の入学資格について」

このように、大学院への出願資格を得るためには、原則として4年制大学を卒業し、学士の学位を取得していることが必要とされています。よって、短大から大学院に進学するためには、4年制大学に編入学をして学士の学位を取得する方法が現実的です。

短大から大学院に入学する方法

前述の通り、短大から大学院に入学する主な方法は、編入学試験を受けて大学に編入し、「学士」の学位を得ることです。

短大を卒業することで得られる学位は「短期大学士」(平成17年以前の名称は「準学士」)です。短大では「学士」の学位を得られないため、編入学試験を受けて新たに4年制大学の学部に入学し、学士を取得する必要があります。

編入学試験とは、短大や専門学校を卒業した方、あるいは卒業見込みの方や大学2年次修了者などが、編入学のための試験を受験し、4年制大学の2年次や3年次に入学する制度です。短大卒の場合には、4年制大学の3年次に編入できるケースが多く見られます。

編入学試験の仕組み

編入学試験は、4年制大学の途中年次に入学できる制度です。4年制大学の学部2年生、あるいは短大2年生のタイミングで受験し、合格すると4年制大学の3年次(3年次編入)、あるいは2年次に編入(2年次編入)できます。3年次編入ができた場合は、2年間で大学を卒業できる仕組みです。

3年次編入学の場合は、短大の2年間と学部の2年間、計4年間で大学を卒業し、学士の学位を取得できます。教職課程の履修や長期交換留学は原則できませんが、多くの大学・学部で実施されている制度です。

2年次編入学の場合は、短大の2年間と学部の3年間、計5年間で大学を卒業できます。教職課程の履修や長期交換留学が可能なほか、3年かけて必要な単位を取得できます。一方、3年次編入学に比べて1年分の時間と学費がかかるため、早く大学院に入学したい方や経済的負担を避けたい方には適していません。

編入学試験を実施している大学

国公立・私立大学問わず、日本のさまざまな大学が編入学試験を実施しています。特に、短大卒以上の3年次編入学については、多くの大学が受け入れています。

ただし、毎年すべての学部・学科で実施されるとは限りません。昨年は実施されたにもかかわらず今年は実施されない、というケースもあるため、注意が必要です。

また、大学によっては、4年制大学を卒業した者のみを対象とした編入学(いわゆる学士入学)しか実施していない場合もあります。事前に出願要件をよく確認しておきましょう。

試験のスケジュール

編入学試験のスケジュールは、大学によって異なります。基本的には、短大2年の夏頃(6月頃)から冬頃(1月頃)にかけて、分散したスケジュールで実施されます。希望する大学の試験日程が重なるリスクはあまりありませんが、統一したスケジュールで実施されるわけではないため、出願の機会を逃さないよう、出願期間の把握が欠かせません。

試験科目

編入学試験の試験科目は大学によって異なりますが、「外国語」「専門科目(小論文)」「面接」の3科目である場合が一般的です。外国語では、英語・ドイツ語・フランス語・中国語などの言語から選択するケースが多いです。専門科目とは、編入する学部で学ぶ学問のことを指します。

大学によっては、短大在学中の成績が優秀な者に対して面接を免除したり、検定試験で一定の成績をおさめている場合は小論文を免除したりなど、試験科目を免除する制度を設けているところもあります。

編入学試験の注意点

編入学試験の注意点は、以下の通りです。

  • 募集人数が限られている場合が多い
  • 試験の難易度が高く、対策が必要である
  • 単位認定について確認する必要がある

ここでは、それぞれの注意点について解説します。

募集人数が限られている場合が多い

編入学試験の募集人数は少なく、若干名の募集になることがほとんどです。そのため、優秀な成績をおさめなければ編入できません。

また、希望する学部・学科で編入学試験を実施するとは限らないため、希望の進路(分野)に進めない可能性もあります。

試験の難易度が高く、対策が必要

編入学試験は、一般の大学受験に比べると科目数が少ないですが、難易度は決して低くないため、入念な対策が必要です。

高い英語力や専門科目に関する知識が求められるほか、試験の情報が少ないため対策が難しいのが特徴です。加えて前述の通り募集人数も少ないため、特に人気のある大学・学部については、合格のハードルが高い点に注意しましょう。

英語については、TOEFLやTOEICで高いスコアを取得できるレベルまで対策することが大切です。試験の代わりにTOEFLやTOEICのスコアを提出し、点数に換算するところや、一定のスコアを取得していることを出願条件に課しているところもあります。そのため、英語の資格試験対策を中心に行うとよいでしょう。

将来的に大学院進学を目指している場合は、大学院入試を見据えた勉強も求められます。大学院入試に必要な英語力についてはこちらの記事で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

https://graduate.chuo-u.ac.jp/media/index.php/2022/04/28/graduate-school-toeic/

専門科目については、文献を読んで基礎を固めましょう。編入を目指す大学の授業で用いられている文献を図書館で借りて勉強するのも効果的です。大学によっては、編入試験の過去問をホームページからダウンロードできたり、大学に問い合わせれば送付してもらえたりすることもあります。積極的に情報収集を行い、万全の対策で臨みましょう。

単位認定について確認する必要がある

短大で取得した単位は、大学編入後に取得単位として認められることがあります。これを単位の認定といい、認定される単位数は大学や学部によってさまざまです。

認定される単位数によって、編入後の卒業までに必要な修得単位数が大きく異なるため、編入が決まったら、必ず単位認定について確認しなければなりません。基本的に、短大で学んだ内容と編入する学部で学ぶ内容の親和性が高いと、認定される単位数が多くなる可能性が高いです。学んだ内容を確認するため、短大で単位を修得した授業科目のシラバス(講義内容)の提出が求められることもあります。

なお、編入が決定してから単位認定の審査が実施されるため、あらかじめ単位認定数を知ることはできません。

まとめ:短大から大学院に進学して、将来の選択肢を広げよう

今回は、短大から大学院に入学するための方法について解説しました。短大では学士の学位が得られないため、大学院への出願資格は得られません。4年制大学の学部に編入して学士の学位を取得し、大学院入試に挑む方法が一般的です。

編入学試験を受ける際も、入念な対策が必要です。決して楽な道ではありませんが、大学院で研究したい学問がある方は、将来の選択肢を広げるために挑戦してみてはいかがでしょうか。