研究・教育

研究方法の種類と具体的な手法を紹介|重要性や選び方もわかりやすく解説

卒業論文の執筆を控えた大学3・4年生にとって、研究手法の選択は大きな悩みのひとつです。

「量的研究と質的研究のどちらを選べばいいのか」「具体的にどのような手順で調査を進めるべきか」と迷っていませんか。

また、大学院進学を視野に入れて研究計画を立てている方にとっても、どの研究手法を採用するかは、研究の方向性や実現可能性を左右する重要な検討事項といえます。

この記事では、研究方法の主な種類や具体的な手法、自分の研究テーマに合った手法を選ぶ流れをわかりやすく解説します。読み進めることで、卒業論文の質を高めるための研究手法が見つかるはずです。

研究手法の選択が「卒業論文の質」を左右する

研究手法には、大きく分けて量的研究と質的研究があり、それぞれに目的や問いの性質に応じた具体的な手法が存在します。

卒業論文において、研究手法選びは非常に重要です。研究手法が適切かどうかによって、収集できるデータの質や分析の妥当性が変わり、最終的な結論の信頼性に大きく影響します。どれほど優れた問題意識を持っていても、問いに合わない手法を用いてしまうと、必要なデータを十分に集めることができず、論文全体の論理が成り立たなくなる恐れがあります。

そのため、各手法の特徴を正しく理解した上で、自分の問いに最も適した手法を選ぶことが、卒業論文を成功させるための近道といえます。

研究方法の主な種類

研究手法を正しく選ぶためには、その前提となる研究方法の考え方を押さえておく必要があります。研究方法(methodology)は研究全体の考え方や設計思想を指し、研究手法(method)はその考え方に基づいて実際に用いられる具体的な技法を指します。つまり、研究方法は、研究全体の方向性を定める枠組みであり、どのようなデータを、どのような視点で扱うかを決めるものです。

研究方法は、大きく分けて「量的研究」と「質的研究」の2つのアプローチに分類され、扱うデータの性質や目的において明確な違いがあります。

ここでは、それぞれの基本的な考え方を確認していきましょう。

数値で客観的に実証する「量的研究(Quantitative)」

量的研究とは、対象を数値データとして扱い、統計的な分析を通じて仮説の検証を行う研究方法です。「どれほどの人がその傾向にあるか」といった、一般化やパターン化を得意とします。

例えば、クラス全体の傾向を把握するために、テストの平均点や各評価の割合を集計するような考え方が、量的研究に近いイメージです。

数値を根拠にするため研究者の主観が入りにくく、客観的で再現性の高い結果を得られる点が特徴です。既存の理論を裏付けたり、広い範囲の傾向を明らかにしたりしたい場合に有効なアプローチといえます。

数値化しにくい情報を分析する「質的研究(Qualitative)」

質的研究とは、インタビューや観察などの非数値的データを用い、対象の社会的・文化的な意味や背景を深く解釈する研究方法です。「なぜそのような行動をとるのか」「その経験にどのような意味があるのか」といった、個別性の高い問いに応えることを得意とします。

例えば、「なぜこの映画は感動するのか」を友人から詳しく聞き出すような作業です。単なる数字の集計だけでは捉えきれない、個人の感情や価値観、複雑な背景事情を多面的に捉えられる点が魅力です。新しい仮説を見つけ出したいときや、未知の現象について深く知りたい場合に適しています。

また、近年では、量的研究と質的研究を組み合わせる「混合研究法(Mixed Methods)」も用いられています。卒業論文では難易度が高い場合もありますが、研究目的によっては有効な選択肢となります。

【種類別】具体的な研究手法

研究方法 主な研究手法
量的研究 アンケート調査、二次データ分析、実験法
質的研究 インタビュー、事例研究、フィールドワーク、グラウンデッド・セオリー

研究方法が決まったら、次は具体的な研究手法を選択します。量的研究、質的研究のそれぞれには、卒業論文でよく活用される代表的な手法がいくつか存在します。

ここでは、手法ごとにそれぞれの特徴と活用例を紹介します。

量的研究の具体的な手法

量的研究では、標準化された手順で大量のデータを収集し、統計的に処理する手法が中心となります。客観的な証拠を示しやすいため、説得力のある論文構成に役立ちます。

アンケート調査(質問紙法):紙に印刷した質問項目に回答してもらう

アンケート調査は、多人数に対して同じ質問を行い、回答を数値化して集計する手法です。一度に大量のデータを得られるため、特定の集団の傾向や実態の全体像を把握するのに向いています。

例えば、学校で「給食のメニューに関する満足度」を全校生徒に尋ね、「とても満足〜不満」の5段階評価を集計するような調査が該当します。選択肢から選ぶ形式を多く採用することで、短時間で効率的にデータを回収し、パーセンテージや平均値として分析できます。

二次データ分析:既存の統計データを活用する

二次データ分析とは、政府や研究機関などが公開している既存のデータセットを、自分の研究目的で再分析する手法です。自分で一から調査を行う必要がないため、時間やコストを大幅に節約できるメリットがあります。

例えば、国が公表している「日本の出生率」や「家計調査」の数値を使い、独自の視点で分析し直すことが該当します。信頼性の高い大規模なデータを扱えるため、個人では困難なマクロな視点での研究が可能になります。

実験法:因果関係を科学的に証明する

実験法とは、特定の条件を意図的に変化させ、それによって生じる結果への影響を観察する手法です。他の要因をできるだけ排除することで、「Aが原因でBが起こる」という因果関係を明確に証明できます。

例えば、同じ内容の教材を用いながら、「動画で学習した場合」と「テキストで学習した場合」で理解度に差が出るかを比較する研究が挙げられます。対照群を用意して比較を行う厳密なプロセスが必要となるため、心理学や自然科学の分野で使用されることが多いです。

質的研究の具体的な手法

質的研究では、対象者の姿や言葉を丁寧に記録し、その背後にある意味を読み解く手法が用いられます。

インタビュー調査:対象者の経験や本音を掘り下げる

インタビュー調査は、対象者に対して対面などで質問を行い、語りの中から深い情報や感情を引き出す手法です。一人ひとりの複雑な心情や、数値化しにくい個人的な経験を詳細に把握できます。

大学院進学を決めた学生に対して、「なぜ進学を選んだのか」「迷った点は何か」を一人ずつ詳しく聞き取る調査を想像するとわかりやすいでしょう。事前に質問を決める「構造化」から、会話の流れに任せる「非構造化」まで、目的に応じた柔軟なやり取りが可能です。

事例研究(ケーススタディ):特定の事象を深掘りする

事例研究は、特定の個人、組織、地域などの単一または少数の事例を詳細に調査し、その背景やプロセスを明らかにする手法です。多角的な視点から一つの事象を徹底的に分析することで、普遍的な理論のヒントを得られます。

特定の企業や団体の取り組みを対象に、その成功・失敗の要因を丁寧に分析するケースがこれにあたります。特殊な症例や、まだ研究が進んでいない新しい現象の実態を詳しく記述するのに有効です。

フィールドワーク(参与観察):現場のリアルを記録する

フィールドワークとは、研究対象が存在する現場に直接赴き、生活や行動を共にしながら観察や記録を行う手法です。外側からでは見えない、現場ならではの暗黙の了解や文化、リアルな相互作用を体感的に把握できる点が特徴です。

例えば、地域イベントの運営に参加しながら、参加者同士の関わり方や意思決定の過程を観察・記録する研究が挙げられます。

グラウンデッド・セオリー:データから独自の理論を構築する

グラウンデッド・セオリーとは、収集したデータを細かく分類・コード化し、それらの関連性を分析することで、データに根ざした理論を導き出す手法です。あらかじめ用意された理論を検証するのではなく、現場で得られたデータをもとに理論を組み立てます。

例えば、複数のインタビュー記録をもとに、学生が進路選択に至るまでの思考プロセスを段階的に整理し、モデルとしてまとめていく研究がイメージしやすいでしょう。看護学や社会学の分野では、人間の心理や社会的プロセスを説明する枠組みを導く際に多く用いられています。

グラウンデッド・セオリーは、質的研究の中でも分析プロセスが体系化された手法であり、データ収集と分析を往復しながら進める点に特徴があります。そのため、指導教員の助言を受け、慎重に進める必要があります。

質的研究とは?量的研究との違いや研究分野・魅力について解説質的研究は、ケーススタディやインタビューなどを通じて、人々の感情や経験、価値観など、数値化しにくい情報を収集・分析する研究手法です。現象...
フィールドワークとは?目的や実施の流れ・メリットについて解説大学院での研究活動において、フィールドワークは重要な研究手法の一つです。研究対象となる現場に直接足を運び、その場でしか得られない生の情報...

失敗しない研究手法の選び方3ステップ

研究手法は、好みで選ぶのではなく、解決したい問いや実現可能性を踏まえて選ぶ必要があります。

ここでは、卒業論文で使用する研究手法を決定するための3つのステップを解説します。

  1. リサーチ・クエスチョンを1つに絞る
  2. 先行研究がどの手法を使っているか調査する
  3. 研究計画を立案し、目的を達成できる手法を選ぶ

ステップ1:リサーチ・クエスチョンを1つに絞る

まずは、研究を通じて何を明らかにしたいのかという「リサーチ・クエスチョン」を明確に定義し、1つに絞り込みます。問いが曖昧だと、どの手法を使うべきかの判断基準が定まりません。

「人々の意識の傾向をもとに考察したい」場合には量的研究、「個人の深い体験をもとに考察したい」場合には質的研究というように、問いの性質によって適した手法は変わります。具体的な問いを設定することが、研究を始める上での第一歩です。

ステップ2:先行研究がどの手法を使っているか調査する

次に、自分の研究テーマに関連する先行研究を読み、どのような研究手法が用いられているかを確認します。同じ分野の研究者が繰り返し使用している手法は、その問いに対して有効性が高い可能性があります。

先行研究の手法を参考にすることで、調査設計の失敗を防ぎやすくなるだけでなく、自分の研究の位置づけも明確になります。図書館や学術データベースなどを活用し、複数の論文の方法論の章に目を通してみましょう。

ステップ3とも関連しますが、特に卒業論文や修士論文では、限られた条件における調査の実現可能性を高めるためにも、先行研究で用いられている研究手法に学ぶ意義は大きいといえます。

ステップ3:研究計画を立案し、目的を達成できる手法を選ぶ

最後に、研究に使える時間や予算、協力を得られる対象など、現実的な条件を踏まえて最終的な手法を決定します。理論的に優れた手法であっても、卒業論文(修士論文)の提出期限までに実行できなければ意味がありません。

例えば、調査期間が短い場合は大規模なアンケートよりも既存データの分析が適していることもあります。自分のリソースで確実に実行でき、かつリサーチ・クエスチョンに最も適した手法を選ぶことが重要です。

より専門的な内容を学ぶなら大学院進学がおすすめ

卒業論文に取り組む中で、「特定のテーマをもっと深く掘り下げたい」「調査や分析そのものに面白さを感じている」と思うことがあれば、大学院進学は有力な選択肢の一つです。大学院では、学部で学んだ知識や研究手法を土台に、より専門的なテーマに継続して取り組めます。

大学院の研究では、授業が中心の学部とは異なり、自ら研究計画を立て、指導教員の助言を受けながら主体的に進めていきます。学部レベルでは扱いきれなかった高度な統計手法や、複雑な質的分析にも取り組み、分析方法を実践的に身につけることが可能です。単に知識を学ぶだけでなく、自らエビデンスを生み出す力を養うことが、大学院での学びといえるでしょう。

このことから、卒業論文で得た経験をさらに発展させたい人にとって、大学院進学はおすすめの進路であるといえます。

理工学研究科の資料請求文系研究科の資料請求 

研究手法の種類に関するよくある質問

研究手法について学ぶ中で浮かびやすい質問をQ&A形式でまとめました。

研究手法にはどのような種類がありますか?

研究方法は、大きく分けて「量的研究」と「質的研究」の2種類があります。それぞれの方法には、目的に応じた具体的な手法が存在します。

量的研究には、大人数の傾向を数値で捉えるアンケート調査や、既存の統計データを活用する二次データ分析、因果関係を科学的に証明する実験法などがあります。

一方で質的研究には、対象者の経験や感情を掘り下げるインタビュー調査や、特定の事象を詳細に記述する事例研究、現場のリアルを記録するフィールドワークなどの手法が存在します。

質的研究と量的研究は何が違うの?

質的研究と量的研究の最大の違いは、データを「数値」として扱うか「非数値」として扱うかという点にあります。量的研究は「どれほど」を明らかにするために客観的・統計的なアプローチをとるのに対し、質的研究は「なぜ」「どのように」といった意味や背景を主観的・帰納的に探求します。

量的研究は大きなサンプルサイズで一般性を確保することに優れており、質的研究は小さなサンプルから多面的かつ深い理解を得ることに適しています。

研究手法はどのように選べばいい?

適切な研究手法を選ぶには、まず「リサーチ・クエスチョン」を明確に設定することが不可欠です。次に、自分の研究テーマに近い「先行研究」を調査し、どのようなアプローチが効果的に使われているかを参照します。最後に、時間や予算などを考慮して、適切な研究手法を選びましょう。

まとめ:研究手法は目的を達成できるものを選ぼう!

研究手法の適切な選択は、卒業論文の質を左右する重要なプロセスです。どんなに手間をかけて調査をしても、それがリサーチ・クエスチョンの解決につながっていなければ、意味のあるデータは得られないでしょう。

まずはリサーチ・クエスチョンを明確にし、質的・量的研究のどちらが相応しいかを見極めましょう。そして、先行研究を参考にしながら、自分のリソースで実現可能な計画を立てることが大切です。

最適な手法を選べれば、卒業論文の研究・執筆はぐっとスムーズに進むはずです。自分の研究にあった手法を慎重に選び、納得のいく論文を完成させてください。

なお、大学院なら、学部で身につけた基礎を土台に、自ら研究計画を立てながら専門的な研究に取り組めます。卒業論文に取り組む中で、「特定のテーマをより深く掘り下げたい」という場合には、大学院進学を検討してみてはいかがでしょう。

中央大学大学院の資料請求はこちら