将来、臨床心理士や公認心理師になりたいという理由で、大学院進学を検討している方も多いのではないでしょうか。ただ、同時に「臨床心理士や公認心理師に必要な資格を取得するために大学院へ進学する必要はあるのか?」「どの大学院へ進学すればいいか?」など様々な疑問が湧いてくるでしょう。
今回は臨床心理士・公認心理師になるために、大学院に行く必要があるのかどうか、どのような大学院に進めば良いのかについて解説します。
臨床心理士や公認心理師になるために大学院に進学する必要はあるか
この項目では、臨床心理士、公認心理師になるために大学院に行く必要があるかどうかを解説します。
臨床心理士になるには大学院の修了が必須
臨床心理士になるには大学院の修了が必須です。臨床心理士資格認定協会が臨床心理士になる条件として、臨床心理士指定大学院1種、2種もしくは、臨床心理士専門職大学院の修了を定めているためです。
臨床心理士になるには、大学院の修了後、臨床心理士資格試験に合格する必要があります。
ただ、例外として、医師免許取得者かつ心理臨床経験2年以上を有する場合は、臨床心理士資格試験を受験できます。医学部医学科卒の方は指定の大学院に行く必要がないケースもあります。
参考:「受験資格/公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会」
公認心理師には大学院に行かなくてもなれる
公認心理師には大学院を修了していなくてもなることができます。
公認心理師試験を受験するためには、「臨床心理学」や「統計学」など、学部で指定された科目を受講した後に、「大学院での指定された科目の履修」もしくは「定められた施設での一定期間の実務経験」のどちらかが求められます。
そのため、必ずしも公認心理師取得のために大学院に行く必要はありません。ただ、大学院へ進学するメリットも大きいです。公認心理師の実務には臨床心理学や統計学の知識が必要になりますが、大学院に進学し、研究を進めることで、それらの専門的な知識を大きく深めることができるためです。また、専門分野に精通した教員や同じ進路を目指す大学院生とのつながりを持つこともできます。
参考:「公認心理師試験について/一般財団法人 日本心理研修センター」
参考:「公認心理師法第7条第2号に規定する認定施設一覧の最新情報を掲載しています。」
臨床心理士になるために進学できる大学院
臨床心理士指定大学院1種、2種、臨床心理士専門職大学院にはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは臨床心理士になるために進学できる、3種類の大学院について解説します。
一般的な大学院
臨床心理士指定大学院1種・2種は一般的にイメージされるような大学院です。
臨床心理士指定大学院1種は、修了後すぐに「臨床心理資格試験」を受けることができる大学院です。一方、2種は修了後、1年以上心理臨床経験を経てから「臨床心理資格試験」を受験可能です。
臨床心理士指定大学院第1種に指定されるには、以下の条件を満たす必要があります。
・大学院の研究科・専攻・課程等の名称に、臨床心理学が明記されていること、又は組織構成上の最終段階での当該指定領域が臨床心理学によって特化されていること。
・担当教員に臨床心理士の資格を有する者5名以上、専任教員(教授・准教授・
専任講師)は4名以上(そのうち最低2名は教授)であること。
・1年以上の活動実績を有する「附属臨床心理相談室」、及び「臨床心理実習」を実施可能な設備があること
臨床心理士指定大学院第1種では、必修の臨床心理学の演習や実習に加えて、発達心理学や社会心理学、精神医学などを学ぶことができます。
引用:「大学院指定申請に関する参考資料/公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会」
臨床心理士指定大学院2種で学べる内容は、概ね臨床心理指定大学院1種と同様です。しかし2種の場合、1種の条件のうち、臨床心理士の資格を持つ専任教授が5名以上いること、及び附属臨床心理相談室を有していることの2つを、満たしていない可能性があります。
参考:「大学院指定申請に関する参考資料/公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会」
臨床心理士専門職大学院
臨床心理士専門職大学院は、臨床心理士の養成を目的とした大学院です。指定大学院1種・2種に比べて「実践活動」に重きをおいた研究過程となっています。また、指定大学院の26単位と比べて多めの44単位を、臨床心理士養成に特化した科目として受ける必要があります。臨床心理士指定大学院第1種・第2種と比べて、専任教員スタッフの充実も図られています。
加えて、臨床心理指定大学院1種と同様に、修了後すぐに「臨床心理資格試験」を受けられる他、一般的な大学院に比べて実習が多いため、一次試験に実施される小論文は免除されます。
参考:「臨床心理士養成大学院認証事業/公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会」
公認心理師になるために進学できる大学院
大学院を修了して公認心理師試験の受験資格を得るためには、専用の養成プログラムを用意した大学院に進む必要があります。以下の10個の科目が用意されていることが条件です。人文科学研究科や文学研究科、心理学研究科などに設置されていることが多いので、興味のある大学院があれば調べてみましょう。
・保健医療分野に関する理論と支援の展開
・福祉分野に関する理論と支援の展開
・教育分野に関する理論と支援の展開
・司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開
・産業・労働分野に関する理論と支援の展開
・心理的アセスメントに関する理論と実践
・心理支援に関する理論と実践
・家族関係・集団・地域社会における心理支援に関する理論と実践
・心の健康教育に関する理論と実践
・心理実践実習(450時間以上)
臨床心理士・公認心理師資格取得のための勉強方法
臨床心理士、公認心理師になるために、大学院進学後にどのような勉強が必要になるかを解説します。
実習科目
臨床心理士・公認心理師ともに資格取得には、実際に患者に触れ合う実習科目の履修が必要です。学内外ともに実施され、学内では心理臨床センター、学外では病院や児童養護施設などで行われます。
学内での実習は、心理臨床センターに来訪する患者の心理面接や心理検査を実施する中で、臨床心理士・公認心理師としての実践的な技術を身につけていきます。学外での実習は、医療、保険、教育などさまざまな分野の現場を体験し、各現場に求められる知識やスキルを学習していきます。
参考:「臨床心理士養成のための大学院専門職学位課程評価基準要綱/公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会」
大学院で研究に取り組む
大学院の講義や演習、日々の研究活動は臨床心理士・公認心理師の資格取得に大きく役立ってくれるでしょう。講義では必修として臨床心理学や心理療法の教材や論文を読み込むほか、臨床心理現場の実例なども学べます。また、大学院によっては研究室も用意しています。教員とコミュニケーションを取り、研究に取り組むことで、臨床心理士や公認心理師に必要な知識をより深めることができるでしょう。
一次試験・二次試験対策
臨床心理試験・公認心理師試験に合格するためには、試験勉強をする必要があります。試験はマークシート形式の選択問題と小論文が出題される一次試験と、面接を実施する二次試験があります。
一次試験では治療、カウンセリングの方法や、心理系の医学・法律の知識に加え、心理学を通した地域や社会に対するアプローチなど、様々な内容が問われます。臨床心理に関する幅広い知識を身につけておく必要があります。また論文や面接は毎日の研究で論述の習慣をつけておくこと、研究室の教員に面接練習を依頼することが重要でしょう。
まとめ:臨床心理士になるには大学院進学が必須
臨床心理士になるには、大学院に進学することが必須となります。公認心理師になる上でも、大学院での研究で得た知識や経験は試験で大きく役立つでしょう。
また、大学院で勉強、及び実習を重ねることで、資格試験の合格に近づくだけでなく、将来臨床心理士になったときに役立つ知識も身につけることができるでしょう。
臨床心理士・公認心理師を志す方は、ぜひ大学院への進学を検討してみましょう。