大学院進学

通信制大学院とは?通学制との違いや授業の特徴、在学期間、学費について解説

通信制大学院は、キャンパスへ通学しなくても自宅等で授業を受けられる大学院です。平日の昼間に通学する通常の大学院と比較すると、学び方や学費などに違いがあります。通信制大学院の特徴をしっかり把握したうえで、自分に合っているかを検討することが重要です。

本記事では、通信制大学院のメリットやデメリット、修了にかかる期間、修了要件などを一般的な通学制の大学院と比較しながら解説します。

通信制大学院とは

通信制大学院とは、キャンパスへの通学が困難な人が自宅等で授業を受けられる大学院です。1998(平成10)年3月に文部科学省で制度化された、比較的新しい学びのあり方です。

通信制大学院は、主に自宅や職場から通学できる範囲に希望する大学院がない人や、職場環境・時間によって通学可能な時間帯が限られる社会人が利用します。海外からも入学できるケースが多いです。

通信制の大学院では、基本的には通学制の大学院と同水準のカリキュラムが用意されています。また、必要な単位を修得して要件を満たせば、通常の大学院と同じように学位が与えられます。修士課程(博士前期課程)を修了すれば、博士課程(博士後期課程)に進学することも可能です。

さらに、入学者の年齢構成は通学制と比べて幅広いのも特徴です。多くの通信制大学院で20〜70代までの幅広い年代の人が学んでいます。

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通学制大学院との違い

通学制と通信制の最も大きな違いは、キャンパスへの通学の有無です。通学制大学院では、基本的にキャンパスに通って学習や研究活動を行います。一方の通信制大学院では、カリキュラムの多くが自宅等での学習を中心とします。なかには、スクーリング(面接授業・メディア授業)などでキャンパスや指定の場所に行き、授業を受けることもあります。

日々をキャンパスで過ごす通学制の大学院では、授業や研究活動を対面で行うため、教員との関わりが深まりやすいでしょう。また、同じ専攻・分野の横のつながりや大学院生同士の先輩・後輩などの縦のつながりを作りやすく、お互いに刺激しあえるというメリットがあります。

通信制大学院に進学するメリット

通信制大学院に進学するメリットは、大きく分けて3つあります。

  • 自分の好きなタイミングで受講できる
  • 遠方にある大学院で学べる
  • 学費が安いことが多い

自分の好きなタイミングで受講できる

通信制大学院の授業は、印刷教材や講義動画などを用いて、学習を進めます。通学制と異なり、以下のような柔軟な学習が可能です。

  • 朝の通勤時間で受講する
  • 昼休みや仕事後の空き時間に受講する
  • 週末にまとめて受講する
  • 深夜や早朝など、自分の集中力が高い時間帯で受講する

このように、自分のライフスタイルに合わせて、大学院の授業を受けられます。時間の融通が利きやすいので、働きながら大学院で専門性の高い学びを深めたい方に向いていると言えます。

遠方にある大学院で学べる

通学制の場合、自宅や職場から通学できる範囲に希望する大学院がなければ、進学を諦めてしまうことが多いです。しかし、通信制であれば、学びたい大学院が遠方にあっても居住地を変えることなく自宅から学べます。

さまざまな大学院を比較検討したうえで、距離に縛られることなく進学先を決められるでしょう。特に地方在住の方にとって、希望する研究分野や指導教員のもとで学べる機会が大きく広がります。

また、キャンパスへ行く機会も少ないため、交通費や家賃を抑えやすい点も魅力です。

学費が安いことが多い

詳しくは後述しますが、通信制大学院は通常の大学院と比べて学費が安い傾向にあります。なるべく費用を抑えて専門性の高い学び・研究を行いたい方に向いています。

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通信制大学院のデメリット・注意点

通信制大学院には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットや注意すべき点もあります。進学を検討する際には、以下の3つのデメリットや注意点について十分に理解しておく必要があります。

  • 選べる研究科(分野)が限られる
  • 教員に質問できる機会が限られる
  • 大学院生同士が直接対面で交流できる機会が少ない

選べる研究科が限られる

通信制大学院は選択できる研究科(学問分野)が限られます。特に理工学研究科など、大規模な設備や特定の実験環境を要する研究科は注意が必要です。これらの分野では、大学院生が直接実験器具を操作したり、専門的な実習を経験したりするため、通信制の大学院にはそういった分野を扱う研究科が設置されていないことがあります。

通信制大学院を選択する際には、以下の点を確認しておきましょう。

  • 希望する研究分野の授業が開講されているか
  • カリキュラムの内容が自身の研究目的に合っているか
  • 自身の研究に必要な環境が整っているか

教員に質問できる機会が限られる

教員に直接質問できる機会が限られていることも、通信制大学院のデメリットです。

通学制の大学院では、授業やオフィスアワーで教員とコミュニケーションを取る機会があるため、研究に関する疑問をすぐに質問できます。一方、通信制の場合、教員と直接話す機会はあまりなく、疑問点が生じてもすぐに解決することが難しいのが現状です。メールやビデオ通話を通じて教員に質問することは可能ですが、迅速な返答が必要な場合には不便を感じることがあります。

通信制大学院においては疑問点や質問事項を適宜メモしておき、質問の機会がある際にまとめて質問することが重要です。

学生同士が直接対面で交流できる機会が少ない

通信制大学院では、大学院生同士が直接対面で交流できる機会が少ない点にも留意しておきましょう。

通学制の大学院では同じ研究室の大学院生はもちろん、他の大学院生との対面による交流が自然と生まれます。大学院生同士の交流は、新しいアイデアの共有や学習の相談などでとても重要です。同じ目標や課題に取り組む仲間との連帯感は、研究のモチベーションを維持する効果もあります。

一方で、通信制大学院では、このような対面による直接的な交流の機会が限られています。通信制大学院を選択する際には、オンラインでのコミュニケーションに順応できるかを考慮する必要があります。

通信制大学院の在学期間

通信制大学院の修了に必要な在学期間は、基本的には通学制と変わらず、修士課程(博士前期課程)で2年間となっています。しかし、働きながら学ぶ人が多いため、修了にかかる期間は人それぞれであり、在学期間が長くなる場合も多いです。まとまった学習が困難な人であれば、1年間に修得する単位数を抑えて、3~4年程度をかけてじっくりと学ぶケースもあります。

じっくりと時間をかけて修了したいという大学院生のニーズに応えるために、大学院のなかには、標準修業年限(通常修了するのに必要な在学期間)よりも長く在籍をして修了できる「長期履修制度」を設けているところもあります。一方、短期間での修了を希望する大学院生向けに、1年で修了できる大学院もあります。

進学先を検討する際は、希望の分野やテーマを研究できるか(指導を受けることができるか)という点に加え、自身の進学目的やライフスタイルに合う制度があるかについても事前によく調べておくことが重要です。

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通信制大学院の授業の特徴

通信制大学院では主に3つの授業形態があります。

  • 印刷教材等による授業
  • 面接授業(スクーリング)
  • メディアを利用して行う授業

各大学院では、これらの方法を効果的に組み合わせて授業を実施しています。

印刷教材等による授業は、テキストなどの印刷教材を使って自分で学ぶ形式です。大学院生は与えられた課題に沿って学習を進め、学習の成果をレポート等で報告し、添削や評価を受けます。

また、印刷教材による授業では学習効果が十分に担保できないとされる科目などでは、教員と直接対面で行う面接授業(スクーリング)を実施します。スクーリングは、一定の時期に大学院生が大学のキャンパス等に集まって教員から直接授業を受ける形式です。

面接授業(スクーリング)は、受講生の負担を軽減するために、週末や夏期・冬期に集中して行われることが多く、仕事をしながら学んでいる方でも参加しやすいです。特に修士論文・博士論文に関する指導は、スクーリングを用いるケースが多いです。ただ、スクーリング科目は必修科目ではなく、選択科目としている大学院もあります。

また、最近ではインターネットを用いた遠隔授業など、メディアを利用して行う授業を実施する大学が増加しています。遠隔授業で修得した単位を面接授業の単位に代替する大学院も出てきており、大学院の学びやすさは向上しています。

通信制大学院の修了要件

通信制大学院の修了要件は大学院によって異なりますが、以下のような要件が設定されていることが多いです。

修士課程(博士前期課程)の修了要件は、以下2つを満たしていることが条件です。

  • 基本的に2年以上の在学と30単位以上を修得
  • 必要な研究指導を受けた上、修士論文の審査及び試験に合格すること

博士課程(博士後期課程)の修了要件は、以下2つを満たしていることが条件です。

  • 基本的に3年以上の在学と必要な単位数の修得
  • 必要な研究指導を受けた上、博士論文の審査及び試験に合格すること

※これらの他に、修了に必要な単位のうち、何単位以上を面接授業やメディア授業で修得している必要があるなどの条件が定められていることがあります。

大学院によって必要な単位数や学位論文の内容、面接授業で修得する必要がある単位数などは異なります。詳細は各大学院のWebサイトなどで確認しましょう。

通信制大学院の学費

通信制大学院の学費は、通学制に比べるとやや安い傾向にあります。入学金に加えて、授業料が年間15〜60万円ほどとなっています。

ただし、一部の通信制大学院は、通学制大学院の学費とほとんど変わらない場合もあります。費用は大学院によって異なるので、最新の情報をWebサイトなどで確認するようにしてください。

通信制大学院の入学試験

通信制大学院の入学試験では、通学制と同等の入学試験が課されます。試験科目は、書類審査、小論文、面接(口述試問)などで、大学院によって異なります。研究科によっては専門科目や外国語科目の試験を課したり、面接選考をオンラインで実施したりしている大学院もあります。

さらに、通信制大学院へ出願する際にも多くの場合、研究計画書の提出が求められます。研究計画書には、なぜ志望するのか、大学院で何を学びたいかを明確に示す必要があります。

試験の詳細については、各大学院のWebサイトを確認してみましょう。

社会人が通信制大学院に通う際に重要なこと

社会人が通信制大学院に通うには、以下の3点が特に重要です。

  • 学費を確保する
  • 仕事と両立する
  • 職場や家族の理解を得る

学費を確保する

社会人が通信制大学院に通う際、学費の確保が課題となります。授業料や教材費など大学院の費用を把握し、予算計画を立てましょう。奨学金や勤務先の教育支援制度を活用すると、金銭的な負担を減らせる可能性があるため、これらの活用も検討しましょう。

仕事と両立する

仕事をしながら大学院へ通う際には、慎重な時間の調整が重要です。超過勤務が多い仕事だと、夜間の授業への出席も難しくなる場合があります。仕事と勉強を両立するには、休日に勉強の時間を確保するなどの時間管理が欠かせません。

また、長期間にわたる仕事と勉強の両立は、身体的・精神的な疲労を引き起こす可能性があります。適切な休息を取り、健康管理にも気を配りましょう

職場や家族の理解を得る

職場や家族の理解を得ることも、通信制大学院を終了するためには重要です。

家族に対しては、大学院に進学したい理由を伝えておきましょう。また、収入の増減や今後の家庭への影響も伝え、理解と協力を得ることが大切です。

職場に対しては、大学院へ進学することを事前に報告し、理解を得ることが望ましいです。企業によっては、本業に支障が出ることを理由に進学を認めていない企業もあります。進学の目的を明らかにし、必要に応じて上司や人事部と相談しましょう。

教員の直接指導を重視するなら通学制の大学院がおすすめ

一部の大学院では土日や夜間を中心に開講しているところもありますが、通学制の多くは平日の昼間に授業が実施されます。基本的には対面による授業であるため、教員とも密接に関わりあいながら指導を受けられます。

また、同じ授業の履修者や同じ専攻・研究室の大学院生とも普段から直に接する機会も多く、研究情報の交換ができたり、研究活動のモチベーションの維持・増進につなげられたりする点もメリットです。

一方、通信制の場合では、前述のとおりライフスタイルにあわせた単位の修得・研究の進行が可能です。仕事を継続しながら在学しやすい形態と言えます。

ただし、通信制では、通学制のような細やかな指導を受けることは難しいのが現状です。「疑問点を対面で質問したい」「研究について直接相談に乗ってほしい」という場合には、通学制の大学院を選ぶことがおすすめです。

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まとめ:教員など周りの人とのつながりがほしいなら通学制大学院を選ぼう

在宅で大学院の教育が受けられる通信制大学院は、時間的制約が少なく、出勤の前後、休日、仕事の空き時間などライフスタイルに合わせて学べるのが魅力です。仕事と学習を両立したい方に向いています。必要な単位を修得して修了すれば、通学制と同じように学位が与えられます。

一方、通学制大学院の場合、通信制に比べて学べる分野が非常に広いです。また、大学院で過ごす在学期間中に多くの人と直接関わりを持つことができます。同じ専攻・分野の横のつながりはもちろん、大学院生同士の先輩・後輩などの縦のつながりができる環境にあるので、同じ興味を持つ人や知識が豊富な人と知り合える貴重な期間にもなるでしょう。

自身にとって通学制と通信制のどちらへの進学が適しているか、この記事を参考に進学を検討してみてください。

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※中央大学大学院では通信制の課程は設置しておりません。