大学院へ進学するにあたっては、入学金や授業料、施設設備費などの学費がかかります。そのため、奨学金制度を利用したいと考えている人も多いのではないでしょうか?
奨学金制度を利用すれば、学費の経済的な負担を減らすことが可能です。実際に、大学院に通うために奨学金を利用する人も多くいます。
しかし、奨学金にはいくつか種類があり、それぞれ応募条件が異なります。そこで今回は、奨学金制度の特徴や大学院生を対象とした奨学金の種類について解説します。
奨学金の種類
奨学金には「貸与型」と「給付型」の2種類があります。ここでは、それぞれの特徴について解説します。
貸与型
貸与型は、学費を「借りる」奨学金制度です。あくまでお金を借りているため、将来的に返済する必要があります。基本的に在学中は返済の必要がなく、大学院修了後に返済していくことになります。
貸与型は、利息がつく「有利子」と、利息がつかない「無利子」の2種類に分けられます。有利子タイプは在学中に借りた額よりも大きな金額を返す必要があるため、受給希望者には無利子タイプが好まれます。しかし、無利子の奨学金は有利子よりも選考条件が厳しいことが多いです。
貸与型奨学金は、応募の審査が比較的やさしくお金を借りやすいですが、貸与額や返還方式によっては返済に時間がかかる可能性もあります。そのため、利用には注意が必要です。
給付型
給付型は、貸与型と違って返済する必要がない奨学金です。お金を返す必要がないため、修了後の経済的な負担が少ないのがメリットだと言えます。
しかし、貸与型に比べて採用人数が少なく、収入が〇〇円以下、成績が〇〇以上といった条件が設けられていることが多いです。また、学部や大学院での成績を参考に選考されるケースがほとんどであるため、給付型奨学金を利用できる人はどうしても限られてしまいます。
大学院生を対象にした奨学金制度
大学院生が利用できる奨学金の制度は、主に3種類あります。
・日本学生支援機構の奨学金制度
・民間団体の奨学金制度
・大学が独自で行う奨学金制度
ここからは、上記3つの奨学金制度の内容を詳しく解説します。
日本学生支援機構の奨学金
日本学生支援機構は、幅広い大学院生に対して奨学金制度を提供しており、ほとんどは貸与型の奨学金です。しかし、返還免除の制度もあり、成績や業績によっては全額免除あるいは半額免除となる場合があります。貸与型の奨学金は、主に第一種奨学金と第二種奨学金の2種類があります。
第一種奨学金
第一種奨学金は、無利子で借りられる奨学金です。修士・博士前期課程では月々5万円または8万8,000円、博士後期課程では月々8万円または12万2,000円を借りられます。
申し込み方法は、進学前(予約採用)と進学後(在学採用)で異なります。進学前の場合は、予定採用となり、なかには予約採用の募集をしていない大学院もあります。予約採用の実施の有無については、進学予定の大学院の奨学金担当窓口に問い合わせてください。進学後の在学採用では、毎年春頃に在籍する大学を通じて申し込みをします。
各奨学金の申し込み資格は、以下の通りです。
予約採用の場合:
予定採用の場合、大学等に在学または卒業した人で、毎年定める時期までに翌年度の初めに大学院研究科の修士・博士前期課程または専門職大学院(法科大学院を含む)、一貫制博士課程前期相当分(5年一貫制の博士課程の1~2年次)に入学が予定されている人。
進学後の場合:
正規の大学院生であり、経済的理由により修学困難で優れた学生等であると認められる人。
上記の資格以外にも、日本学生支援機構の奨学金を借りたことがある人には制限があったり、外国籍の人は在留資格によって申し込みができなかったりするので、確認が必要です。
いずれの場合も家計基準があり、収入基準額以下の場合に奨学金を借りられます。
中央大学大学院の場合、在学採用の受付時期は例年3月下旬〜4月中旬です。募集要項の配布窓口は、以下の場所となります。
・法学、経済学、商学、文学、総合政策研究科:奨学課(多摩キャンパス)
・理工学研究科:都心学生生活課(後楽園キャンパス)
参考:独立行政法人日本学生支援機構
参考:中央大学大学院奨学金 日本学生支援機構 在学採用(第一種:無利子、第二種;有利子)
第二種奨学金
第二種奨学金は、有利子で借りられる奨学金です。大学院の全課程を対象にしており、受給額は月々5・8・10・13・15万円から選択できます。
申し込み方法は、進学前(予約採用)と進学後(在学採用)で異なります。予約採用の募集は実施していない大学院もあるので、進学予定の大学院の奨学金担当窓口に問い合わせてください。
予約採用の申し込み資格は以下の通りです。
予定採用の場合:
大学等に在学または卒業した人で、毎年定める時期までに翌年度の初めに大学院研究科の修士・博士前期課程または専門職大学院(法科大学院を含む)、一貫制博士課程前期相当分(5年一貫制の博士課程の1~2年次)に入学が予定されている人。
進学後の場合:
正規の大学院生であり、経済的理由により修学困難で優れた学生等であると認められる人。
第一種奨学金と同様、日本学生支援機構の奨学金を借りたことがある人に制限があったり、外国籍の人は在留資格によって申し込みができなかったりするので、確認が必要です。
また、家計基準が設けられており、収入が基準額以下の場合に奨学金を借りられます。詳しくは独立行政法人日本学生支援機構のホームページで確認をしてください。
参考:独立行政法人日本学生支援機構
参考:中央大学大学院奨学金 日本学生支援機構 在学採用(第一種:無利子、第二種;有利子)
返済免除制度
日本学生支援機構の第一種奨学金を受けた人で、在学中に特に優れた業績をあげた者を対象に返還を免除する特別な制度です。この制度では、奨学金貸与額の全額、または半額が免除されます。詳しくは以下の資料を確認してください。
民間団体が行う奨学金制度
民間団体、あるいは地方公共団体の奨学金とは、民間企業が母体の財団法人(公益財団法人・一般社団法人)、市区町村などの地方公共団体などが募集する奨学金です。貸与型と給付型の両方が存在し、受け取れる金額や条件も異なります。
奨学生(奨学金を給付・貸与する学生)の募集の方法は、主に大学推薦と公募の2通りがあります。
大学推薦では、財団が大学に対して奨学生の推薦を依頼します。一般的に、大学は奨学生として推薦されることを希望する学生を募集し、大学の中で推薦する学生の選考を行います。大学から推薦された学生が、最終的に財団によって奨学生に決定されます。
一方、公募では、直接奨学生を募集します。一般的には学生が財団に直接応募書類を提出し、財団が自ら奨学生の選考・決定を行います。
中央大学大学院でも、民間団体や地方公共団体奨学金の募集に関する情報を案内しています。奨学金によって応募の方法や要件が異なるほか、年度によって募集状況が変わります。詳しくは次のページや各財団のWebサイトで確認をしてください。
大学が独自で行う学費免除制度・奨学金
大学も独自で奨学金や学費の免除制度を行っています。国公立大学では免除制度を、私立大学では奨学金制度をそれぞれ独自に運営していることが多いです。奨学金を受ける場合には、ほとんどのケースで学業成績が大きく関係します。
中央大学大学院でも独自の奨学金制度を設けています。詳細については次の項目で解説します。
中央大学大学院の奨学金制度
中央大学大学院では、独自の奨学金制度を用意しており、すべて返済不要な給付型の奨学金です。ここでは、対象や給付金額について詳しく解説します。
中央大学大学院給付奨学金
文系(法学・経済学・商学・文学研究科)では、年間で40万円が給付されます。ただし、応募状況等に鑑み、その額を2分の1(20万円)に変更することがあります。
理系(理工学・総合政策研究科)では、年間で50万円が給付されます。ただし、応募状況等に鑑み、その額を2分の1(25万円)に変更することがあります、
中央大学大学院指定試験奨学金
こちらは、本学大学院が指定する国家試験の受験を志し、学力、研究能力及び人物ともに優れている博士前期課程に在学する学生を対象にした奨学金です。対象となる国家試験は、以下の3資格です。
・国家公務員総合職試験
・公認会計士試験
・弁理士試験
この奨学金では、在学料相当額または2分の1相当額が給付されます。
飯塚毅奨学金
飯塚毅奨学金は、法学研究科博士後期課程1年次に在学する学生を対象にした奨学金です。年間25万円が給付されます。
大学院で奨学金制度を利用するための条件
大学院の奨学金制度では、主に2つの条件が設けられています。
成績基準
奨学金は優れた学業成績を有している者を対象にしており、成績基準が設けられていることがよくあります。奨学金を受給するためには、他の大学院生よりも優秀な成績を修めることが必要です。
所得制限
日本学生支援機構や民間団体の奨学金では、家庭の収入金額を基準にしている場合が多いです。収入金額が収入基準額以下の場合、奨学金を受け取りやすくなります。
奨学金の申し込み方法
奨学金の申し込み方法は、奨学金の種類によって異なります。ここでは、奨学金の種類ごとで申し込み方法を紹介します。
日本学生支援機構の奨学金
日本学生支援機構の奨学金(進学前(予約採用))は、以下の流れで申請します。
1.大学院に提出する「奨学金の同意書」「収入に関する証明書」を公式ホームページから入手
2.振込口座、受け取る金額などを決定する
3.提出書類を記入する
4.進学予定の大学へ提出する
5.進学予定の大学から識別番号を受け取り、ホームページへ入力して申し込み完了
6.奨学生採用候補者の決定
詳しくは以下の資料をご覧ください。
民間団体・地方公共団体の奨学金
民間団体・地方公共団体の奨学金には、大学に申請書類を提出するものと、個人で直接出願するものの2パターンがあります。
大学に申請書類を提出する場合、応募書類を大学から受け取る、あるいは公式HPから書類をダウンロードし、応募書類を大学へ提出します。
個人で直接出願する場合には、各団体のWebサイトから応募書類をダウンロードし、記入した書類を郵送で送って申請します。
大学が独自で行う学費減免制度・奨学金
大学が独自で行う学費免除制度や減額制度、奨学金には、大学の窓口かWebサイトで配布されている募集要項や応募書類を大学の窓口へ提出して申し込みます。申請後は学内で選考が行われ、採否の結果が発表されます。
中央大学大学院の学費について、こちらの記事に研究科別にまとめてあるので参考にしてみてください。
https://www.chuo-u.ac.jp/academics/graduateschool/news/2021/10/56954/
まとめ
奨学金の制度はさまざまあり、うまく利用することで在学中の金銭面の負担を軽減できます。しかし、貸与型の場合はあくまで借りていることを忘れずに、返済についても考慮する必要があります。自分が対象になる奨学金について事前によく確認し、利用を申し込むようにしましょう。
なお、学費の経済的な負担を軽減する方法には、奨学金や学費免除制度の活用以外の方法もあります。例えば、大学によっては博士前期課程の1年修了制度や学部を3年で卒業できる早期卒業制度などがあり、これらを活用すれば、大学院修了までの学費を抑え、さらに修士学位の修得までにかかる期間を短縮することも可能です。