大学院進学

大学院に行く意味とは?進学のメリットや得られるスキルとともに解説

学部を卒業した後、大学院(修士(博士前期)課程)に行くことにどのような意味があるのか分からない方も多いでしょう。大学院に行けば学部よりさらに深い内容の研究ができることは知っていても、具体的にどのようなメリットがあるのか、どのようなスキルを得られるのかを知る機会は多くありません。

この記事では、大学院修士(博士前期)課程で学べる内容と、進学するメリットや注意点について解説します。

大学院への進学率

令和3年度学校基本調査」によると、令和3年度の学部から大学院修士(博士前期)課程への進学率は11.8%で、毎年微減傾向です。

また、大学院進学率は学部ごとに大きな差があります。「学士課程修了者の進学率の推移(分野別)」によれば、平成30年度の修士課程進学率は理学部が42.3%、工学部が36.3%であるのに対し、社会科学部は2.3%です。

大学院の進学率についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

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大学院に行く意味とは?

次に、大学院修士(博士前期)課程に行くメリットを紹介します。

興味関心を深められる

学部で興味を持った内容についてより深く学修・研究できることが一番のメリットです。

例えば、「海洋プラスチック問題」に関心がある経済学研究科の大学院生は、使い捨てプラスチック容器を使いつつも、環境に配慮する行動を取るために、どのように消費者の心理を理解しアプローチすればいいのかを分析・研究しています。

修士(博士前期)課程では指導教授の丁寧なアドバイスをもらったり、学会に参加したりすることができ、学部よりも専門分野の知見を深める機会が増えます。それらの機会を活かして、自分の興味を突き詰めるとよいでしょう。

参考:【究める】大学院生の生活

専門職への就職が有利になる

自身の専門分野についてより深い学修・研究を行うことで、専門性の高い職(研究職・専門職)に就きやすくなります。大学教員や研究所の研究員などに限らず、企業や公務員の研究職においても、修士号や博士号を取得していないと採用に応募できないケースもあります。

修士号や博士号が必要でなくとも、就職後に大学院で養った知識や技能を活かせる機会は多くあります。例えば、デジタル社会となった今日では、最新の経営学の知識やデータサイエンス、統計学のスキルを求める企業が増えています。また、学部での学びを基に、大学院で身につけたより高度な知識や専門スキルを活かして学芸員になったケースもあります。

参考:【究める】活躍する修了生

大学教員や他の大学院生とのつながりが生まれる

大学院に進学し研究を深める中で、大学教員(研究者)や他の大学院生とつながりを作ることができます。学部と比べて少人数の授業が多く、議論を通じて知見を深めたり、共同で研究をしたりする機会が増える場合もあるため、強いコネクションを作ることができるでしょう。

また、学会などでは他大学の教員と話す機会もあるため、自分の専門分野について様々な知見を得ることができます。そのような交流からさらに研究を深めたり、就職へつながったりする場合もあるため、大学院進学後は積極的に人と関わる機会を作るとよいでしょう。

大学院で得られるもの

大学院修士(博士前期)課程では具体的にどのようなことが学べるのか、どのようなスキルを得られるのかを説明します。

専門分野の知識

大学院は学部と比べて専門分野の知識をさらに深めることができます。例えば、法学研究科ではただ法律を知るだけでなく、なぜ立法されたのか、どのような趣旨の法律なのかなどを、諸外国の法律と比較したり、実際の裁判例を理解したりすることを通じて法的思考能力を向上させることができます。

このように、大学院では大学教員や士業、企業の研究職などの高い専門性が求められる職に必要な知識やスキルを身につけられます。

参考:【究める】修了生の声

批判的に考える力が養われる

論文執筆や研究の過程では、答えがある課題に取り組むのではなく、自らで課題を設定し研究成果を示すことが重要です。その中で、研究テーマに関して問題意識を持って批判的に考え、様々な視点から調査・分析、考察する力が養われます。

実際に専門分野の異なる複数の教員や他の大学院生と意見を交換する中で、専門分野に関して広い視野を身につけることができます。

参考:【究める】在学生の声

プレゼンテーションスキル

大学院では、日々の授業や研究室の活動でプレゼンテーション(プレゼン)の機会が増えるため、プレゼン発表や、資料作成の能力を高めることができるでしょう。

特に学会に参加すれば、大学院生だけでなく、その分野の専門家である研究者を相手に発表するため、プレゼンに求められる水準が大幅に上がります。また、発表の方法や内容について、大学教員をはじめとする専門家から直接フィードバックをもらえる機会もあります。

参考:【究める】大学院生の生活

理工学研究科の資料請求文系研究科の資料請求 

大学院での生活

大学院修士(博士前期)課程での生活はどのようなものなのでしょうか。研究室や学会など、研究に関わるものを中心に説明します。

研究活動

大学院では、指導教授から研究に関する指導を受けながら、自身の研究を進めていくことになります。特に理系の場合は、特定の分野について研究を行う「研究室」に所属することがほとんどです。研究室には中心となる教員のもとに、共通の興味関心を持った学生が集まり、特定の研究テーマについて自発的に研究を深めていくことになります。

また文系の研究科では、フィールドワークを行う演習に参加することもあります。研究分野が近い大学院生が集まっており、調査やディスカッションでは主体的な発言や行動が求められます。

授業

大学院では研究指導の時間が多くなりますが、特に修士(博士前期)課程では、授業を受け、単位を取得する必要があります。修士課程を修了するには30単位以上の単位取得が必要です。

参考:文部科学省 大学院設置基準

大学院の授業では少人数授業が多く、輪読や発表・報告、それにもとづく議論が中心となる場合が多いでしょう。

学部時代と比べて教員と話す機会も多くなり、文献だけでは知ることができない海外事情なども得ることができます。演習は学生の関心や研究テーマに沿ったものになるので、自身の研究テーマについての理解が自然に深まります。

参考:【究める】在学生の声

論文執筆

大学院では、修了にあたり自らの研究成果として修士論文・博士論文を執筆します。修士・博士論文は研究室での活動をまとめ、独自の研究成果を記すことが大事です。学部の卒業論文と比べて質・量ともに高いレベルの研究成果が求められます。論文執筆にあたっては、インタビュー取材を行ったり、国内外で現地調査に出向いたりするようなケースもあります。

また、修士(博士前期)課程の大学院生であっても、すぐれた論文を執筆すれば、学会誌や世界的な論文雑誌に掲載されることもあるでしょう。

参考:【究める】修了生の声
参考:【究める】在学生の声

学会や各種行事

学会とは、研究者が自らの研究成果を発表し、他の研究者と議論や意見交換を行う場です。大学院生になると、学会に参加する機会もあります。

学会に参加し、自らの研究結果を発表することにより、他の大学院の研究者から直接フィードバックや質問をもらい、研究内容に対する知見を深めることができます。学会発表を行うことで自身の研究業績にもなり、博士(博士後期)課程以降の研究や留学、就職等で評価されることもあるでしょう。

また、学会をはじめ所属している研究室や専攻の各種行事に運営として関わる機会もあります。運営にあたっては会場の確保や各所での告知を手伝うこともあり、その過程では、普段の大学院での生活では出会うことのない外部の人たちと知り合うことができます。

参考:【究める】修了生の声

大学院への進学を選ぶ際の注意点

すべての人にとって大学院進学が最適であるとは限りません。大学院進学には以下のような注意点もあります。

・学部より修得すべき知識や研究内容が高度化し、学業に費やす時間が増える
・社会に出るタイミングが遅くなる
・学費等の経済的な負担がある

大学院に進学すると最低でも2年は社会に出るタイミングが遅くなるほか、学費や時間を費やすことになります。また、大学院での研究は学部よりも高度な内容になり、容易にこなせるものではないため、主体的に取り組むモチベーションが求められます。大学院に進学する際は、学費や研究の時間を費やすのに値する明確な目的を持つことが重要です。

まとめ:大学院に行くなら目的を明確にしよう

大学院は自らの興味のある分野について深く学び、研究する場です。日々の授業や演習、論文執筆に向けた研究活動を通じて、専門性の高い知識や技能、論理的思考力、プレゼンテーションスキルを身につけることができるでしょう。

また、研究室や学会を通して様々な研究者とつながりを持てたり、意見を交換したり、今までにない知見を得たりできる場でもあります。研究者、企業や自治体への就職のどちらの道を選んでも、大学院での研究を通して得られた専門知識やスキル、人脈は大きく役に立つでしょう。

一方、明確な目的がないと、研究活動の目的や意義を見出しにくく、大学院での研究はとても厳しく、精神的にも負担が大きいものになります。なぜ進学するのか、どのような目的で行きたいのか、将来どのようなキャリアに進みたいのか明確にした上で、自らの目的に合った大学院を選ぶことが大事です。