「研究したい分野がある」
「新たな発見で社会にインパクトを与えたい」
「社会課題の解決に貢献したい」
このような思いで、研究者になることを志している方も多いでしょう。研究者はやりがいの大きい魅力的な仕事ですが、研究者になるのは狭き門です。
今回は、研究者を目指している方に向けて、研究者になるにはどうすればよいか、主な就職先や研究者に必要な資質、やるべきことなどを解説します。
研究者とは
そもそも研究者とは、新しい知識や技術を発見する、あるいは知識や技術の新たな活用方法を見つけるために研究活動を行う人のことです。自然科学や社会科学、人文科学など、研究者は幅広い領域で活躍しています。
研究の種類
研究は、大きく基礎研究、応用研究、開発研究の3つに分けられます。
種類 | 概要 | 例 |
基礎研究 | 基本原理の解明や真理の探求、新たな知の発見・創出を目指して研究活動を行う | 断熱性が高い新たな物質を発見するための研究 |
応用研究 | 基礎研究で発見された知識の実用化を目指す、あるいはすでに実用化されている方法に関して、新たな応用方法を探る | 新たに発見された断熱性が高い物質を、繊維にするための研究 |
開発研究 | 基礎研究や応用研究、実際の経験から得た知識を利用して、新しい材料や装置、システム、工程などを導入する、あるいは改良する | 断熱性が高い物質から作った繊維を用いて、着心地のよい衣服を作るための研究 |
研究者の仕事内容
研究者の主な仕事内容は以下の通りです。
- 実験や調査の計画
- 実験・調査・分析
- 論文の執筆・発表(投稿)
- 学会への参加・発表
- 研究活動に関する会議の準備・参加
- 教育活動(授業や研究指導)(大学教員の場合)
メインの仕事は実験や調査、分析といった研究活動ですが、それ以外にも研究に付随する論文執筆や学会への参加、研究成果の発表など、研究者がやるべきことは多数あります。
また、大学教員として働く場合には、自身の研究活動の一方で、講義やゼミの準備・実施、試験の採点など、教育者としての業務も担当します。
研究者になるにはどうすればよい?
研究者になる方法は、主に以下の通りです。
- 専門分野を見つける
- 大学院を修了する
- 大学や研究機関などに就職する
それぞれ解説します。
1.専門分野を見つける
まずは、自身が研究したい専門分野を見つけましょう。
一口に研究者と言っても、その専門分野は理系分野から文系分野まで多岐に渡ります。専門分野ごとに、以下のように多様な研究者が存在します。
自然科学系研究者 | 医学研究者、医薬品研究者、化学研究者、解剖学研究者、機械工学研究者、気象学研究者、建築工学研究者、工学研究者、材料工学研究者、土木工学研究者、農学研究者 など |
人文・社会科学系等研究者 | エコノミスト、経営学研究者、政治学研究者、心理学研究者、文学研究者、哲学研究者、法学研究者、美術研究者 など |
参考:ハローワークインターネットサービス「02 研究・技術の職業」
まずは興味のある分野の論文や専門書に目を通したり、その分野の教員に相談したりして、自分自身が研究の対象とする専門分野を見つけましょう。
2.大学院を修了する
研究者になるためには、基本的には大学院を修了し、修士号や博士号を取得することが求められます。特に、大学や国の専門機関に所属する研究者になるためには、博士号の取得が必要です。研究者としての選択肢を広げたい方は、博士号の取得までを視野に入れる必要があるでしょう。
3.大学や研究機関などに就職する
必要な学位を取得した後、大学や公的研究機関、民間企業の研究部門などに所属するのが、研究者になるためのルートです。
以下では、研究者になるための主な3つの就職先について紹介します。
- 大学教員として研究活動を行う
- 公的研究機関の研究者になる
- 民間企業の研究職になる
大学教員として研究活動を行う
1つ目は、大学教員として大学で研究活動を行うルートです。専門分野の教員として学生に授業や研究指導を行いながら、自身の研究活動を行います。
大学教員になるためには、ほとんどの場合博士課程(博士後期課程)を修了して博士号を取得していることが必要です。
学位の取得後は、ポスドクという任期が決まった研究員になったり、大学の非常勤講師として研究業績や教育歴を積んだりします。ポスドクの任期は1〜5年程度であり、任期内で一定の成果を上げることで、助教、准教授、教授とキャリアアップする道が開けることもあります。
公的研究機関の研究者になる
2つ目は、公的研究機関に所属して研究者になるルートです。公的研究機関には、文部科学省や農林水産省など各省庁所轄の研究所と、都道府県所轄の研究所があります。
大学と同様、公的研究機関の研究者になるためには、博士号の取得が必須であるケースが多いです。また、公的研究機関の研究員は公務員であるため、公務員試験に合格する必要もあります。各省庁所轄の研究所に所属するためには、国家公務員試験に合格しなければなりません。
民間企業の研究職になる
3つ目は、研究職を募集している民間企業に入社し、研究職として働くルートです。
大学や公的研究機関などのアカデミアと異なり、自社の製品の改良や新技術開発のために研究活動を行います。基礎研究よりは、応用研究や開発研究がメインとなるのがポイントです。
民間企業の研究職に就く場合は、修士課程(博士前期課程)を修了して修士号を取得していることが求められるケースが多く見られます。
研究者になる難易度
研究者になるのは狭き門であり、難易度はかなり高いと言えます。研究者は非常に専門性が高い職業であり、高度な能力や知識が求められるためです。
特に、大学や公的研究機関の研究者になるためには、基本的には博士号の取得が求められます。博士課程を修了するためには、所定の単位を取得し、博士論文の審査に合格しなければなりません。
民間企業の研究職に就く場合も、採用枠は10名以下と少ない傾向にあり、就職難易度は高いと言えます。
研究者になるにはどのような資質・スキルが必要?
ここでは、研究者に求められる資質・スキルを解説します。
- 知的好奇心・探究心
- 論理的思考力
- 分析力
- 粘り強さ
- コミュニケーション能力
知的好奇心・探究心
研究者には、知的好奇心と探究心が欠かせません「なぜそうなるのか」「成果を出すためにはどうすればよいのか」を常に考え、1つのテーマに向き合い続ける職業であるためです。
研究活動を進める中で、仮説とは異なる結果になったり、わからないことが出てきたりすることも少なくありません。その際に「もっと研究したい」「面白い」と思える方は、研究者に向いています。
論理的思考力
論理的思考力も必要なスキルです。
研究活動では、仮説を立て、その仮説が正しいかを検証するために必要な実験や調査を行います。そして、結果を受けて次にやるべきことを考えます。そのためには、論理的に道筋を立てて考えることが必要です。
また、論文を執筆したり研究成果をわかりやすくプレゼンしたりするためにも、論理的思考力が求められます。
分析力
研究者には、分析力も必要です。
研究者は実験や調査を行って終わりではありません。そこで得られた結果から新しい発見を得られるよう、あらゆる角度から分析しなければなりません。優れた分析力を持つ研究者なら、1つの結果から有意義な結論を導き出せるでしょう。
粘り強さ
研究活動は地道であるため、粘り強さも求められます。
研究内容によっては、成果が出るまで数年かかることもあるでしょう。すぐに結果が出ないからといって諦めるのではなく、最後まで根気よく取り組む必要があります。
1つのものごとに粘り強く挑戦し続けられる方や、失敗しても前向きに気持ちを切り替えられる方は、研究者に適しています。
コミュニケーション能力
研究者には、コミュニケーション能力も必要です。
研究者というと、1人で黙々と研究活動を行うというイメージを持っている方もいるでしょう。しかし、研究活動ではチームで協力する場面も多く、他の研究者や部門と連携する必要があります。コミュニケーション能力が高い方なら、研究活動を円滑に進められるでしょう。
特に、応用研究に携わる場合は、専門分野について知識がない他部署や社外の人と関わる機会も少なくありません。研究内容や成果について相手にわかりやすく伝えるためには、コミュニケーション能力が必要です。
研究者のやりがい
研究者になるのは難しく、成果を出すのも容易ではありません。しかし、その分大きなやりがいを得られる職業です。
研究者になれば、自身の興味のある分野を突き詰めて仕事にできます。熱中できるほど好きな分野がある方や何かを追求したいという方にとっては、まさに天職と言えるでしょう。
また、日々の地道な研究活動の結果、新たな発見や研究成果を得られた場合は、大きなやりがいを感じられます。自身の研究内容が世の中の役に立ち、多くの人々の生活の向上や社会環境の改善・向上につながっているという実感を味わえるのも、研究者になる大きな醍醐味です。
研究者になるためにやるべきこと
以下では、研究者を目指す人がやるべきことを紹介します。
- 学部生のうちから研究活動に取り組む
- 研究職のインターンシップに参加する
- 英語を学習する
学部生のうちから研究活動に取り組む
研究者を目指す場合は、学部生のうちから熱心に研究活動に取り組みましょう。早くから小さな研究活動を積み重ねることで、研究者に必要な研究スキルを着実に身につけられます。
また、自身の研究内容や大まかな方向性を早期に見出すことで、進学先の選択や進学準備にも役立ちます。大学院での研究活動も、より有意義なものになるでしょう。
さらに、学部生のうちに執筆した論文や研究会等での発表が、研究者として活躍するための重要な研究成果の基礎になる可能性もあります。
大学院に進学する前から少しでも研究活動に積極的に取り組み、多様な経験やスキルを培いましょう。
研究職のインターンシップに参加する
企業が実施する研究職向けのインターンシップに参加するのも1つの方法です。インターンシップでは実際の業務を体験できることが多く、自身に研究者としての適性があるかを判断する材料になるでしょう。
民間企業で働く研究者を志望している場合は、インターンシップに参加することで採用選考を有利に進められる可能性もあります。
英語を学習する
研究者には英語力が求められるため、早いうちから英語学習を進めることも大切です。
国際的には、最先端の研究成果を含む論文の多くが英語で執筆されています。論文を正しく理解して最先端の情報収集するためには、一定の英語力が不可欠です。
また、英語で論文を執筆する機会や、国際学会に参加して英語でプレゼンテーションを行う機会も少なくありません。プロジェクトによっては、海外の研究者と一緒に研究活動を進めることもあるでしょう。
グローバルに活躍できる研究者を目指すためには、英語学習にも力を入れましょう。
研究者についてよくある質問
最後に、研究者についてよくある質問を紹介します。
Q.社会人から研究者になることは可能?
A.社会人から研究者になることも可能です。
大学院の中には、社会人向けに平日夜間や土日に開講しているところや、通信制で受講・研究できたりするところもあります。社会人が通いやすいようカリキュラムが設計されているため、働きながら研究者を目指せるのが魅力です。所定の単位を取得して審査に合格すれば、修士や博士の学位を得られます。自身の社会人経験の延長線上の分野であれば、実務経験を活かした研究も実現できるでしょう。
社会人として働きながら研究者を目指している方は、社会人向け大学院への進学を検討してはいかがでしょうか。
Q.研究者以外で研究に携われる仕事はある?
A.研究職には、研究者以外にも研究事務と研究補助があります。
研究事務は、研究活動における事務作業を担当する職種です。研究資材の調達や管理、報告書の作成、論文の検索などを行います。
研究補助は、研究活動における実験をサポートする職種です。実験結果の計測やデータの記録、実験器具の洗浄など、研究者の補佐として活躍します。
将来研究活動に携わりたい方は、研究者以外にもこういった関わり方があることを理解しておくとよいでしょう。
まとめ:大学院に進学して研究者への第一歩を踏み出そう
研究者は、1つの専門分野を突き詰めて新たな発見を得る、非常に専門性の高い職業です。地道でハードである一方、興味のある分野に没頭でき、社会貢献性も高い魅力的な仕事です。
研究者になるには、基本的には修士号や博士号の取得が求められます。特に、大学や公的研究機関で働くためには、博士号まで取得していることが求められるケースが多く見られます。
研究者を目指す方は、まずは専門分野を見つけて大学院に進学し、研究者としての第一歩を踏み出しましょう。
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