大学院に進学するか、就職するかで悩んでいる文系の大学生は多いです。「文系の大学院生は就職が大変」と言われることも多く、就職に不安を抱えて進学を迷っている方もいることでしょう。しかし実は、文系の大学院生だからといって就職活動で困るわけではありません。
文系大学院で身につけた専門性を活かせる仕事も多く存在します。また、専門に関係のない仕事でも、ポイントを押さえれば内定に近づけるのです。
この記事では、文系大学院生の就職活動が大変であると言われる理由や、就職活動のポイントを解説します。さらに、大学院進学か就職かで迷っている方に向けて、進路の決め方についても紹介します。将来を見据えて進路選択に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
文系の大学院生は就職活動が大変であると言われる理由
結論から言うと、文系大学院に進学したからといって就職活動がスムーズに進まなくなることは少ないです。しかし、以下のような理由から、就職活動が大変であると言われることがあります。
- 身につけた専門性が職種に直結しないことがあるため
- 学業やアルバイトと就活の両立が難しいため
専門性が職種に直結しないことがある
理系の大学院生が就活をする場合、学部生で就活するよりも専門性の高い職種に就きやすいと言われることが多いです。例えば、メーカーの研究開発職で活躍している大学院修了者は多く存在します。一方、文系の大学院生の就活では、専門性の高い職種に就くのが難しく、大学院での専門的な学びが職種に直結しにくいと、まことしやかに言われています。
文部科学省の「学校基本調査報告書」令和元年度版(確定値)によると、文系修士修了生の正規の職員等の就職率は「人文 42.1%」「社会 63.6%」です。一方、理系修士修了生は「理学 75.7%」「工学 89.9%」と、理系と文系では大きな開きがあることが分かります。この点も、文系の大学院の学生は就職活動が大変であると言われる所以でしょう。
とはいえ、文系理系問わず、専門性が必要とされる研究職や技術職は修士号以上の学歴が求められるケースが多く、大学院への進学によって就職できる仕事の幅が広がります。また、大学院での学びを通じて得られる分析力や思考力、課題解決能力といった能力は、仕事をするうえで重要なため、非常に役立ちます。
学業やアルバイトと就活の両立が難しい
大学院では、学部よりも専門性の高い学びが行われます。文系大学院の場合、文献講読(輪読)のように少人数でディスカッションをする形式や、学生がプレゼン(報告)して進める形式の授業が多いため、授業の予習復習が特に重要です。
また、学部に比べ、レポートやプレゼン発表が課せられる機会が多いため、その準備にも時間がかかります。さらに、修士論文の執筆にも多くの時間を費やす必要があるため、学業と就活を両立させるのは容易ではありません。
加えて、家族から経済的なサポートを受けられない場合、学費や生活費をアルバイトをして賄う必要があります。学費は大学院によって異なりますが、相応の費用が必要です。学業・アルバイトと就活を両立させることは難しく、就活に十分な時間を割けない可能性もあります。そのため、就活との両立が難しいことから、就活で不利と言われることが多いのです。
文系の大学院生が就活をする際のポイント
文系大学院生が就活するうえでは、以下の2つの選択肢があります。
- 大学院での学びを活かした進路
- 研究内容とは関係のない進路
前者を選ぶことは、文系大学院生が就活に成功するうえでの1つのポイントです。しかし、必ずしもその進路を選ばないといけないわけではありません。研究内容と関係がなくても、興味がある進路なら積極的にチャレンジするべきです。
ここでは、文系大学院での学びを活かした進路の具体例と、研究内容とは関係のない進路で就活をする際のポイントを紹介します。
大学院での学びを活かした進路を選択する
文系の大学院での学びを活かせる進路は数多く存在します。大学院での学びを活かした進路の例は以下のとおりです。
- 研究者・大学教員
- 学芸員・心理職などの専門職
- 税理士・司法書士などの士業
- 国際機関職員
- 公務員
- 教員(中学・高校)
- 研究職
大学院から研究者を目指す方は多いです。研究者を目指す場合は、ほとんどの方が博士前期課程(修士課程)修了後、博士後期課程に進学します。研究者としての進路を歩む場合、大学の専任教員、非常勤講師のいずれかとして働くことになります。
学芸員は資格取得者が多いため、大学院を修了していることが、就職に近づく有効な手段であることが多いです。また、公認心理師や臨床心理士などの心理職は、指定された科目を開設する大学院において該当科目を履修し、修了することで受験資格を満たす必要があります。こうした専門職は、大学院での専門性を存分に活かした進路と言えるでしょう。
公務員を目指す方も多いです。公務員の中でも、国際機関で働く「国際公務員」は、採用において専門知識や語学力などが求められ、修士号以上の学歴が要求されることも少なくありません。また、中学・高校の教員を目指す方も多くなってきています。特に私立の中学や高校の教員採用については、修士号を取得していることを条件とする採用が非常に増えているのが現状です。
さらに、民間企業でも、大学院で培った分析力や思考力を活かせることが多いです。大学院で専門的なスキルを身につけることで、キャリアアップにつながる可能性が大いにあります。学部の範疇を超えた幅広い視野や体系的かつ専門的な知識が重視される進路も、大学院での学びを活かした進路と言えます。
研究内容と関係のない職業を目指す場合は研究以外のポイントが重要
大学院での研究内容に直接関係がない進路を選ぶ、という選択肢もあります。大学院で身につけられるものは専門性だけではありません。論理的思考力や分析力など、あらゆる仕事のベースとなる重要な能力も身につきます。そのため、研究内容と関係しない職業を選ぶ方も多いです。
研究内容に直結しない業界を目指す場合は、自分自身のことを改めて見つめ直し、以下のポイントについて整理するのがおすすめです。
- その業界に関心を持った理由
- 企業との相性
- 研究以外のアピールポイント
- 大学院進学を選んだ理由
- 専門分野に限定されない大学院で身につけた能力(課題発見・解決能力、論理的思考力、分析力など)
研究以外のポイントを整理し、それぞれについて明確に説明できるようにすることが大切です。また、自身の研究内容について、その分野に明るくない人にも、簡潔にわかりやすく説明できるようにしておくとよいです。
文系の大学院へ進学するか就職するかで迷った時の対処法
大学生の中には、文系の大学院に進学するべきか、就職するべきかで迷う方も多いでしょう。その際の対処法は以下のとおりです。
- 大学院に進学したい理由やメリットを考える
- 先輩に話を聞く
大学院に進学したい理由やメリットを考える
どちらの進路を選ぶにしろ、目的を明確にする必要があります。まずは、そもそもなぜ大学院に進学したいのかを考え、何を目的に大学院に進学するかを明らかにしましょう。進学か就職かは、人生の中で大きな決断になります。安易に判断するのではなく、目的意識を持って選択することが大切です。
また、大学院に進学するメリットにも目を向けてみることも重要です。大学院に進学するメリットには、以下のようなものがあります。
- 学部よりも高い専門性が身につく
- 論理的思考力や分析力が養われる
- 教員や実務家などと交流できる機会が多い
- 将来的に各界で活躍が期待される人との人脈ができる
大学院では、学びたい分野の勉強に没頭でき、学部よりも高い専門性が身につきます。さらに、論理的思考力や分析力も養えます。加えて、文献を読んだり1つのテーマについてあらゆる角度から熟考したりする機会や、自分の考えをプレゼンでわかりやすく発表する機会が多いです。そのため、専門性だけでなく、論理的思考力や分析力といったあらゆる仕事に横断して使えるスキルが身につくのです。
また、教員との距離が近いのも魅力です。質問や議論を通して学びを深められます。さらに、学会や研究会に参加することで、他大学の教員や実務家とも交流できる可能性があり、知見がより広がるでしょう。将来的に各界で活躍が期待される人と交流が持てるのも、大学院ならではの魅力です。
先輩に話を聞く
先輩に話を聞くことも重要です。以下の2パターンの進路を選んだ先輩からそれぞれ話を聞くことで、進路を決めやすくなります。
- 文系大学院を修了して就職した先輩
- 文系大学院進学か迷った末に学部卒で就職した先輩
先輩から話を聞くことで、文系大学院に進学した先輩の就活事情はどうだったのか、進学ではなく就職を選んだ先輩はどのような判断基準で進路を選択したのか、を実体験をもとに知ることができます。
まとめ
この記事では、文系大学院生の就職について、文系大学院生の就職活動が大変であると言われる理由や、就職活動のポイント、大学院進学か就職かで迷っている場合の進路の決め方について解説しました。
文系大学院生だからといって就職がスムーズに進まないことはありません。文系大学院で身につけた専門性を活かせる仕事も存在します。また、専門に関係のない仕事でも、ポイントを押さえれば内定に近づけるのです。進路選択では、特に目的意識を持つことが大切です。進路に迷っている方は、大学院で何をしたいかをまずは明確にしてください。
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