研究・教育

中央大学大学院の科目等履修生制度とは?制度の概要やメリットなどを解説

仕事や経済的な理由などによって大学院への進学は難しいものの、興味のある学問を大学院で学びたいという方には、科目等履修生制度の利用が望ましいです。科目等履修生制度を利用することで、大学院に入学せずに、複数の科目を履修して単位を取得できます。非常に有用な制度であるものの、存在を知らない方も少なくありません。

今回は、科目等履修生制度の概要や出願から履修までの流れ、科目等履修生制度を利用するメリットや中央大学大学院の科目等履修生制度について紹介します。科目等履修生制度に興味がある方はぜひ参考にしてください。

科目等履修生制度とは

科目等履修生制度とは、大学院の研究科生(通常の大学院生で正規生とも呼ばれる)として入学せず、特定の科目を履修して単位認定を受けられる制度です。

ほかの研究科生に混じって、授業に出席してレポートを提出したり、報告・発表を行ったりして、単位を取得できます。

大学院に頻繁に通学して学ぶことが難しい方も、科目等履修制度によって興味のある学問の学びを深めたり、資格取得のために必要な単位を取得できたりします。

2023年度は、全国で合計613の大学と612の大学院で、科目等履修生制度が実施されています。

参考:独立行政法人大学改革支援・学位授与機構「令和5年度 科目等履修生制度の開設大学一覧」

科目等履修生制度と聴講生の違い

科目等履修生制度のほかに、聴講生制度というものもあります。科目履修生制度と聴講生制度の最も大きな違いは、単位の取得の有無です。聴講生制度は、特定の科目を聴講できる制度であり、単位は付与されません。一方、科目等履修生制度では、前述の通り単位が付与されます。

科目等履修生が履修できる科目

科目等履修生が履修できる科目は多岐にわたります。大学院によって異なりますが、履修できる科目例は以下の通りです。

<ビジネス系>

  • マーケティング
  • ビジネススキル・ロジカルシンキング
  • 会計・財務・ファイナンス
  • 経営・事業戦略
  • 組織マネジメント・リーダーシップ
  • 会社法・契約法 など

<IT系>

  • 機械学習
  • ビッグデータ
  • システム設計
  • インターネットビジネス など

<資格取得関連>

  • 教育職員免許
  • 学芸員
  • 司書
  • 司書教諭
  • 心理カウンセラー などの資格取得に必要な指定科目

ビジネスにも役立つ、多種多様な科目を履修できるのが特徴です。大学院によっては、理系の研究科で開講されている科目を履修できる場合もあります。

科目等履修生制度の履修期間

履修期間は、科目の開講期間によって異なります。

1科目の開講期間は、2学期制(セメスター制)なら4ヶ月程度、4学期制(クォーター制)なら2ヶ月程度が一般的です。半年や1年程度としている大学院もありますが、いずれも1年以内に履修できます。大学院が定めた履修可能単位数内であれば、複数の科目を履修することも可能です。

また、審査を受けることで、次年度も継続して科目等履修生として特定の科目を履修できるケースもあります。

科目等履修生制度を利用するまでの流れ

ここでは、科目等履修生制度を利用して、科目を履修するまでの流れを説明します。

  1. 履修したい科目を決める
  2. 出願資格を確認する
  3. 科目等履修生に出願し、審査を受ける
  4. 入学金・受講料(科目等履修料)を納入する

1.履修したい科目を決める

大学院が発表する時間割や科目の内容を見て、履修したい科目を決めましょう。

大学院の全ての研究科が、科目等履修生制度を実施しているとは限りません。また、履修できる科目や科目数(単位数)に制限があることがほとんどです。

科目等履修生の募集要項を確認し、問題なく履修できるかをチェックしましょう。

2.出願資格を確認する

出願資格の確認も欠かせません。出願資格は大学院によって異なりますが、基本的には「学士号を有している、またはそれと同等以上の学力があると認められた方」としているケースが多いです。一般の大学院生とともに学ぶため、科目を履修するために十分な学力があると認められることが必要だと言えるでしょう。

例えば、中央大学大学院で科目等履修生に出願するためには、学士の学位を有する者と認められる必要があります。外国籍の方の場合、原則として出願時に履修希望期間中の本邦在留が認められていることも必要です。

なお、教員免許状や学芸員、司書などの資格取得を目的に科目等履修生制度を利用する場合は、別途条件が課せられることがあります。出願資格と併せて、資格取得の条件もチェックしましょう。

3.審査を受ける

科目等履修生制度を利用するためには、審査を受けて合格しなければならないケースが多いです。

基本的には、願書や申請書、志望理由書などの出願書類をもとに書類審査が行われます。書類審査だけでなく、筆記試験や口述試験が課せられる場合もあります。

なお、出願時には大学の卒業証明書や成績証明書などの提出が必要です。出身大学で発行してもらう必要があり、発行までに数日かかることもあるため、スケジュールに余裕を持って準備しましょう。

4.入学金・受講料を納入する

科目等履修生制度は、大学院の正規の課程に入学するわけではありませんが、科目履修料のほか入学手続料が必要になるケースがほとんどです。

ただし、前年度に科目等履修生度を利用している場合は、入学手続料が免除されることもあります。

科目等履修生制度を利用するメリット

科目等履修生制度を利用するメリットは、以下の3つです。

  • 大学院への進学(通学)が難しい場合でも興味のある学問を学べる
  • 大学院における単位取得を要する資格が取得できる
  • 通常の大学院生として入学する前に大学院進学後の姿を具体的に想像、体感できる

それぞれのメリットについて解説します。

大学院への進学が難しい方も興味のある学問を学べる

「学びたい学問があるが、仕事が忙しくて大学院に進学する時間がない」「金銭的理由から、大学院への進学が難しい」という方も、科目等履修生制度を利用することで、1科目から興味のある学問を学べるのがメリットです。

科目等履修生制度なら単位を取得したい科目のみ履修できます。また、費用も比較的安い傾向にあるのが魅力です。

通信制 1単位約1万円〜
通学制 国立 1単位14,800円
私立 1単位約3万円〜

このように、時間的・経済的理由で大学院への進学が難しい方も、科目等履修生制度を活用することで、大学院の授業を履修できます。

資格を取得できる

大学院で目指せる資格の中には、特定の科目の履修が条件となっているものも少なくありません。科目等履修生制度を活用することで、大学院に入学することなく、資格取得にチャレンジできます。

科目等履修生制度を活用して取得を目指せる資格の例は、以下の通りです。

  • 教員免許
  • 日本語教師(日本語教員養成課程修了)
  • 学校図書館司書教諭
  • 学芸員
  • 図書館司書
  • 保育士
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 認定心理士
  • 産業カウンセラー

大学院進学後の姿を具体的に想像できる

将来的に大学院への進学を検討している方は、科目等履修生制度を利用して大学院の授業を履修することで、大学院進学後の姿を具体的に想像できるのもポイントです。

大学院での学びは、学部とは大きく異なります。進学前に科目等履修生制度を利用することによって、「入学後も無理なく学べるか」「仕事と両立しながら通えそうか」「大学院の雰囲気や講義の進め方は自分に合っているか」などを実際に体感できます。希望する大学院が自分に合っているか、確かめてから進学を検討できることは、大きなメリットと言えるでしょう。

さらに、​​大学院に入学した後に、科目等履修生として修得した単位を修了に必要な単位として参入できる場合もあります。

科目等履修生制度の利用が適している方

科目等履修生制度は、以下のような方に適している制度です。

  • 教職を目指す方や教職に就いている方
  • 学芸員や図書館司書などの資格を取得したい方
  • 大学院で学びを深めたい社会人(リカレント教育、リスキリング)

教職を目指す方や教職に就いている方

教職に就くためには、教員免許状を取得しなければなりません。教員免許状を取得するには、取得したい免許状に対応した教職課程のある大学や短期大学などに入学し、法令で定められた科目や単位を修得することが必要です。

学部の卒業生や社会人が教職を目指す場合、教職課程の科目等履修生になることで、教員免許状の取得に必要な単位を取得できます。

また、すでに教職に就いており、持っている教員免許状を上位の免許状にしたい方や、ほかの教科の教員免許状を取得したい方などにも、科目等履修生制度の利用が適しています。

学芸員や図書館司書などの資格を取得したい方

学芸員や図書館司書、学校図書館司書教諭の資格を取得したい方にも、科目等履修生制度の利用がおすすめです。

例えば、司書の資格を取得する方法は、以下の3つのうちいずれかです。

  1. 大学(短大を含む)又は高等専門学校卒業生が司書講習を修了し資格を得る
  2. 大学(短大を含む)で司書資格取得に必要な科目を履修し卒業を待って資格を得る(通信制・夜間・科目等履修を含む)
  3. 3年以上司書補としての勤務経験者が司書講習を修了し資格を得る

参考:文部科学省「司書について」

科目等履修生制度を利用することで、大学卒業後であっても、2.の方法で司書の資格を取得できます。

前述の通り、科目等履修生制度を活用して取得できる資格は、ほかにも複数存在します。科目等履修生制度は、社会人になって新たな目標ができた方の挑戦を後押しする制度と言えるでしょう。

大学院で学びを深めたい社会人

興味のある学問の学びを深めたいが、大学院に入学するのは時間や経済的な事情で難しい、という方にも、科目等履修生制度が適しています。

最近では、仕事と並行しながら新たなスキルを身につける「リスキリング」や、一度仕事から離れてスキルを身につける「リカレント」が注目されています。仕事を離れるのは難しいものの、興味のある学問について大学院で学びを深めたいという方には、大学院に入学しなくても、高度で専門的な大学院の教育を受けられる科目等履修生制度の活用がおすすめです。

中央大学大学院における科目等履修生制度

最後に、中央大学大学院における科目等履修生制度について、以下の3つの点を紹介します。

  • 科目等履修生制度を実施している研究科と取得できる単位
  • 科目等履修生制度の出願資格
  • 科目等履修生制度の審査料・科目等履修費

参考:中央大学大学院 大学院入試「科目等履修生募集」
参考:中央大学大学院 理工学研究科「科目等履修生」

科目等履修生制度を実施している研究科と履修できる科目

2023年度、中央大学大学院では、博士前期課程における前期開講科目、後期開講科目および通年開講科目について、科目等履修生制度を実施しています。いずれも若干名の募集です。

科目等履修生制度を実施している研究科と、履修できる科目は以下の通りです。

研究科 履修できる科目
法学研究科 研究特論、研究倫理・研究方法論、リサーチ・リテラシーを除く科目

例:憲法特講、行政法特講、国際法特講、民法特講、民事訴訟法特講、商法特講、労働法特講、刑法特講、刑事政策特講、国際私法、知的財産法、政治学特講、国際政治学特講、行政学特講など

経済学研究科 リサーチ・リテラシーおよび演習科目を除く科目

例:マクロ経済学、ミクロ経済学、計量経済学、統計分析論、社会政策論、社会保障論、公共経済学、経済政策、財政学、環境経済学など

商学研究科 演習Ⅰ・Ⅱを除く科目

例:経営学原理、マーケティング研究、経営組織研究、会計学原理、財務会計論、管理会計論、マーケティング論、消費者行動論、流通論、国際金融論、金融システム論、証券論など

文学研究科 臨床心理学コースの科目を除く科目

例:国語学研究、英文学研究、ドイツ文学演習、フランス近代文学演習、中国現代文学演習、日本近代史演習、中国近代史特講、西洋古代史演習、西洋現代哲学研究、社会学理論特講、メディア・コミュニケーション論特講、教育哲学特講、心理学基礎理論など

総合政策研究科 リサーチ・リテラシー、学術研究Ⅰ~Ⅳおよび演習(総合政策セミナーⅠ・Ⅱ)を除く科目

例:政策法論、市場と規制の政策分析、経営組織論、国際経営論、NPO・NGO論、開発におけるスポーツ、ジェンダー・セクシュアリティ論、東南アジアの社会と文化、アジア開発経済論など

理工学研究科 副専攻科目を除く科目

例:代数学特別講義、幾何学特別講義、物理学特別講義、都市人間環境特別講義、デジタル生産工学特論、半導体物性工学特論、構造化学特論、データサイエンス基礎数学、アルゴリズム工学特論、細胞機能制御論など

履修期間は6ヶ月または1年であり、履修できる単位数は、文系研究科が年間で15単位以内、理工学研究科が10単位以内です。

*履修できる科目は変わることがあります。最新の情報を確認してください。

科目等履修生制度の出願資格

科目等履修生制度の出願資格は、以下のとおりです。

  • 大学卒業者(学士の学位を有している者)
  • 外国籍者については、原則として、出願時において履修希望期間中の本邦在留が認められている者

科目等履修生制度の審査方法

法学・経済学・商学・文学・総合政策研究科の審査方法は、原則書類審査です。ただし、別途口述試験を実施する場合もあります。

理工学研究科については、書類審査と口述試験を行います。

科目等履修生制度の審査料・科目等履修費

2023年度の審査料は、11,000円です。なお、前年度の科目等履修生については、審査は行うものの審査料は不要です。複数の研究科に出願する場合、審査料は1研究科分となります。

また、2023年度の科目等履修費は以下の通りです。

  • 入学手続料:10,000円 (ただし、前年度の科目等履修生は免除)
  • 科目履修料1単位につき 31,000円 

2単位科目であれば62,000円、4単位科目であれば124,000円となります。

まとめ:科目等履修生制度を利用して大学院で学びを深めよう

科目等履修生制度は、大学や大学院に入学することなく、特定の科目を履修して単位認定を受けられる制度のことです。科目等履修生制度を利用することで、興味のある学問について大学院で学びを深められるほか、教員免許や学芸員などの資格取得にも挑戦できます。また、修得した単位が、大学院入学後、修了に必要な単位として認められることもあるため、将来的に大学院への進学を検討している方にもメリットの多い制度です。

大学院への進学は難しいものの、専門的に学びたい学問がある方、ビジネスに役立つ知識やスキルを習得したい方、資格取得を目指している方などは、科目等履修生制度を積極的に活用してみてはいかがでしょうか。

中央大学大学院では、科目等履修生制度を実施しています。興味のある方は、以下をご覧ください。

科目等履修生募集