進路・資格

大学院卒(修了)の給料(給与)はいくら?初任給と生涯賃金を学部卒と比較

大学卒業後、進学か就職かを選ぶ基準の一つに、就職後の給料(給与)があるのではないでしょうか。大学卒と大学院卒(修了)とでは給与に差があるのか、気にする人は少なくないでしょう。

今回は、大学院修了と大学卒の初任給と生涯賃金に違いがあることを説明します。そのうえで、大学卒業後の進路について、就職する場合と大学院へ進学する場合のメリットを説明します。

大学院卒(修了)と大学卒の給料の違い

大学院卒(修了)と大学卒とでは初任給に違いがあります。また、生涯賃金にも違いがあります。それぞれどのくらい違うのか、解説します。

大学院卒(修了)と大学卒の初任給

令和4年賃金構造基本統計調査(新規学卒者)」によると大学卒と大学院修了の初任給は以下の通りです。

大学 大学院
男女平均 228,500円 267,900円
229,700円 271,900円
227,200円 256,900円

令和3年度の同調査」によると、男性の平均初任給は大学卒で226,700円、大学院修了で254,100円、女性の平均初任給は大学卒で223,900円、大学院卒で250,900円です。いずれの年度も男女ともに大学院修了者の方が高収入であることがわかります。

大学院卒(修了)と大学卒の生涯賃金

2014(平成26)年に内閣府経済社会総合研究所が発表した「大学院卒の賃金プレミアム」では、大学院修了と大学卒の生涯賃金推計値が勤続年数や居住地を使って統計的に推計されています。以下が推計値です。

大学 大学院
男女計平均 285,872,101円 336,212,645円
291,630,000円 340,090,000円
266,850,000円 310,190,000円

(大学卒男:64,484人、大学卒女19,519人、大学院卒男5,396人、大学院卒女804人)

大学院修了と大学卒とでは、生涯賃金の差は約5,034万円の差があります。

大学院では特定の分野を深く学び、研究するため、専門性の高い知識や技能、経験が身につきます。大学院修了後は、実社会において特定分野に精通した専門性の高いスキルを持つ人材として活躍することができるため、学部卒に比べて初任給や生涯賃金は高い傾向にあります。

文部科学省の「大学院の現状を示す 基本的なデータ」によると、大学院への進学者が特に多い分野は理学分野や工学分野です。理学・工学の知識と経験を実社会に活かせる社会的環境があり、そこで活躍している人材が多いことが、大学院修了者全体の生涯賃金を高める一因になっていると考えられます。

大学卒で就職するメリット

大学を卒業してすぐに就職するメリットを3つ解説します。

  • 早期に社会人経験を積める
  • 幅広い業種に触れられる

早期に社会人経験を積める

大学卒業後に直ちに就職するメリットの一つは、社会人としての経験を早くから積むことができることです。

社会で必要とされるスキルの中には、実践を通すことで身につくものもあります。コミュニケーション能力やプロジェクト管理能力などのスキルは実務を通じて習得できる最たるものでしょう。加えて、学部で学んだ知識をすぐに社会で活かせるのも大きなメリットです。

また、早期にキャリアをスタートさせることで、キャリアアップの機会もより早い段階から得られます。企業によっては、新プロジェクトの立ち上げや部下のマネジメントなど、貴重な経験をする機会を得られるでしょう。

幅広い業種に触れられる

学部の在学中に就職活動をすることで、大学院生よりも学業以外に充てられる時間も多いことから、幅広い業種に触れる機会を得られることも学部で就職するメリットと言えるでしょう。学部学生は大学院生に比べて就職活動に充てられる時間が確保しやすく、例えば長期インターンシップをはじめとする各種インターンシップや説明会に参加しやすいといえます。

特定の職種、例えば商品開発などに携わる場合、触れる業界や職種の幅が限られる可能性があります。一方で、就職活動でさまざまな業界を探究し、多くの人と関わると、自分に合ったキャリアパスを見つけるのにつながります。多様な業界や職種に触れることは、自分の興味や適性を理解し、最終的にはより自分に合ったキャリアを選択する手助けとなるでしょう。

また、就職後は業界の著名人や経営者などビジネスサイドで成果を上げた人々と関わる機会もあるでしょう。そういった人々との協働を通して、社会人としてのロールモデルを早い段階で見つけられると、キャリアを築く上で大きな強みとなります。

大学院卒(修了)で就職するメリット

大学院卒(修了)で就職するメリットを3つ挙げて解説します。

  • 高度な専門性が求められる職につける
  • 大学教員への道が開ける
  • 給料の上昇につながる

高度な専門性が求められる職につける

大学院を修了して就職するメリットの一つは、高度な専門性が求められる職種に就くことができる点にあります。

大学院での研究活動を通じて、高度な専門知識や研究能力を身につけることができます。

例えば、工学、理学、医療、法律などの分野では、特にこれらのスキルを大きく活かせる可能性が高いです。研究開発職は専門的な知識を活用して新しい製品を開発したり、業界のイノベーションに携われたりします。

法律に関する高度で専門的な知識が必要となる法曹(弁護士、裁判官、検事)になる場合には、司法試験の合格が必要になり、司法試験の受験資格を得るためには法科大学院の修了が必要となります。また法科大学院ではなく学術・研究型大学院の法学研究科で学びを深めることでも、企業の法務部などで専門知識を生かした活躍も期待されます。

また、人文科学においても、中学・高等学校教員(特に私立大学)をはじめ、学芸員や心理職などの専門職では、専門性の高い知識やスキルを有する大学院修了者が求められます。

加えて、研究分野にとらわれない部分では、大学院における研究活動を通して、膨大な資料やデータをもとに研究の計画を立てたり、自らの成果をプレゼンテーションしたりする力などが身につきます。これらのスキルを活かすことで、あらゆる業種で活躍することができるでしょう。

大学教員への道が開ける

大学教員になるには、近年では多くの場合、修士号のみならず博士号の取得を求められることが多いです。博士論文の執筆の他にも、一定程度の研究業績を積んでいくことも求められます。

大学教員は学生を指導するだけでなく、自らの研究を進め研究成果を還元し、学術界や社会全体に貢献する役割も担います。そのため、専門分野の深い知識と高度な研究スキルが求められます。

教育面では、学術界に貢献する後進の人材や社会で広く活躍する高度職業人等を育成し、研究面では専門分野の知識を活かし、その分野の発展に携わったり、様々な研究者と交流を深めたりすることが求められます。

加えて大学教員は、学術界のみならず社会全体への貢献も期待されています。講演やコンサルテーション、政策提言などを通じて、自らの専門知識や研究成果を社会に還元し、社会的課題の解決に貢献することもできます。

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大学院卒(修了)のほうが給料(給与)が高い傾向にある

先述したように大学卒より大学院修了で就職するほうが、給料(給与)が高い傾向にあります。

大学院での学習・研究活動を通じて得た高度な専門知識やスキルを持つ人材は、企業や各種の機関にとって価値が高いです。近年では技術の進化や市場のグローバル化が著しく、より専門性の高い知識や技術が求められています。大学院で習得した専門性が、企業や機関における競争力の源泉となり得るでしょう。

加えて、大学院での学びは、複雑な問題を解決するための批判的思考能力や、新しいアイデアを生み出す創造力を養うことにもつながります。これらの能力は、企業が新しい製品やサービスを開発し、市場で成功を収めるために不可欠です。

大学院修了者は企業にとって貴重な人材として認識され、その高い能力と企業への貢献度に応じた給与が支払われます。そのため、大学院修了者のほうが給料(給与)が高い傾向にあると言えるでしょう。

まとめ:給料(給与)だけではなくキャリアを考えて進路を決めよう

大学院卒(修了)は大学卒と比べて初任給・生涯賃金共に高い傾向にあります。また、自分が興味関心をもって大学院で習得した高度な専門性を生かした職に就ける可能性が高くなります。

一方で、大学卒には社会に求められるスキルを早期に身につけられたり、幅広い業界に触れたりできるなど、大学院進学にはないメリットもあります。

大学院へ進学するか、大卒で就職するか、検討する際には、給料(給与)だけで決めず、自身のライフプランと将来のキャリア形成と照らし合わせ、十分に検討した上で進路を選択しましょう。