税理士を目指すために大学院に進学する人も増えています。その理由には、大学院の修士(博士前期)課程を修了することにより、「税理士試験科目免除制度」の対象になる可能性があることが挙げられます。しかし、すべての大学院で科目免除を受けられるわけではないため、事前に調べておくことが重要です。
今回は、税理士試験の科目免除を受けられる大学を紹介します。科目免除制度の概要や、進学をおすすめする研究科についても解説するため、参考にしてください。
税理士になるために大学院に進学する必要はあるか
税理士になるために税理士試験を受ける必要がありますが、税理士試験を受けるには下記の要件のいずれかを満たすことが必要です。
・大学又は短大の卒業者あるいは一定の専修学校の専門課程を修了した者で、法律学又は経済学を1科目以上履修した者
・大学3年次以上で、法律学又は経済学を1科目以上含む62単位以上を取得した者
・司法試験、あるいは平成18年度以降の公認会計士試験の短答式試験の合格者
・日商簿記検定1級、あるいは昭和58年度以降の全経簿記検定上級合格者
大学(学部)や短大を卒業、もしくは専門学校の専門課程を修了し、必要な科目の履修や資格の取得が完了していれば税理士試験を受験できます。税理士試験合格後に税務官公署での事務や、その他の官公署や企業などでの税務事務など、実務経験を2年間積めば税理士になれます。
そのため、税理士になるために必ずしも大学院に行く必要はありません。ただし、税理士試験には科目免除制度があり、税理士になるために大学院に行くメリットは大きいといえます。
なお、大学院への進学を検討する場合、費用についてどうしても気になるものでしょう。以下の記事で大学院進学にかかる学費について詳しく解説しています。費用が気になる方は、ぜひ参考にしてください。
大学院の税理士試験科目免除制度とは
大学院の税理士試験の科目免除制度とは、在学中に行った研究をもとに、税理士試験の受験科目を一部免除する制度のことです。
受験科目の一部免除制度は、「税法」科目の免除と「会計」科目の免除の2種類があります。
税法に関する研究が免除対象となり、執筆した論文が国税審議会から認定された場合には、税法の試験2科目の受験が免除されます。会計学に関する研究が免除対象となり、執筆した論文が国税審議会から認定された場合には、会計学の試験1科目の受験が免除されます。
いずれの場合においても、その分野に関する研究を行い修士論文を執筆しているからといって、必ず免除対象として認定されるわけではありません。執筆した論文が、それに該当する論文として国税審議会から認定される必要があります。
税理士試験の科目免除の条件
平成14年4月1日以後に大学院の博士前期課程・修士課程に進学した場合、以下の条件を満たせば、試験免除が認められます。
・会計学に属する科目の認定を受けるためには、大学院において簿記論や財務諸表論などの会計学に属する科目等の研究により学位を授与される
・税法に属する科目の認定を受けるためには、大学院において所得税法や法人税法などの税法に属する科目等の研究により学位を授与される
・申請する税法に属する科目又は会計学に属する科目の試験科目のうち、1科目の試験で基準(満点の60%)以上の成績を得ていること
引用:国税庁|修士の学位等による試験科目免除(研究の認定を含む。以下同じ。)について〔税理士法改正後)
なお、申請に必要な科目の合格時期は、認定の申請前であればいつでも問題ありません。
税理士試験の科目免除を受けられる大学院の研究科
大学院にはさまざまな研究科がありますが、税理士試験の科目免除を受けるにはどの研究科に進めばいいのでしょうか。ここでは、科目免除を受けられる研究科について説明します。
科目免除を受けられる研究科
税理士になるには、商学研究科や法学研究科、経済学研究科などに進む必要があります。ただし、税理士試験科目免除対象の授業を受ける必要があるため、入学以前に対象の授業があるか確認しておきましょう。免除対象となる授業は以下の通りです。
・会計系試験一部免除対象…簿記論、財務諸表論
・税法試験一部免除対象…所得税法、法人税法、相続税法、消費税法、酒税法、国税徴収法、住民税、事業税又は固定資産税のいずれか1科目
引用:国税庁|修士の学位等による試験科目免除(研究の認定を含む。以下同じ。)について〔税理士法改正後〕
中央大学大学院で税理士資格取得につながる研究科
中央大学大学院では、「税法」科目免除を目指す方に向けて、経済学研究科と商学研究科に税理士資格取得免除対象の授業が用意されています。税法に関する修士論文を執筆し、国税庁から認定されることで、税法科目の免除対象になります。
税法に属する科目を履修し、修士論文執筆に必要な知識を蓄えておくのが望ましいです。経済学研究科の場合、入学時に税理士コースを選択すれば、租税法や財政学についても学べるため、より専門的な知識をつけることができます。商学研究科で税理士を目指す場合は、研究コースに所属し、専門分野に精通した論文(修士論文)の作成を目指します。
税理士を目指す人が大学院に進むメリット
税理士の科目免除を受けられることは、大学院進学の大きなメリットです。しかし、進学のメリットはそれだけではありません。
ここでは、税理士を目指す人が大学院に進学するメリットについて説明します。
- 税理士試験科目免除制度を利用できる
- 税法と会計学の学術的な知識が身につく
- 専門性の高い文章の執筆・発表の力が身につく
- 税理士を目指す仲間を作れる
1.税理士試験科目免除制度を利用できる
大学院に行くと、税理士試験科目免除制度を利用できます。この制度を利用すると税理士試験の科目の受験が一部免除されるため、税理士試験の負担が大きく減ります。税理士を目指す人が大学院に進む大きなメリットと言えるでしょう。
税理士試験は、ほとんどの科目の合格率が20%を切る難関試験であるため、税理士試験科目免除制度を利用するメリットは非常に大きいでしょう。
ただし、先述のとおり、税理士試験科目免除の実績がある大学院を修了したからといって、必ずしも科目免除につながるとは限りません。国税庁の審議で認められる必要がありますので、科目免除を目指す場合には、関連分野に関する専門知識を修得し、一定のレベルを満たす修士論文を執筆することが求められます。入学後は、目標に向けて計画的に研究活動を行うとよいでしょう。
2.税法と会計学の学術的な知識が身につく
大学院では、税理士試験で問われる税法と会計学について、体系的に学びます。
例えば、税務判例研究や税法、会計学の歴史をはじめ、授業や研究会でのディスカッションを通して、教員の意見を聞けます。税理士試験では触れないような内容も勉強できるため、税法と会計学について深く理解するのに役立ちます。
3.専門性の高い文章の執筆・発表の力が身につく
論文の執筆や授業、研究会を通して、文章力やプレゼン力を鍛えられることも大学院に行くメリットです。専門知識は試験勉強でも身につけることができますが、大学院に進学することで、専門的な内容を他者に向けて伝える機会を多く得ることができます。
税理士は顧客とのやり取りの中で、専門用語を分かりやすく噛み砕き、書類やオンラインメディアで知識を提供することや、直接対面して説明することが求められます。税理士試験の勉強だけではこれらを向上させる機会は少ないため、大学院での経験は税理士の職務を遂行するにあたって大きく役立つでしょう。
4.税理士を目指す仲間を作れる
大学院には、同じように税理士を目指す人達がたくさんいます。税理士試験の情報共有や相談はもちろん、将来仕事をする上でもお互いに助け合えるような、大切な関係になる可能性があります。
協力し共に高め合えるような人間関係を作ることができる機会はとても貴重です。
まとめ:大学院進学には科目免除など多くのメリットがある
税理士になるために必ずしも大学院に進む必要はありませんが、科目免除制度を使うことにより、税理士試験合格に近づくことができます。また、税法や会計学について広い知識も身につき、職務遂行に必要な文章作成能力やプレゼンテーション能力も養える、貴重な機会になるでしょう。税理士を目指す場合に、大学院に進むのも1つの選択肢だと言えます。
すべての大学院で、税理士の科目免除を受けられるわけではありません。事前に募集要項やカリキュラムをしっかり確認し、科目免除を受けられるのか確認しておきましょう。
なお、中央大学大学院の経済学研究科と商学研究科でも、税理士の科目免除の実績があります。中央大学大学院に興味がある方は、以下よりお問い合わせください。