研究計画書は、研究テーマや目的、内容だけを記載するものではありません。自身の研究の信頼性と妥当性を示すために、参考文献も記載する必要があります。しかし、どのように記載すればよいかがわからない方もいるでしょう。
そこで本記事では、研究計画書における参考文献の記載方法について解説します。関連付けの方法、研究計画書全体の構成も紹介するため、これから研究計画書を作成する方はぜひ参考にしてください。
研究計画書の参考文献とは
研究計画書における参考文献は、自身の研究の土台となる先行研究や理論的背景を示す重要な要素です。研究計画書の最後に参考にした文献を一覧で記載します。
参考文献は単なる文献リストではなく、自身の研究が既存の学術的知見に基づいていることを示す重要なものです。研究の信頼性と妥当性を高めるために、参考にした文献は漏れなく記載します。
参考文献として記載すべき主な項目には、以下のものが挙げられます。
- 著者・編集者名
- 図書や論文のタイトル
- 図書の版
- 出版社名と出版年
- 該当ページの番号
参考文献を明記することにより、自身の研究の新規性や独自性を示せます。また、先行研究との関連性も明確になります。これにより、研究計画の学術的な位置づけが明確になり、研究の意義を効果的に伝えられるのです。
研究計画書の書き方についてはこちらの記事で紹介しています。
大学院進学に必要な研究計画書に記載すべき項目とポイントを解説
研究計画書に参考文献を記載しなければどうなる?
研究計画書に参考文献を記載しないことは、他者の研究成果や知的財産を無断で使用する「盗用」とみなされる重大な問題です。たとえ意図的でなくても、研究者としての倫理に反する深刻な不正行為として扱われ、信用を大きく失墜させてしまいます。
そのため、他の研究成果を参考にした際には、必ず参考文献を記載しなければなりません。これは研究者としての基本的な責務です。作成する文章の種類や長短に関わらず、参照した資料がある場合には、必ず参考文献を記載しましょう。
研究計画書の参考文献に関する記載ルール
研究計画書における参考文献の書き方は、学術分野によって多様なスタイルが存在しており、統一的なルールは確立されていません。例えば、文系分野で採用されることの多い「APAスタイル」という書式では、図書や雑誌のタイトルに『』を付けます。一方、理系分野で採用されることの多い「SIST 02」では、書籍タイトルに『』を付けません。
ただし、研究計画書内では、一貫した書式を採用することが重要です。また、参考文献として示すべき範囲は、従来の紙媒体の図書や雑誌に限定されません。インターネット上で公開されている電子ジャーナルやデジタル化された文献なども、出典を明示する必要があります。インターネット上で公開されている情報を参照する場合は、参照元のURLと最終閲覧日を記載しましょう。
研究計画書における参考文献の書き方
学術分野によって参考文献の記載方法は異なりますが、それぞれの分野で広く使われている代表的な書式があります。ここでは、社会科学系、人文学系、理工学系(科学技術系)に分けて代表的な書式を紹介します。
社会科学系に多いのはAPAスタイル
APAスタイルは、心理学をはじめとする社会科学分野で広く使用される書式です。書籍名には『』を、論文名には「」を付けます。
基本的な形式 | |
単行本 | 著者. (出版年). 『書名』. 出版社名, シリーズ名, 総ページ数. |
論文 | 著者. (出版年). 「論文名」. 『雑誌名』. 巻数(号数). 掲載ページ. DOI |
インターネットに掲載されている論文 | 著者名(更新日) .「ページ名」 .サイト名 .参照元URL , (最終閲覧日) . |
人文学系に多いのはMLA
MLAという書式は、人文学系の研究でよく使われます。特に文学・言語学分野で採用されています。著者、タイトルから順に記載する書き方で、出版年は後ろに記載する点がAPAスタイルと大きく異なる点です。
基本的な形式 | |
単行本 | 著者. 「書名」. 出版社名. 出版年. 掲載ページ. |
論文 | 著者. 「論文名」. 『雑誌名』. 巻数(号数). 出版年. 掲載ページ. |
インターネットに掲載されている論文 | 著者名.「ページ名」 .サイト名 . 更新日. 参照元URL , (最終閲覧日) . |
理工学系(科学技術系)に多いのはSIST 02
SIST 02という書式は、理工学系のうち、特に科学技術系の研究でよく使われます。『』や「」を使用せず、簡潔な記述を重視しています。
基本的な形式 | |
単行本 | 著者名. 書名. 出版社, 出版年, 総ページ数, シリーズ名. |
論文 | 著者名. 論文名. 雑誌名. 出版年, 巻数, 号数, 掲載ページ. |
インターネットに掲載されている論文 | 著者名 . “ページ名” . サイト名. 更新日 参照元URL, (最終閲覧日) . |
研究計画書における参考文献の関連付けの方法
研究計画書における参考文献の引用方式には、主にハーバード方式とバンクーバー方式の2つがあります。それぞれ学術分野によって使い分けられています。
ハーバード方式は、人文学分野の研究で広く採用されています。本文中に「(著者名, 出版年)」の形式で引用を記載し、研究計画書の最後に文献リストとして著者名の五十音順で並べるというものです。
一方、バンクーバー方式は、主に自然科学分野で使用される引用方式です。本文中に引用が登場した順番に、、という連番を振り、研究計画書の最後に番号順に文献を記載します。
研究計画書には参考文献を何冊記載すればよい?
研究計画書に記載すべき参考文献の数に明確な規定はありません。しかし、研究の信頼性と妥当性を示すために、ある程度の文献を引用することが重要です。そのため、少なくとも2〜3冊程度は記載するようにしましょう。
なお、単に数を増やすことが重要ではないため、自身の研究に関連するものを選ぶ必要があります。参考文献の質と、自身の研究との関連性を重視し、適切な数の参考文献を記載しましょう。
参考文献以外に研究計画書に記載する項目
研究計画書には以下の項目を記載することが求められます。
- 研究テーマ
- 先行研究
- 研究の目的
- 研究の内容
- 研究の方法
- 期待できる効果
- 参考文献
以下では、参考文献以外の各項目について詳しく説明していきます。
研究テーマ
研究テーマは研究計画書の顔となる部分で、研究内容を端的に表現した題目です。
研究テーマに字数の決まりはありませんが、長すぎず、「〇〇における△△の研究」のように研究対象と研究内容を明確に示します。読み手が一目で研究内容を理解できるように、簡潔な表現を心がけましょう。
研究内容が一言では説明しづらい場合は、サブタイトル(副題)を付けることも有効です。例えば「〇〇における△△の研究〜□□について〜」のように、メインタイトルで大きな枠組みを示し、サブタイトルで具体的な研究内容を説明するという手法もあります。
先行研究
研究テーマが決まったら、これまでに行われてきた研究(先行研究)に関する文献を読み込み、整理しましょう。自身の研究と関連する過去の研究において、どのような研究が行われ、成果として何が明らかになったか、また何がまだ明らかになっていないかを理解することで、自身の研究計画の新規性や独自性を示すことが可能となります。
参照した過去の研究は、参考文献に記せばよいというわけではありません。先行研究として、具体的な事例として挙げたり、引用したりすることで、これまでの研究の延長線上に自身の研究を位置づけることが求められます。
研究の目的
研究目的では、なぜその研究を行うのかという意図を明確に説明します。社会的な背景や既存研究の課題を踏まえつつ、自身の研究によって何を明らかにしたいのかを具体的に記述しましょう。
記述する際は、「〜について明らかにする」「〜の効果を検証する」など、研究によって達成したい目標を明確に示すことが重要です。研究の意義や新規性についても触れ、なぜその研究が必要とされるのかを論理的に説明することにより、研究の妥当性を示せます。
その際、主観的な表現は避け、できるだけ客観的なデータや先行研究を引用しながら説明します。
研究の内容
研究の内容では、具体的に何をどのように研究するのかを詳細に説明します。研究対象の範囲や分析の視点や手法、使用するデータや理論など、研究の具体的な枠組みを示します。この項目は研究計画書の中核となる部分であり、研究の実現可能性を示す重要な要素です。
記述する際は、研究の独自性や新規性が明確になるように心がけ、先行研究との違いや、自身の研究がもたらす新たな知見について具体的に説明しましょう。研究の進め方が伝わるように、曖昧な表現は避け、段階的に説明を行う必要があります。
研究の方法
研究の方法では、具体的な研究の進め方や調査方法、分析手法について詳しく説明します。データの収集方法や、分析ツール、研究のスケジュールなど、研究を遂行するための具体的な手順を記載しましょう。
特に重要なのは、その方法が研究目的を達成するために適切であることを示すことです。なぜその方法を選択したのか、その方法によってどのような結果が得られると考えられるのかなど、研究方法の妥当性を論理的に説明します。
また、研究に必要な設備や環境が整っているかについても言及すると、研究の実現可能性をより具体的に示すことにつながります。人を対象とした調査を実施する場合、最終的には、調査対象者を見つけられるか(調査の許可を得られそうか)という点が実現可能性に大きく関わってきます。加えて研究を開始する前には、研究倫理審査の手続きを行う予定であることにも言及する必要があるでしょう。
期待できる効果
期待できる効果では、自身の研究によってどのような成果が得られると予想されるのか、その効果や意義について具体的に説明します。学術的な貢献だけでなく、社会的な影響や実務への応用可能性についても言及すると、研究の価値がより伝わります。
ただし、あくまでも予想される効果であるため、現実的な範囲で記述する必要があります。根拠のない大きな効果を主張するのではなく、先行研究などを踏まえたうえで、説得力のある予測を示しましょう。
まとめ:研究計画書の参考文献は漏れなく記載しよう
研究計画書における参考文献は、研究の土台となる先行研究を示すとともに、自身の研究の信頼性と妥当性を示すためにも欠かせない要素です。
意図せずとも記載が漏れた場合には、他者の研究成果や知的財産を無断で使用したとして、信用を損ねてしまいます。そのため、他の研究成果を参考にした際には、必ず参考文献を記載しましょう。
学術分野によって参考文献の記載方法は異なりますが、一つの文書内で一貫した書式で漏れなく記載することが重要です。また、研究計画書の他の項目についても、単に形式を整えるだけでなく、読み手に研究の意義が十分に伝わるように、具体的でわかりやすい記述を心がけましょう。
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