進路・資格

臨床心理士になるには大学院進学が必須|おすすめの大学院の種類・選び方まで解説

臨床心理士になるためには、原則として大学院進学が必須です。特に「臨床心理士指定大学院(1種・2種)」または「臨床心理士専門職大学院」を修了しなければ、資格試験の受験資格を得られません。

一方で、「どの大学院に進学すれば資格を取得できるのか」「大学院ではどんな勉強をするのか」といった疑問を持つ方も多いでしょう。

本記事では、臨床心理士になるために必要な大学院の種類、大学院で学ぶ内容、そして自分に合った大学院を選ぶポイントまで、初めて進路を検討する方にもわかりやすく解説します。

臨床心理士になるには大学院進学が必須

臨床心理士になるためには、原則として大学院の修了が必須です。このため、臨床心理士指定大学院(1種・2種)か、専門職大学院のいずれかを修了する必要があります。

臨床心理士資格認定協会では、受験資格として「臨床心理士指定大学院1種・2種」もしくは「臨床心理士専門職大学院」を修了していることを条件としています。大学院を修了した後は、臨床心理士資格試験に合格することで、臨床心理士として登録されます。

臨床心理士になるために進学する大学院

臨床心理士を目指す場合、進学できる大学院にはいくつかの種類があります。大きく分けると、「臨床心理士指定大学院1種・2種」と「臨床心理士専門職大学院」の3つです。ここでは、それぞれの大学院の特徴について解説します。

臨床心理士資格試験の受験資格に必要な大学院(臨床心理士指定大学院1種・2種)

臨床心理士指定大学院1種・2種は、一般的にイメージされる修士課程(博士前期課程)の大学院にあたります。

臨床心理士指定大学院1種は、修了後すぐに臨床心理資格試験の受験資格を得られる大学院です。一方、2種は修了後、1年以上の心理臨床経験を経てから臨床心理資格試験を受験可能です。

臨床心理士指定大学院第1種に指定される大学院は、以下の条件を満たしています。

  • 大学院の研究科・専攻・課程等の名称に、臨床心理学が明記されていること、又は組織構成上の最終段階での当該指定領域が臨床心理学によって特化されていること。
  • 担当教員に臨床心理士の資格を有する者5名以上、専任教員(教授・准教授・
  • 専任講師)は4名以上(そのうち最低2名は教授)であること。
  • 1年以上の活動実績を有する「附属臨床心理相談室」、及び「臨床心理実習」を実施可能な設備があること

臨床心理士指定大学院第1種では、必修の臨床心理学の演習や実習に加えて、発達心理学や社会心理学、精神医学などを学ぶことができます。

引用:大学院指定申請に関する参考資料/公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会

臨床心理士指定大学院2種で学べる内容は、概ね臨床心理指定大学院1種と同様です。しかし2種の場合、1種の条件のうち、臨床心理士の資格を持つ専任教授が5名以上いること、及び附属臨床心理相談室を有していることの2つを、満たしていない可能性があります。

参考:大学院指定申請に関する参考資料/公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会

臨床心理士専門職大学院

臨床心理士専門職大学院は、臨床心理士の養成を目的とした大学院です。指定大学院1種・2種に比べて、実践活動に重きをおいた研究過程となっています。また、指定大学院の26単位と比べて多めの44単位を、臨床心理士養成に特化した科目として受ける必要があります。臨床心理士指定大学院第1種・第2種と比べて、専任教員スタッフの充実も図られています。

加えて、臨床心理指定大学院1種と同様に、修了後すぐに臨床心理資格試験の受験資格を得られる他、一般的な大学院に比べて実習が多いため、一次試験に実施される小論文は免除されます。

参考:臨床心理士養成大学院認証事業/公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会

例外として大学院進学が不要なケース

ただし例外もあり、医師免許取得者かつ心理臨床経験2年以上を有する場合は、指定大学院を修了していなくても受験が可能です。そのため、医学部医学科を卒業している方は、指定の大学院に行く必要がないケースもあります。

〈主な受験資格〉

●指定大学院(1種・2種)を修了し、所定の条件を充足している者

●臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了した者

●諸外国で指定大学院と同等以上の教育歴があり、修了後の日本国内における心理臨床経験2年以上を有する者

●医師免許取得者で、取得後、心理臨床経験2年以上を有する者  など

引用:受験資格/公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会

公認心理師の受験資格と臨床心理士との違い

臨床心理士とは別に、公認心理師という国家資格があります。公認心理師は、医療・福祉・教育・司法・産業などの分野で、心理学の専門知識をもとに支援を行う専門職です。臨床心理士が民間資格であるのに対し、公認心理師は法律に基づく国家資格であり、この点が大きな違いです。

公認心理師の受験資格

公認心理師には、大学院で指定科目を履修するルートと、一定期間の実務経験を積むルートの2つがあります。制度上はいずれの方法でも受験資格を得られますが、心理学を基礎から実践まで体系的に学べるため、多くの人が大学院進学を選び、最も一般的な進路となっています。

公認心理師試験を受験するためには、学部で臨床心理学・統計学などの指定科目を履修した上で、大学院での指定科目の履修または認定施設での実務経験が求められます。実務経験ルートも存在しますが、現場では高度な知識が必要となるため、大学院で研究や実習を通して専門性を深めておく方が安心です。

また、大学院では専門分野に精通した教員からの指導を受けられ、同じ目標を持つ学生とのつながりを持てる点も大きなメリットです。

参考:公認心理師試験について/一般財団法人 日本心理研修センター
参考:公認心理師法第7条第2号に規定する認定施設一覧の最新情報を掲載しています

臨床心理士になるための大学院の選び方

臨床心理士を目指して指定大学院への進学を検討する際は、「どこなら受験できるか」だけでなく、「どこで学ぶか」という視点が大切です。大学院ごとに、実習環境や学費、研究体制には大きな違いがあります。

自分の将来像やライフスタイルに合った大学院を選ぶために、次のポイントを意識して比較してみましょう。

実習・研修施設が充実しているところを選ぶ

臨床心理士に求められる知識やスキルは、大学院での授業だけでなく実習を通して身につけていく部分が非常に大きいといえます。そのため、実習や研修の環境がどれだけ整っているかは、大学院選びの重要な判断材料のひとつです。

学内に心理臨床センターが併設されている大学院であれば、実際のケースに継続的に関わりながら、心理面接や心理検査の経験を積めます。また、学外実習では、病院、学校、福祉施設、司法関連機関など、さまざまな現場での実践を体験できるかどうかも確認しておきたいポイントです。

実習の受け入れ先の種類や数、指導体制の手厚さは大学院ごとに異なるため、説明会や公式サイトなどで具体的な実習内容まで確認しておくと安心です。

通いやすい学費のところを選ぶ

大学院は2年間通うことになるため、学費の負担も無視できません。入学金や授業料、実習費などを含めると、修了までに必要な総額は大学院ごとに差があります。

また、奨学金制度や学費減免制度の有無も重要なポイントです。経済的な不安があると、学業や実習に集中しづらくなってしまうこともあります。無理のない範囲で通い続けられる学費の大学院を選びましょう。

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希望する研究テーマの指導を受けられる教員がいるところを選ぶ

大学院は、資格の受験資格を得るための場所であると同時に、研究を行う場所でもあります。自分が関心を持っているテーマについて指導を受けられる教員が在籍しているかどうかは、非常に重要なポイントです。

たとえば、不登校、発達障害、トラウマ、家族支援、認知行動療法など、関心のある分野は人それぞれ異なります。各大学院の教員紹介ページや研究業績を確認し、自分の学びたいテーマと重なる分野を専門とする教員がいるかを調べておきましょう。

臨床心理士を目指して大学院へ進学する場合は、学部での専門分野や将来のキャリアを踏まえ、希望の指導教員に事前相談を行うことを強く推奨しています。

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大学院で学ぶこと|修了までに必要な実習・研究・試験対策

臨床心理士を目指す場合、大学院進学後は、実習や研究、試験対策など、さまざまな学習に取り組むことになります。ここでは、主に取り組むことになる学習内容について解説します。

学内・学外で実施する臨床心理実習の内容

臨床心理士の資格取得には、実際に患者に触れ合う実習科目の履修が必要です。学内外ともに実施され、学内では心理臨床センター、学外では病院や児童養護施設などで行われます。

学内での実習は、心理臨床センターに来訪する患者の心理面接や心理検査を実施する中で、臨床心理士としての実践的な技術を身につけていきます。学外での実習は、医療、保険、教育などさまざまな分野の現場を体験し、各現場に求められる知識やスキルを学習していきます。

参考:公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会|臨床心理士養成のための大学院専門職学位課程評価基準要項

研究テーマの選択と大学院で身につく専門知識

大学院の講義や演習、日々の研究活動は、臨床心理士の資格取得に大きく役立つでしょう。講義では必修として臨床心理学や心理療法の教材や論文を読み込むほか、臨床心理現場の実例なども学べます。

また、大学院によっては研究室も用意しています。教員とコミュニケーションを取り、研究に取り組むことで、臨床心理士や公認心理師に必要な知識がより深まるでしょう。

臨床心理士・公認心理師試験の対策(一次・二次)

臨床心理試験・公認心理師試験に合格するためには、試験勉強をする必要があります。一次試験と二次試験があり、一次試験はマークシート形式の選択問題と小論文が出題され、二次試験では面接を実施します。

一次試験では治療、カウンセリングの方法や、心理系の医学・法律の知識に加え、心理学を通した地域や社会に対するアプローチなど、様々な内容が問われます。臨床心理に関する幅広い知識を身につけておく必要があります。また論文や面接は毎日の研究で論述の習慣をつけておくこと、研究室の教員に面接練習を依頼することが重要でしょう。

臨床心理士になるために大学院へ進学した人の体験談

臨床心理士を目指して大学院へ進学した人の中には、現在、精神科病院で心理職として働いている方もいます。ここでは、その一例として、中央大学大学院へ進学し、現在は精神科病院で心理職として働いている方の体験をご紹介します。

大学院では、授業の課題に取り組みながら臨床実習にも参加し、授業で学んだ内容と実際の現場を行き来しながら理解を深めていったそうです。実習で悩んだことを授業内で相談できたことが、大きな学びにつながったと振り返っています。

また、図書館や研究室の資料が充実しており、心理学の専門文献にすぐアクセスできる環境も、学習を支える大きな要素でした。研究室や学年を越えた院生同士の交流も、視野を広げる良い機会になったそうです。

現在は精神科病院で勤務し、相談者の背景を整理しながら支援にあたっています。大学院で修士論文に取り組む中で身につけた「仮説を立てて検証する」という考え方は、今の臨床現場でも役立っていると感じているとのことです。

このように、大学院での学びはその後の実務にも直結しています。

参考:中央大学大学院(文系)入試広報|公認心理師・臨床心理士を目指す方へ

臨床心理士に関するよくある質問

ここでは、臨床心理士を目指して大学院進学を検討している方から、寄せられることの多い質問をまとめました。進学前の不安や疑問の解消に、ぜひ参考にしてください。

Q. 臨床心理士になるには、臨床心理士指定大学院に進学しなければならない?

原則として、臨床心理士になるためには「臨床心理士指定大学院(1種・2種)」または「臨床心理士専門職大学院」を修了する必要があります。これらの大学院を修了したうえで、臨床心理士資格試験に合格することで、正式に臨床心理士として登録されます。

ただし、医師免許を取得しており、かつ2年以上の心理臨床経験がある場合など、例外的に大学院修了が不要となるケースもあります。

Q. 臨床心理士指定大学院は、どのような基準で選べばよいですか?

大学院選びでは、「実習・研修施設が充実しているか」「無理なく通い続けられる学費かどうか」「希望する研究テーマの指導を受けられる教授がいるか」といった点を重視しましょう。

Q. 臨床心理士指定大学院の入試は、どのような対策をしておくとよいですか? 

多くの大学院では、筆答試験と面接が実施されます。そのため、学部で学んだ心理学の基礎を復習するとともに、志望動機や将来の進路について自分の考えを整理しておくことが大切です。

あわせて、過去問題の確認や、研究計画書の作成準備を進めておくと、入試対策がよりスムーズになります。

また、進学を検討している場合は、早い段階で希望の指導教員への事前相談を行うようにしましょう。

まとめ:臨床心理士になるには大学院進学が必須

臨床心理士になるには、大学院に進学することが必須となります。公認心理師になる上でも、大学院での研究で得た知識や経験は試験で大きく役立つでしょう。

また、大学院で学習や実習を重ねることで、資格試験の合格に近づくだけでなく、将来臨床心理士になったときに役立つ専門的な知識も身につけることができるでしょう。

臨床心理士・公認心理師を志す方は、ぜひ大学院への進学を検討してみましょう。

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