大学院に進学する場合、在学している大学の大学院に進学する内部進学と、別の大学院に進学する外部進学の2つの選択肢が考えられます。大学院の選択は自らの研究活動を左右する重要な要素です。
しかし、内部進学と外部進学のどちらを選択するべきかわからない方もいるでしょう。この記事では内部進学と外部進学のそれぞれのメリットと適した人の特徴を解説します。
大学院に内部進学する4つのメリット
大学院に内部進学をするメリットを4つ解説します。
- 学部時代の研究を続けることができる
- 推薦を受ける(内部進学者用の入試を受験する)ことで入試の一部が免除される
- 慣れ親しんだ環境で研究ができる
- よく知った教員のもとで指導が受けられる
1.学部時代の研究を続けることができる
大学院に内部進学をすると、学部時代に取り組んでいた研究を続けられる可能性が高いです。学部で培った知識や技術、研究成果を活かしながら、慣れ親しんだ環境でより高度な研究に取り組めるでしょう。学部で得た研究の経験や人間関係を生かして、大学院でも円滑に研究活動を進められるのもメリットです。
また、すでに馴染んだ研究分野ならば、研究を深め独自の成果を発表できる可能性も高くなるでしょう。大学院での研究には専門知識が必要となるため、研究内容を変更する際は新たに学修する内容が増えます。学部時代の専門分野を研究することで、培った一定の知識をベースに大学院の研究に臨む事ができるのは大きなアドバンテージです。
2.推薦を受けることで入試の一部が免除される
大学院への内部進学には、内部進学者対象の特別入試制度があります。推薦入試などと称されることが多いです。学部時代の成績や研究活動、教員からの評価などをもとに、大学院入試への出願資格を得られる制度であり、たとえば入試内容が筆答試験が免除され、面接試験だけとなります。
特別入試制度を利用することにより、大学院入試の準備にかかる時間や労力を大幅に削減できます。一般入試では、筆答試験を課す場合がほとんどであるため、試験勉強に専念する必要がありますが、推薦入試をはじめとする特別入試制度を利用することで、学部での研究活動に集中できます。それにより、大学院に進学した後も、スムーズに研究を続けることができます。
3.慣れ親しんだ環境で研究ができる
内部進学によって大学院に進む場合、学部時代からすでに慣れ親しんだ環境で研究を続けることができます。学部時代に培った友人や先輩、教員との関係を継続して活かせるため、情報収集や研究活動において協力しやすくなります。
また、学部時代に使っていた施設や設備を引き続き使用でき、新しい環境に慣れるための時間を省くことができます。そのため、大学院に進学した直後から効率的に研究活動に専念できます。
4.よく知った教員のもとで指導が受けられる
内部進学によって大学院に進む場合、学部時代に指導を受けた教員が引き続き指導教員となることも多いです。その場合、指導教員の専門分野・指導方針や教員との相性などを把握した状態で大学院での研究を行うことができます。
教員の指導方針や相性が合わないと、研究活動がスムーズに進まないことが考えられますが、既に教員との信頼関係が築かれていれば、研究に対する相談がしやすく、悩みも気兼ねなく話し合えるでしょう。
大学院で外部進学するメリット
次に大学院で外部進学するメリットを4つ解説します。
- 自分の研究により一層合う環境が整う大学院で学べる
- より興味のある分野の研究ができる
- より学費が安い大学院に移れる
- 教員との人脈が広がる
1.自分の研究により一層合う環境が整う大学院で学べる
外部進学を選択することで、研究環境が在籍している大学よりも自分の研究内容により一層合う大学院へ進学することも可能です。自身の研究分野に適した研究環境がある大学院へ進学すれば、研究活動の質の向上が期待できます。特に、先端技術や専門的な設備を必要とする研究分野においては、より優れた研究環境が求められるため、できる限り最新の設備が整った大学院を探すとよいでしょう。
自分が望むような研究環境が整っているか確かめるには、教員訪問を通して大学院の研究室を見学させてもらうとよいでしょう。教員にメールでコンタクトを取り、教員訪問が可能か問い合わせましょう。。他に、進学相談会に参加すると、ウェブサイトやガイドブックには載っていない情報を得られる可能性があります。
研究室訪問の進め方や聞くべき質問内容について、こちらの記事で詳しく紹介しています。
2.より興味のある分野の研究ができる
より興味のある分野がある場合、その分野において評価が高い大学院に進学するのも良いでしょう。外部進学の魅力の1つに、異なる大学や研究機関で活躍している研究者と出会い、新たな研究の道を探求できることがあります。これにより、自身の研究活動を充実させることができます。
それぞれの専門分野で評価の高い大学院を探すには以下のような手段があります。これらの手段を確かめて、自分の研究成果を深められるような大学院を探しましょう。
- 在学生の成果(受賞・学会発表等)を確認する
- 所属教員の研究業績を確認する
- 修了生の進路・活躍を調べる
- 授業や研究環境をはじめとする大学院生を育てる環境が整っているか調べる
大学院の研究室(指導教員)の選び方について、こちらの記事で詳しく紹介しています。
3.より学費が安い大学院に移れる
外部進学を選択することで、より学費が安い大学院へ進学できる可能性もあります。
学費が安い大学院を選択することで、経済的な負担を軽減できます。特に、年間54万円と比較的学費が安い国公立の大学院や、奨学金制度の整った大学院を選択すれば、学費を抑えられるでしょう。このような大学院へ進学することで、研究活動に専念するための経済的な基盤を確立しやすくなります。
また、学費金額の設定のほかに奨学金制度についても確認し、学費と奨学金を合わせて検討することも経済的負担軽減のためには有用です。大学院生向けの奨学金については、こちらの記事にわかりやすくまとめています。中央大学大学院独自の奨学金制度についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
4.教員との人脈が広がる
外部進学を選択することで、新たな教員との人脈が広がります。異なる大学や研究機関で活躍する教員と出会うことで、未知の研究分野や視点に触れる機会が増えます。
教員との人脈が広がると、自身の研究成果を評価してもらうチャンスが増えます。さらに、共同研究や学会発表の機会が生まれることもあり、研究者としてのキャリアを広げることができます。
大学院内部進学に適した人の特徴
内部進学に適した人の特徴を解説します。
- 現在の環境で継続して研究したい人
- 担当教員との関係が良好で、今後も指導を受けたい人
- 研究以外にも取り組みたいことがある人
現在の研究環境に満足している人
現在の研究環境に満足している人は、内部進学で研究を深めるのが望ましいです。学部時代に利用していた設備、教員の体制が十分に整っており、慣れ親しんだ環境で引き続き研究活動を行えます。また、学部で専攻している分野をより深く研究できることも、内部進学の特徴です。
担当教員との関係が良好で、今後も指導を受けたい人
担当(指導)教員との関係が良好で、今後もその指導を受けたいと考えている人は、内部進学を検討しましょう。既に教員との信頼関係が築かれているため、研究に対する相談や悩みも気兼ねなく話し合えるでしょう。
また、教員との良好な関係は、研究活動を円滑に進めるだけでなく、将来的なキャリア形成や人脈作りにも役立つことが期待できます。例えば、就職先を紹介してもらったり、学会に参加させてもらったりすることはとても貴重な経験になります。
研究以外にも取り組みたいことがある人
大学生活で研究以外に取り組みたいことがある場合、推薦入試等の特別選考入試を利用することで大学院入試にかかる時間を抑えられる他、内部進学により、既存の知人や先輩とのつながりを維持しながら、興味のある活動に引き続き取り組むことができます。
研究活動と並行して、インターンシップや課外活動などに取り組むことで、自己成長やスキル習得に寄与することが期待できます。また、研究の内容を活かせるインターンシップならば、学んだ分野を社会に応用する力を身につける事ができるため、修了後のキャリアに大きく役立つでしょう。
大学院外部進学に適した人の特徴
次に外部進学に適した人の特徴を解説します。
- 新たな研究分野に挑戦したい人
- より優れた研究設備や研究環境を求める人
- 新しい指導教員のもとで研究活動をしたい人
新たな研究分野に挑戦したい人
学部時代とは異なる研究分野や新たな研究テーマに取り組みたい場合、外部進学が適しているでしょう。新たに取り組みたい研究分野により適した大学院に進学することで、研究を更に深めることが期待できます。
新たに携わりたい研究分野は、自らの望むキャリアプランと照らし合わせて決めると良いでしょう。まずは自らのキャリアプランを考え、取り組む研究分野を洗い出してみましょう。
より優れた研究設備や研究環境を求める人
研究分野を変えずとも、より優れた研究設備や研究環境を求める人も、外部進学を検討してみましょう。
現在の研究環境に不満を持っていたり、自身の研究分野に合致した設備や研究チームが他大学にあったりする場合、自身の研究活動に適した環境を提供する大学院への進学によって、研究活動の質を向上させることが期待できます。
新しい教員と活動したい人
自らの研究分野の第一人者などが異なる大学や研究機関で活躍している場合、その教員と共に活動したい場合も、外部進学が選択肢に入ります。
研究分野の第一人者と共に活動したい場合、論文や研究発表で興味のある研究結果を見つけた際に、教員の名前を記録し、どこの大学院に所属しているのか確認しておくとよいでしょう。
新たな進学先の教員とともに活動することで、新たな教員との人脈が広がるなどのメリットがあります。自らの興味範囲により近い分野で、研究成果の発表や共同研究の機会が増えることが期待できるでしょう。
他大学の大学院への進学について、メリットや入学前にすべきことをこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
大学院内部進学の注意点
大学院に内部進学する際の注意点を3点説明します。
- 大学院入学までに専門知識を深めておく
- 推薦を受けられるとは限らない(あるいは内部進学者用の入学試験の受験資格を充たせるとは限らない)
- 学費や制度が変更になる可能性もある
大学院入学までに専門知識を深めておく
推薦入試で大学院への進学を検討する場合でも、自分が興味ある分野の専門知識を深めておくことが重要です。学部時代に専門知識をつけておけば、大学院入学後の研究を有利に進めることができます。
また、推薦入試では、大学の教員からの推薦やGPAの基準を満たすことによって、入試の一部が免除されるということがありますが、そのためには十分な研究能力と専門知識を修得しておくことが求められます。そのため、日頃の研究に力を入れておくことが重要です。
推薦が受けられるとは限らない
内部進学だからといって、必ず推薦を受けられるとは限りません。推薦入試をはじめとする特別選考入試の出願資格には、学部のGPAや外部試験のスコア、教員からの推薦書など一定の要件があります。
これらの要件を満たしていないと特別選考入試には出願できないため、内部進学を選んだ場合でも一般入試を受験することは十分に考えられます。事前に要件をよく確認して、進学に向けた準備を進めましょう。
学費や制度が変更になる可能性がある
学部と大学院の学費は必ずしも同じではありません。場合によっては大学院の方が学費が高いこともあります。また、大学院への内部進学を検討する際は、すでに知っていることが多いと思い込まず、必ず最新の情報を調べるようにしましょう。
特に学費の増額は、大学院生活に大きな影響を与えるので、内部進学を選択する際には、大学院での学費を事前に確認しておきましょう。奨学金制度や学生支援制度などを使うことも重要です。
また、大学院に進学する際は、入学金が必要になることにも留意しておきましょう。
大学院外部進学の注意点
大学院の外部進学する際の注意点を2点説明します。
- 教員との関係性を一から構築する努力が必要
- 入試対策は早めに取り組む
教員との関係性を一から構築する努力が必要
外部進学の場合、新しい研究環境において教員との関係性を一から構築していく必要があります。大学院で研究指導や学問的なサポートを受けるためには、指導教員との信頼関係が不可欠であり、教員との良好な関係が研究の進展に大きく寄与します。
外部進学した際は、指導教員とのコミュニケーションを重視しましょう。教員の研究分野や専門知識について理解を深め、研究を手伝ったり、研究を進めるなかで疑問が湧けばすぐに相談したりして、交流を深めることが重要です。
入試対策は早めに取り組む
大学院の外部進学は、入試対策を早めに始めることが肝心です。大学院の入試は、専門分野の深い知識と理解を必要とします。したがって、入試に向けた学習計画を早期に立て、専門分野の学習に取り組むことが重要です。
大学院によっては、特定の科目の成績や資格、TOEICやTOEFLのスコアの提出などが入試要件となることもあり、それらの要件を満たすためには時間が必要となる場合があります。また、面接もあるため、志望動機を考えたり、面接の模擬練習などに時間を当てたりするなどの対策も必要です。入学要件や過去問題を確認し、長期的な計画を立てて取り組みましょう。
まとめ:自らの希望と照らし合わせて、内部進学か内部進学か決めよう
ここまで大学院の内部進学と外部進学について説明しました。
学部時代の研究を深めたい、引き続き現在の指導教員から指導を受けたい場合は内部進学、新たな研究環境や分野に挑戦したい人、より優れた研究設備や研究環境を求める場合は外部進学が適しています。自らの希望により内部進学、外部進学どちらが良いかは変わります。まずは自らが大学院に求めるポイントを整理して、教員訪問やキャリアプランの見直しとともに、内部進学か外部進学か決めるとよいでしょう。