大学院進学

大学院進学で知っておくべき情報まとめ|種類や学びの制度を解説

自身の研究内容を深めたい人や専門性を高めたい人は、大学院への進学が1つの選択肢になります。

入学してから後悔しないよう、まずは大学院について知っておくことが重要です。

ここでは、大学院への進学を検討している方向けに、大学院の種類や制度、進学にあたってすべきことや、大学院に進学するメリット、注意点などを解説しています。

大学院は大きく分けて2種類

大学院には主に2つのタイプがあります。目的や研究内容が異なるので、各々の特徴を解説します。

一般的な大学院

一般的な大学院は、研究者・大学教員や高度な知見を有した職業人として研究活動に取り組む高い研究能力と、その基礎となる学問的な知識を養うことを目的としています。大学院で学ぶことで、特定の分野に対する高い専門性を身に付けられます。

修士課程と博士課程

一般的な大学院は、修士課程と博士課程に分かれています。修士課程の標準修業年限は2年間で、高度な研究力や専門性が必要とされる職につくために必要な能力を身につけることを目的としています。区分制の博士課程の場合は、博士前期課程が修士課程に相当します。修士課程と博士前期課程では、修了時に「修士」の学位が取得可能です。

修士課程を修了した人が進む博士課程は、区分制の博士課程での博士後期課程に相当し、いずれも修了すると「博士」の学位が取得できます。博士課程の標準修業年限は3年間です。また、一貫制の博士課程5年では博士課程を修了した際に博士学位が授与されます。博士課程では、さらに専門性の高い研究力を身につけ、自立して研究活動を行うことが目的です。

専門職大学院

専門職大学院は、従来の大学院が担っている研究者養成ではなく、高度で専門的な職業能力のある実務家を養成を目的とすることに特化した大学院のことです。現場での問題解決を図るために、必要な知識と技能の獲得を目指した教育が行われます。

例えば法科大学院は、弁護士や裁判官、検事として働くための専門性の高い知識や能力を培うことに特化しています。法科大学院を修了すると、司法試験の受験資格を得ることが可能です。

他にも以下のような専門職大学院があります。

  • 教職大学院
  • MBA大学院
  • ビジネス、MOT大学院
  • 臨床心理系大学院

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内部進学と外部進学の違い

ここからは、大学院のいわゆる内部進学と外部進学の違いを説明します。

内部進学とは

卒業した大学と同じ大学の大学院に進むことを内部進学と言います。同じ大学の先輩から受験準備や大学院での研究活動の様子などを聞けるため、指導教授選びや研究室選び、受験準備の情報を得やすいです。

外部進学とは

外部進学は、自分が在籍する大学とは異なる大学の大学院に進むことです。自身が研究したい分野・テーマの指導ができる教員が他大学の教員だったり、他大学の大学院でしか研究できないことがあったりする場合、外部進学が選択肢となります。

内部進学の方がスムーズに進学できると思われがちですが、学部とは異なる大学の大学院へ進学する人も数多くいます。大学の公式ホームページから入学試験の過去問題を入手でき、教員の問い合わせ先が公開されている場合も多いため、外部進学も検討しやすいでしょう。

また、他大学の大学院への進学については、以下の記事で詳しく解説しています。

他大学 大学院
他大学の大学院に進学するのは効果的?メリットや入学前にすべきことを解説大学(学部)よりも踏み込んだ研究を行いたい方は、大学院への進学に興味があるかと思います。中には、他大学の大学院に進学を検討している方もい...

大学院での学びの制度

大学院では、自分のライフスタイルに合った学び方ができるよう、様々な学びの制度が用意されています。ここでは、大学院の通学方法と学びの制度について解説します。

一般的な昼間の通学制

平日と土曜の昼間に開講している一般的な形式です。現状、多くの大学院では、昼夜開講制や通信制と比べて開講されている科目が多い傾向にあります。

昼夜開講制

昼夜開講制は、平日の昼間に加えて夜間や休日に講義を行う形式です。昼間に仕事をする社会人でも、大学院に通い研究を深められるようにすることを主な目的としています。仕事や家事などと両立したい人向けの制度です。

通信制大学院

自宅や職場から通える距離に通いたい大学院がないなどの理由から、通学が困難な人が在宅等で授業を受けられる大学院です。1998(平成10)年3月に制度化されたため、比較的新しい学びの在り方です。通信制大学院では、印刷教材等による授業や放送授業などを活用して学びます。しかし最近では、一般的な大学院でも一部の授業がリモートで実施されており、学び方の幅は広くなりつつあります。

長期履修制度

修士課程の履修期間を3〜4年の長期に定める制度です。通常だと修士課程は2年で修了しますが、4年を上限に長期で履修計画を立てることで、仕事や家事などと並行して大学院での学びを深めることができます。大学院によって長期履修制度の対象になる条件は異なるので、あらかじめ確認してみてください。

早期修了制度

通常2年の修士課程を、1年という短い期間で履修できるのが早期修了制度です。できるだけ早く就職したい学生や、早く単位を取得して会社へ復帰したいと考える社会人を対象にしています。大学院によって早期修了制度を利用できる条件は異なり、場合によって制度自体がないこともあるので、事前に確認しておくことが必要です。

科目等履修生・聴講生

正規の学生としては大学院へ入学せず、自分の受けたい科目だけを履修・聴講できる制度が「科目等履修生」や「聴講生」の制度です。科目等履修生は特定の授業を受けることで単位を取得できますが、聴講生は単位を取得できません。

中央大学大学院では、科目等履修生・聴講生の両方を募集しています。

▼中央大学の科目等履修生についてこちら
https://www.chuo-u.ac.jp/academics/faculties/teachingcourse/credited_auditor/about/

▼中央大学の聴講生についてはこちら
https://www.chuo-u.ac.jp/admission/gschool/listener/

大学院でかかる学費

私立大学院の初年度にかかる平均の学費は、授業料・入学料・施設設備費等の合計で以下の通りです。

修士(博士前期)課程 1,048,445円
博士(博士後期)課程 851,298円
専門職学位課程 1,339,517円

国立大学の大学院学費は一律で定められており、初年度の学費は以下の通りです。

授業料 520,800円
入学料 28,200円

ただし法科大学院のみ、授業料は年間804,000円です。

参考:私立大学等の令和元年度入学者に係る学生納付金等調査結果について

参考:国立大学等の授業料その他の費用に関する省令

中央大学大学院の学費についてはこちらで確認できます。

大学院進学で知っておくべき情報まとめ|種類や学びの制度を解説自身の研究内容を深めたい人や専門性を高めたい人は、大学院への進学が1つの選択肢になります。 入学してから後悔しないよう、まずは大学...

大学院進学後の生活

大学院での生活は、学部とは異なり、研究活動が中心です。1日の大半を研究室で過ごし、研究活動を進めます。特に理系では、コアタイム(研究室に必ずいなければならない時間)が設定されている研究室も多いです。コアタイムがない場合も、成果を出すためには計画的に研究活動に取り組む必要があり、いずれにせよ研究室を中心に1日のスケジュールを組むことになるでしょう。

もちろん、学部と同様に授業を受け、単位を取得することも必要です。大学院の授業は少人数制のものが多く、プレゼンや議論の時間が多く設けられています。

そのほか、論文執筆や学会発表に向けた準備、アルバイトなどをして過ごすのが特徴です

大学院へ進学する前にすべきこと

大学院へ進学を決めるにあたって、事前の準備は欠かせません。ここでは大学院へ進学する前にやるべきこと5つを紹介します。

1.大学院の情報収集

まずは、大学院のHPやパンフレットなどを活用して情報収集をしましょう。情報収集をしながら、特に自分の研究したいことが実現できるかを確認してください。大学院を選ぶ上でチェックしておきたい項目は、以下の通りです。

  • 大学院・研究科で研究できる・学べる内容・設置授業科目(カリキュラム)
  • 教員の専門分野
  • 学費
  • 試験科目
  • 入試日程 など

収集した情報を比較しながら、最終的な志望大学院を絞り込んでいきましょう。

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2.大学院説明会に参加・研究室への訪問

大学院によっては説明会を実施しており、参加すると学生の様子や研究内容への理解が深まります。また、研究室への訪問を依頼すれば、研究の様子を見学できたり、自身の研究内容について教員に相談したりすることが可能な場合もあります。

訪問できない場合は、指導を希望する教員に連絡をとり、自身の希望する研究テーマについて指導してもらうことが可能か確認しておきましょう。

中央大学大学院では、大学院進学検討者に向けて進学説明会を実施しています。大学院進学説明会については、以下のページを参照してください。

https://www.chuo-u.ac.jp/admission/gschool/consultation/

3.受験方式を決める

次に、受験方式を決めます。最近は一般入試だけでなく、特別選考入試や社会人入試、外国人留学生入試などさまざまな受験方式があり、試験時期や試験内容などが異なります。進学したい大学院・研究科の受験方式と出願資格を確認し、早めに受験対策を開始することが重要です。

中央大学大学院の2023年度(2024年度入学)大学院入学試験日程は、以下のページで確認できます。

https://www.chuo-u.ac.jp/admission/gschool/schedule/

4.出願するための必要書類を準備する

受験形式が決まったら、出願に必要な書類を揃えていきます。提出が求められる書類は以下の通りです。

  • 入学願書
  • 卒業証明書(または卒業見込み証明書)
  • 成績証明書
  • 研究計画書
  • 志望理由書
  • 推薦書(推薦入試などで求められる場合) など

研究計画書は、大学院に入ってから研究するテーマや研究内容の概要をまとめたもので、口述試験ではその内容についての質問も受けます。作成時には、研究の意義や内容を分かりやすく整理し、自分の経験やこれまでの学習内容等を踏まえたオリジナリティのある研究内容にすることが重要です。研究計画書の作成は時間がかかるため、早めに取り掛かりましょう。

5.入学試験に向けて準備

最後に入学試験の準備をしましょう。大学院入試では、筆答試験(筆記試験)と口述試験(面接試験)が行われます。

筆答試験では、外国語科目と専門科目の2つが課されることが多いです。外国語科目の試験はTOEICやTOEFLなどの結果で免除になる場合もあるので、事前に入試要項などを確認しておくとよいでしょう。専門科目の試験は、研究科ごとに異なる内容が出題されます。専門分野の知識を問う問題もあれば、論理的な文章を書く力を試すような論述の試験もあるため、事前の対策が欠かせません。

口述試験では、主に志望動機と事前に提出した研究計画書に対しての質疑応答が行われます。面接までに、研究計画書を何度も見直しておくとよいでしょう。また口述試験は、受験者全員に実施する場合と筆答試験合格者だけに実施する場合があるので、事前の確認が必要です。

大学院に進学するメリット

大学院に進学することには、以下のようなメリットがあります。

  • 興味のある分野の研究に没頭できる
  • 知識やスキルを身につけられる
  • 専門性が高い職業に就きやすくなる

それぞれ見ていきましょう。

興味のある分野の研究に没頭できる

大学院では、興味のある分野の研究に没頭しやすく、より専門性を高められます。

学部では、理系・文系問わずさまざまな知識を身につけることが重視されているため、幅広い分野の学問を学習します。

一方、大学院ではより専門分野の研究活動に充てられる時間が増えます。研究環境も充実している場合が多いです。教員の指導や優秀な仲間から刺激を受けながら、研究活動に取り組めます。

知識やスキルを身につけられる

専門分野に関する知識はもちろん、プレゼンテーションスキルや論理的思考力、課題解決能力、批判的に分析する力など、さまざまな知識やスキルを身につけられるのもメリットです。

大学院では、普段の授業や研究室内での進捗の発表、学会での発表など、プレゼンの機会が多く用意されています。そのため、社会人に求められるプレゼンテーションスキルや資料発表スキルが、自然と身につくでしょう。

また、研究活動では課題を自ら設定し、仮説検証を繰り返すことが必要です。答えのない問題に取り組むため、思考力や分析力も養われます。

専門性が高い職業に就きやすくなる

大学院に進学することで、専門性が高い職業に就きやすくなるのもメリットです。

例えば、公的な研究機関や民間企業などの研究職になるためには、修士課程や博士課程の修了が前提とされていることが多いです。

ほかにも、製品設計職やシステムエンジニア、学芸員などの専門職を目指す場合は、修士課程や博士課程を修了していることが大きなアピールポイントになります。

このように、専門性が高い職業に就きやすくなるため、将来の選択肢が広がるのも魅力です。

大学院に進学する際の注意点

大学院に進学する際は、以下の点に注意しましょう。

  • 学費がかかる
  • 社会に出るタイミングが遅くなる

大学院に進学するためには、当然ですが学費がかかります。最短でも、修士課程なら2年間、博士課程まで進学する場合はさらに3年間分の学費を多く支払うことになります。

家族から金銭的な援助を受けられない場合は、自分でアルバイトをして学費を工面することになるでしょう。しかし、大学院生は研究活動が忙しいため、アルバイトとの両立が難しいケースも少なくありません。事前に必要な費用を概算し、資金計画を立てたり、奨学金制度はないか調べたりすることが大切です。

また、学部で卒業する方に比べて、社会に出るタイミングが遅くなります。その分大学院で専門知識を身につけられますが、実務経験を積むのが遅くなる点には注意しましょう。

大学院に進学するか学部で就職するか迷った時にやるべきこと

大学院に進学するか学部で就職するか迷ったら、就活と大学院入試対策を並行して進めましょう。両方の準備を進めておくことで、最終的にどちらを選択しても後悔しない進路に進めるでしょう。

ただし、日頃の研究活動に加えて就活と大学院入試対策に取り組むのは、容易ではありません。両立ができず、すべてがどっちつかずになってしまうリスクもあります。

進路を明確に決めるためには、自分が大学院で何を研究したいのか、就職してどのような仕事に就きたいのかなど、目的を考えることが大切です。

くれぐれも、就活を先延ばしにするために大学院に進学する、という選択をとるのはやめましょう。研究したい分野やモチベーションがないまま安易に大学院に進学すると、後悔する可能性が高いです。

まとめ

今回は大学院への進学を検討している人向けに、大学院の種類や制度、進学にあたってすべきことについて解説しました。一口に大学院といっても、さまざまな通学スタイルや制度があります。まずは情報収集を行い、自分に合った大学院を選べるようにすることが重要です。

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