研究・教育

研究職に就くにはどうすればよい?仕事内容や向いている人の特徴も解説

研究職は、特定の専門分野を研究する職業です。大学院の修士課程(博士前期課程)や博士課程(博士後期課程)で身につけた専門性を活かせる仕事であり、大きなやりがいを得られるでしょう。しかし、研究職に就くのは容易ではなく、仕事も決して楽ではありません。

今回は、研究職の仕事内容や研究職としての働き方、研究職に向いている人の特徴などを解説します。研究職に興味を持っている方は、ぜひ参考にしてください。

研究職の仕事内容

研究職とは、特定の専門分野を研究する職業のことです。大学や公的機関、民間企業で研究活動を行います。新たな知識や技術、理論を発見したり、それらを実用化する方法を考えたりする仕事です。

成果が出るまで研究を繰り返す地道な仕事ですが、成果が出れば社会に大きく貢献できます。非常にやりがいのある仕事と言えるでしょう。

研究職が扱う分野

研究職が扱う分野は、理系・文系問わず多岐に渡ります。

厚生労働省の職業分類では、研究者は自然科学系研究者と人文・社会科学系等研究者に分けられます。それぞれの職業の例は以下の通りです。

自然科学系研究者 医学研究者、医薬品研究者、化学研究者、機械工学研究者、電子工学研究者、生物学研究者、数学研究者、農学研究者、理学研究者、土木工学研究者、天文学研究者 など
人文・社会科学系等研究者 エコノミスト、経済学研究者、社会学研究者、心理学研究者、政治学研究者、哲学研究者、文学研究者、法学研究者 など

出典:厚生労働省「参考『令和4年版 厚生労働省編職業分類表』」
出典:ハローワークインターネットサービス「02 研究・技術の職業」

このように、研究職が扱う分野は幅広いため、自身の興味関心がある分野を突き詰められることが分かるでしょう。

研究職と開発職の違い

研究職と開発職は一括りにされることも多いですが、厳密には異なる仕事です。

研究職は新たな知識や技術を生み出す仕事である一方、開発職は製品・サービスを生み出す仕事と整理できます。例えば、新たな成分を発見するのは研究職、その成分を使って化粧品を開発するのが開発職です。

研究職の種類

研究職には、基礎研究と応用研究の2つの種類があります。それぞれ、どの段階の研究をするかが異なります。

基礎研究

基礎研究とは、誰も発見していない物質や理論、メカニズムなどを研究する仕事です。

未知の分野を切り拓く仕事であり、成果が出る確証がない中で、根気強く研究を続ける必要があります。成果が出るまで数年以上かかることも多く、出ずに終わる可能性もあります。

しかし、成果を出せば世の中に大きなインパクトを与えられる仕事です。また、基礎研究で得た成果は、応用研究で活用されます。

応用研究

応用研究は、基礎研究の成果をどのように実用化するか、新たな応用法はあるかなどを探求する仕事です。研究結果を実際の製品開発に活かしたり、新たな治療法の開発につなげたりします。

また、すでに実用化されている技術に新たな付加価値を与えることも、応用研究の1つです。

基礎研究の成果を理解するために専門知識が求められるほか、世の中のニーズを汲み取る力が必要です。また、基礎研究と異なり納期が明確に定められているケースが多いため、スケジュール管理能力やマルチタスク能力なども求められます。

研究職の主な就職先

研究職の主な就職先は、以下の3パターンに分けられます。

  • 大学
  • 公的機関
  • 民間企業

ここでは、就職先ごとの働き方について見ていきましょう。

大学

1つ目は、大学の研究室でポストドクター(ポスドク)として就職するパターンです。

博士課程を修了した後にポスドクとして採用され、研究成果を出すことで、大学教員として採用される可能性があります。講師や助教などから准教授・教授へとキャリアアップするのが基本です。

大学での研究活動の特徴は、基礎研究が中心である点です。新たな物質の発見や原理の解明などを目指して、日々研究活動を進めます。そのため、成果が出るまで時間がかかることが多く、粘り強さが求められるのがポイントです。その分、成果が出れば、学術界に大きな影響を与えられます。

公的機関

2つ目は、中央省庁や地方自治体等が設置する研究施設や独立行政法人など、公的機関の研究職として就職するパターンです。

具体的な就職先としては、以下の3種類があります。

  • 国立研究機関:中央省庁が運営する研究施設
  • 国立研究開発法人:独立行政法人が運営する研究機関
  • 公設試験研究機関:地方自治体が運営する研究機関

公的機関に勤める研究職は、基礎研究と応用研究どちらにも関わることがあります。

なお、国立研究機関では国家公務員、公設試験研究機関では地方公務員として働くため、就職するためには公務員試験に合格することが必要です。

民間企業

3つ目は、民間企業の研究部門に就職するパターンです。応用研究を中心に行い、企業の競争力を高めて利益につなげることを目的に研究活動に取り組みます。

自身が関わった製品やサービスが世の中に広がる可能性があり、やりがいを感じやすい仕事です。

一方、いくら関心がある研究内容であっても、利益につながらないと経営層に判断されれば打ち切られる可能性があります。そのため、専門分野への興味や研究活動への熱意だけでなく、市場のニーズを把握する力も必要です。

研究職になるためにやるべきこと

研究職になるためにやるべき主な2つのことを紹介します。

  • 大学院の修士課程・博士課程を修了する
  • 公務員試験に合格する

大学院の修士課程・博士課程を修了する

研究職を目指す上では、基本的には大学院の修士課程・博士課程を修了する必要があります。

研究職は、高い専門性が求められる仕事です。そのため、大学や公的機関に勤めるためには博士号、民間企業に勤めるためには修士号を取得することが要件に定められているケースが多く見られます。

研究職を志している方は、まずは大学院に進学して専門分野を研究し、研究活動や論文執筆に努めましょう。

公務員試験に合格する

国立研究機関や公設試験研究機関で研究職として就職したい場合は、公務員採用試験に合格しなければなりません。前者の場合は国家公務員総合職試験、後者なら地方公務員試験を受験し、合格しましょう。

また、公務員試験とは別に各研究機関が独自に採用試験を実施していることもあります。

研究職の年収目安と採用難易度

国税庁の民間給与実態統計(令和4年分)によると、学術研究、専門・技術サービス業、教育、学習支援業の平均給与は420万円でした。

もちろん、年収は勤め先やポジションによって大きく異なりますが、年収は400〜500万円ほどを目安と考えるとよいでしょう。

参考:国税庁「民間給与実態統計調査結果」

研究職の採用難易度は、非常に高いと言えます。応募資格として修士課程あるいは博士課程の修了(修士号や博士号の取得)が求められるケースがほとんどであり、そもそも限られた人にしか開かれていないキャリアであるためです。

また、研究職を志望する学生が多い一方、採用枠は少ない傾向にあります。大手企業であっても、研究職の採用人数は10名以下というケースは珍しくありません。

このように、研究職に就くのは狭き門です。

研究職に向いている人の特徴

研究職に向いている人の特徴は、以下の通りです。

  • 1つのことに集中して忍耐強く取り組める人
  • 探究心や知的好奇心が強い人
  • 失敗を引きずらない人
  • コミュニケーション能力が高い人

それぞれ解説します。

1つのことに集中して忍耐強く取り組める人

研究職として成果を上げるためには、1つのことに集中して忍耐強く取り組む力が必要です。

研究活動の中には、成果が出るまで数年以上かかるものも少なくありません。特に基礎研究の場合は、成果が出るかさえわからないこともあるでしょう。

成果がなかなか出なくてもコツコツと研究に取り組める忍耐強い方は、研究職に向いています。

探究心や知的好奇心が強い人

研究活動を楽しんで続けるためには、探究心や知的好奇心も欠かせません。

「なぜこのような結果になるのか」「成果を出すためにはどうすればよいのか」などを常に考えて挑戦できる、強い探究心が必要です。

また、知的好奇心が強いことも重要です。研究職は、自分が興味のある分野だけを研究できるとは限りません。さまざまな分野の研究に前向きに取り組むためには、知的好奇心が求められます。

失敗を引きずらない人

研究活動はうまくいかないことが多いため、失敗を引きずらずに切り替えられる方も、研究職に適しています。

研究活動は、仮説検証の繰り返しです。失敗を次の検証のヒントと前向きに捉え、うまく切り替えて次につなげることが大切です。

コミュニケーション能力が高い人

研究活動では、チームで協力して進める場面も多いため、コミュニケーション能力の高さも求められます。周囲の人と良好な関係を築ける方なら、研究活動をスムーズに進められるでしょう。

周囲との交流を通じて、研究に役立つ有益な情報を入手できることもあります。

また、応用研究の場合は、他部署や所属の組織以外の方との連携も必要です。専門分野について知識がない方に対して、研究内容や成果をわかりやすく説明するためには、コミュニケーション能力が欠かせません。

研究職として働く魅力ややりがい

研究職は狭き門であり、研究職になった後もハードな場面が多いでしょう。しかし、その分やりがいが大きい仕事です。

ここでは、研究職という仕事の魅力ややりがいについて解説します。

興味のあることを突き詰められる

研究職は、自分の興味がある分野や学問を突き詰められる仕事です。自分の興味のあることを仕事にできるのは、大きな魅力と言えるでしょう。

また、研究環境が整っていることが多く、満足のいく環境で研究活動に取り組めます。優秀な研究仲間と切磋琢磨しながら、充実した設備や備品を使って研究活動に打ち込めるのは、研究職に就くメリットの1つです。

自分の仕事の成果が社会貢献につながる

研究職は、自分の仕事の成果が社会貢献につながっていることを実感しやすい仕事です。

新たな物質や原理などを発見・解明できれば、成果が目に見えて分かります。さらに、それを活かした新製品やサービスが登場すれば、自分の仕事が世の中の役に立っていることを実感できるでしょう。

成果を出すまでの道のりは厳しいですが、その分大きなやりがいを得られる仕事です。

研究職についてよくある質問

最後に、研究職についてよくある質問とその回答を紹介します。

  • Q.学部卒でも研究職に就ける?
  • Q.研究職に就くのはやめておいた方がよい?

Q.学部卒でも研究職に就ける?

A.学部卒で研究職に挑戦することは、不可能ではないものの難しいでしょう。

研究職には非常に高い専門性が求められ、就職後は即戦力として活躍することが期待されています。そのため、はじめから応募条件を「修士課程修了者(修士号取得者)」「博士課程修了者(博士号取得者)」に限定している企業や、修士課程・博士課程修了者を優遇して採用する企業は数多く存在します。

もちろん、ポテンシャルの高さを評価して学部卒を採用する企業もゼロではありません。しかし、研究職を目指している場合は、基本的には大学院に進学して専門性を身につけましょう。

Q.研究職に就くのはやめておいた方がよい?

A.研究職に就くべきではないと言われる所以は、就職難易度の高さと仕事のハードさ、転職の難しさにあるでしょう。

前述の通り、研究職は非常に狭き門であり、就職難易度は高いです。また、地道な研究活動を繰り返す仕事であり、決して楽で華やかな仕事とは言えません。特に、任期付きの研究職の場合には、期間内に一定の成果を出すことが求められます。さらに、専門性が高いため、ほかの職種に転職するのが難しいのもポイントです。

しかし、大学院で身につけた専門性を仕事に活かしたい方や、興味のある分野に集中して取り組みたい方、自分の研究で世の中に貢献したい方にとって、研究職は非常に魅力的な仕事です。無任期の研究職であれば、年収も圧倒的に高いというわけではないものの、比較的安定しています。

研究職は向き不向きがはっきりしている仕事であるため、自身の適性を見極めた上で、研究職に挑戦することが大切です。

まとめ:研究職を目指すなら大学院に進学しよう

研究職は、特定の専門分野を研究する職業であり、高度な専門性が求められます。研究職を目指している場合は、大学院に進学し、修士課程や博士課程を修了することが大切です。

研究職に就くのはハードルが高く、地道な研究活動の繰り返しに心が折れそうになることもあるでしょう。しかし、自身の興味関心を突き詰められ、社会にインパクトを与えられる魅力的な仕事です。興味のある分野があって研究活動に集中したい方や、好きなことを仕事にしたい方、成果を上げて社会に貢献したい方は、研究職というキャリアに挑戦してみてはいかがでしょうか。