博士号は大学院で取得できる学位です。高い専門知識や研究能力が要求されるため、社会で重大な役割を担う職に就きやすくなります。しかし、博士号の取得はどのくらいすごいことなのか、なかなかイメージできない人もいるかもしれません。
今回は博士号のすごさ(価値)と、取得後の進路を解説します。
博士号とは
博士号は大学院の「博士課程」や区分制博士課程の「博士後期課程」を修了すると得られる学位です。博士号の取得により、研究者として経験を積み、その専門分野において顕著な研究の成果を挙げたことの証明となります。
現在では、大学教員になるうえでほぼ必須の要件でもあり、博士号の取得からポスドクや非常勤教員などを経て教授職を目指します。また、民間や政府の研究機関においても、博士号取得者は重宝されています。博士課程における知識や経験は専門職・研究職に就く上でとても重要です。
博士号の取り方
博士号を取るために必要な以下の事項について解説します。
- 研究の遂行
- 学術誌への投稿や学会での研究発表
- 博士論文の審査通過
研究の遂行
博士課程では、大学院での修了に必要な単位の修得をするとともに、日々専門分野の研究に励むことになります。修士課程(博士前期課程)よりもさらに高度で専門性の高い独自のテーマを掲げて、研究を遂行することが重要です。
研究に取り組む際には、まずテーマを明確に定義し、研究計画を策定します。研究計画に基づき、実験やデータ収集、分析を行います。研究では、客観的かつ再現可能な結果を得ることが必要です。また、指導教員のアドバイスを受けつつ、自身で問題を解決し、研究を前進させる能力も重要です。
学術誌への投稿や学会での研究発表
博士課程の学生は研究者として学術誌に論文を投稿したり、学会で研究成果を発表したりします。学会ではさまざまな大学や研究機関の研究者が自らの研究結果を発表し討論する場所であり、研究者同士のネットワークを構築する場でもあります。
他の研究者との交流を通じて、共同研究の機会が生まれたり、将来のキャリア形成に役立つアドバイスが得られたりすることもあります。自分の研究分野で功績のある研究者と関わる機会もあるでしょう。
また、学術誌へ投稿した論文は博士論文を構成する素ともなります。これらを複数執筆していくことで、博士論文の完成にも近づいていくことになります。
博士論文の審査通過
博士課程の修了要件は、所定の単位を修得し、博士論文審査に合格することです。
博士論文は、博士課程における最終成果物であり、自身の研究成果をまとめたものです。博士論文は研究分野に対して新しい見解や発見を見出すことが求められます。博士論文は数年かけて作られることが一般的です。
論文が完成した後は大学による審査を受けます。審査では審査委員(教員)に研究内容のプレゼンテーションをすることが多く、簡潔にわかりやすく説明する力が求められます。また、審査委員からの質疑応答も行われるため、質問への対応力も重要です。博士の学位が授与された場合には、原則として、学位の授与機関(大学)を通じて、その論文が広く一般に公開されることになります。
博士課程で経験できること
博士課程では以下の3つの経験ができます。
- 研究者としての経験
- 新しい研究知見の発見
- 国際的な舞台での活躍
研究者としての経験
博士号を取得するまでの間には、長期にわたり研究を行うことになります。研究では、単に専門知識を学ぶだけでなく、自分自身で研究テーマを見つけ、それに必要なデータを収集・分析することも重要です。これらのプロセスを通じて、研究者に必要な実践力や論理的思考を身につけられます。
また、学会での発表を通じて、自分の研究を分かりやすく伝えるコミュニケーション能力を養えます。これらのスキルは、研究者としてだけでなく、社会の幅広い分野で大きく役に立つでしょう。
新しい研究知見の発見
博士論文には、新しい研究知見の発見が求められます。一つひとつの研究成果は学問の発展に寄与し、場合によっては社会や技術の進歩に大きく影響を与えることもあります。研究成果としてこれまでにはなかった新しい知見が求められる点が、博士課程における博士論文と修士課程における修士論文の大きな違いです。
国際的な舞台での活躍
博士号取得者は、国際的な舞台で活躍することも多いです。博士課程では、研究成果を国際的な学術誌に発表したり、国際学会での発表を通じて、自身の研究を世界に向けて発信したりする機会があるためです。
博士号取得者は、こうした国際的な経験と能力を活かして、世界各地での研究・教育機関、国際機関あるいはグローバル企業などの産業界での職務に就くことができます。場合によっては国際的な研究プロジェクトへ参加することもあるでしょう。
博士号を取得して拓ける進路
博士号を取得後の進路をまとめます。
- 大学教員を目指せる
- 研究職に就ける
- 起業ができる
大学教員を目指せる
博士号を取得することで、大学教員のキャリアパスを歩めます。
博士課程では専門分野で新たな知見を発見すること、論文に研究結果をまとめ発表することなど、大学教員などと同様の多くの研究活動を経験できます。そのため、多くの大学では、教授として採用の条件に博士号の取得を必須としていることが多いです。
大学教員はポスドクや非常勤教員などで研究・教育歴を重ねて、教授を目指します。教員は研究を通じて新しい知見を生み出し、それを広く社会に公開・還元する役割を担います。また、大学教員として学生や若手研究者の指導を行うことで、次世代のリーダーや専門家の育成に携われる点も魅力です。
研究職に就ける
博士号取得後、民間の企業や研究機関の研究職に就く選択肢もあります。
研究職は、企業内の新しい技術の開発、既存の理論の検証や改善などを行います。博士課程で身につけた専門性や技術は、自治体や政府機関、民間企業など、多岐にわたる研究職で役立つでしょう。
研究職の活動は、製品やサービスの技術革新・経済成長や、環境保全、公衆衛生、教育など多様な分野での社会問題解決に大きく寄与しているため、社会において必要不可欠な役割を担っています。
研究職以外の職種に就ける
研究職以外の職種に就くことも選択肢に入ります。
博士課程で身につけた論理的思考力や語学力、実験を遂行する計画力やPDCAサイクルはさまざまな職種に応用できます。
具体的にはシステムエンジニアなどのIT職、コンサルタント、アクチュアリーなどが理系の素養を活かせる職種として選択肢に入るでしょう。
起業できる
博士課程で学んだ専門知識を活かし、起業することも選択肢となるでしょう。
研究で培われた深い専門知識を革新的な製品やサービスの開発、新しいビジネスモデルの構築に繋げられます。学術的な成果を実用化し、社会の発展に寄与することができます。。バイオテクノロジーやAI、持続可能なエネルギーなど、さまざまな分野での起業が可能です。
大学で築き上げたネットワークは、産業界や投資家との関係構築にも役立つでしょう。
まとめ:博士課程の経験は大きく役に立つ
今回は博士号のすごさ(価値)を説明しました。博士号の取得に向けて博士論文の執筆を進める過程はもちろん、学術誌への投稿、学会での発表などを通して、自ら調査や実験を計画・実践して、新しい知見を発見するスキルを手に入れられます。
博士課程の出身者は大学・民間企業・政府などさまざまな組織で活躍し、新しい研究結果を生み出し、技術を社会に適用することで欠かせない役割を果たしています。興味のある分野の研究を進め、社会に活かしたい方は大学院への進学を検討しましょう。