大学院進学

情報系の大学院では何を学ぶ?修了するメリットや目指せるキャリアを紹介

情報系の大学院とは、情報関連の理論や法律をはじめ、システムやソフトウェアの構築、ネットワークなどの専門技術を研究する大学院です。本記事では、情報系の大学院で学べる内容や進学するメリット、目指せるキャリアや情報系の大学院を目指す方におすすめの資格などを解説します。

情報系の大学院とは

情報系の大学院とは、情報関連の理論や法律をはじめ、システムやソフトウェアの構築、ネットワークなどの専門技術を研究する大学院です。

理系と文系の研究科が存在する

情報系の大学院には、理系と文系の研究科が存在します。

文系の研究科では、技術情報関連の理論や法律などを研究するのが特徴です。一方、理系の研究科では、コンピュータやシステム、ソフトウェアなどの最先端の情報・ITスキルを実践的に学びます。

専門職大学院に進学するという選択肢もある

情報系の専門家としてのキャリアを歩みたい方には、専門職大学院に進学するという選択肢もあります。

専門職大学院とは、高度で専門的な職業能力を有する人材の養成を目的とする大学院です。理論と実務の双方を学べ、少人数で実践的な教育を提供しています。また、研究指導や論文審査が必須ではないことや、一定割合の実務家教員がいることも特徴です。

参考:文部科学省「専門職大学院」

情報系の大学院で研究できる学問

情報系大学院では、ITに関連する数学や技術について幅広く研究できるのが特徴です。例えば、以下のような内容を研究できます。

学べる内容 詳細
情報基礎数学 集合、関数、論理など数学の基礎的素養と、数学的帰納法や木構造など計算機科学を学ぶ
情報システム工学 主にハードウェア系とソフトウェア系について学ぶ。データの構造やアルゴリズム、プログラミング演習など
心理情報学 人間の情報処理メカニズムがどのようにして感情、認知、行動を作り出しているかを、脳科学、行動学、人間工学などの立場から学ぶ
AI・ロボット AI・ロボットの最新技術を学ぶ
データサイエンス 数学や統計学、機械学習、プログラミングなどの理論を活用して、莫大なデータの分析や解析を行う学問
コンピュータサイエンス プログラミング言語やアルゴリズム、ビッグデータ、ソフトウェア開発、認知科学など、コンピュータとその利用に関するさまざまな基幹技術・理論を学ぶ

情報系の大学院で取得できる学位

情報系の大学院では、情報学や情報理工学、データサイエンス、国際情報といった学位を取得できます。

また、情報系の専門職大学院を修了した場合は、情報技術修士(専門職)や情報システム修士(専門職)といった学位を取得できます。

情報系の大学院に進学するメリット

情報系の大学院に進学するメリットは、以下の通りです。

  • 最先端の技術や情報を学べる
  • 研究環境が充実している
  • 各領域の第一人者である教員のもとで学べる
  • 実務経験が求められるような職に就きやすくなる

最先端の技術や情報を学べる

情報系の大学院では、情報に関する最先端の技術や理論を研究できるのが魅力です。情報に関する専門知識が身につくため、就職の際に企業から高く評価されやすくなります。研究職や教員などの高度な専門知識が必要とされる職業への道も拓けるでしょう。また、社会人から情報系の大学院に進学する方は、今後の大きなキャリアアップにつながります。

研究環境が充実している

研究環境も整備されているので、自分の研究に没頭できるのも魅力です。

情報系の大学院には、個人で揃えるのが難しいような専門的かつ高価な機材が揃っており、充実した設備の中で研究を進められます。

例えば、多くのスーパーコンピューターに搭載されている画像処理装置であるGPUは、安いものでも1万円以上、高いもので10万円以上します。こうした設備をフル活用して研究できるのは、情報系の大学院に進学する大きなメリットと言えます。

設備だけでなく、同じ分野に関心を持つほかの大学院生と交流しながら研究を進められるのも魅力です。お互いに切磋琢磨しながら、研究における新たな視点を獲得できるでしょう。

各領域の第一人者である教員のもとで学べる

大学院は教員との距離が近いのが特徴であり、各領域の第一人者として活躍している教員のもとで専門的な学びを深められるのもメリットです。

学会に参加して、他大学の教員と関わる機会も多くあります。特にITやAIに関する動向はめまぐるしく進化しており、情報系の領域では、常に最新の情報やトレンドにキャッチアップすることが求められます。

情報系の大学院には、国内外の動向やトレンドなどに明るい教員と交流を深められ、研究に役立つような有益な情報や、独学では入ってこないような生の情報を収集できる機会が多く存在します。興味関心のある分野を、さらに突き詰められるのが魅力です。

実務経験が求められるような職に就きやすくなる

情報系の大学院で身につけた専門性を活かし、実務経験が求められるような、専門性の高い職に就きやすくなるのもメリットです。

学部卒と大学院修了で異なる給与を設定している企業が多いように、大学院で身につけた専門性の高さは人材を評価する1つの指標です。就職活動の際に、情報系の大学院で研究した内容や実績をアピールできれば、専門性の高さが評価され、希望する職に就きやすくなるでしょう。よりよい待遇で仕事ができるケースも少なくありません。

もちろん、情報系の大学院で学んだことは、実務にも活かせます。就職後、即戦力として活躍できる可能性も期待できます。

情報系の大学院で目指せるキャリア

ここでは、情報系の大学院を修了することで目指せるキャリアの一例を紹介します。

エンジニア

エンジニアは、クライアントのシステムの要件定義、設計、構築、テスト、運用まで一貫して請け負う仕事です。情報系の大学院なら、就職して実務に励むなかではカバーできない先端的な知識・スキルを習得できるので、仕事の幅が広がり現場での活躍が期待できます。

エンジニアには、システムを開発するシステムエンジニアや、ネットワークやサーバーなどインフラまわりを開発するインフラエンジニア、セキュリティシステムに特化したセキュリティエンジニアなどの職種があります。

プログラマー

プログラマーは、プログラミング言語を用いてシステムを実装する仕事です。システムエンジニアが作成した仕様書や設計書などから、実際のサービスに落とし込む役割を担います。プログラミング言語への理解はもちろん、実際にプログラミング言語を使いこなすスキルや正確さなどが求められる緻密な仕事です。

プロジェクトマネージャー

エンジニアを仕切るのがプロジェクトマネージャーです。開発を行うプロジェクトチームの責任者として、マネジメントを行います。エンジニアからプロジェクトマネージャーへキャリアアップするときに、大学院で学んだ情報やITに関する知識を活かせるでしょう。

ITコンサルタント

ITコンサルタントは、クライアントの経営状況や競合などを調査・分析したうえで、ITシステムやIT技術の導入による改善・解決を提案する仕事です。クライアントの経営に深く関与して経営改善や成長に貢献したい方に向いています。

ITスペシャリスト

システム開発をする一連の流れのなかで、専門的な技術面をサポートする仕事です。ITスキル標準(ITSS)が定める6つの専門分野のいずれかにおいて、レベル3以上を満たすエンジニアのことで、専門性の高いIT技術に関する知識・スキルが求められます。

データサイエンティスト

データサイエンティストは、顧客データや売上データなどのデータを分析し、クライアントに情報提供を行う仕事です。統計解析の手法を用いてさまざまなデータを分析し、そこから得た知見をもとに、今後の企業戦略に活かせるよう提言します。

文系からでも情報系の大学院に入学できる

文系学部から、情報系の大学院に進学することも可能です。前述の通り、情報系の大学院には、いわゆる文系に分類される学問分野も存在します。学部時代に情報系の授業を履修したり、進学に向けて必要な知識を独学したりすることで、文系の学部からでも情報系の大学院への進学は十分可能です。

情報系の大学院進学を目指す大学生におすすめの資格

情報系の大学院に進学したい方には、資格取得を目標に学習を進めるのがおすすめです。資格を取得していることで、就職や昇進の際などに評価される可能性も期待できます。

ここでは、大学院進学にあたってITに関する基礎知識を習得したい方向けの、おすすめの資格を2つ紹介します。

ITパスポート試験

ITパスポートは、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施する国家資格です。取得することで、ITを利活用する上で必要な基礎的な知識を証明できます。IPAが実施する情報処理技術者試験の中ではレベル1に該当し、初心者も気軽に挑戦できます。

令和4年度の応募者データによると、応募者のうち22%は学生でした。また、学生のうち55%は大学在学中の学生です。情報系の大学院を目指す大学生は、まずはITパスポート試験に挑戦するとよいでしょう。
参考:ITパスポート試験「応募者データ」

ITパスポート試験

身につけられる知識・スキル

ITパスポートを取得することで、以下のような知識やスキルを身につけられます。

  • ネットワークやセキュリティといったITの基礎
  • AIやビッグデータ、IoTなどの技術
  • アジャイル開発といった新しい手法
  • 経営戦略やマーケティングといった経営全般
  • プロジェクトマネジメント

基本情報技術者試験

基本情報技術者試験は、同じくIPAが実施する国家資格です。「ITエンジニアの登竜門」と位置づけられる資格試験であり、プログラミングやセキュリティなどのITに関する基礎を身につけたい方に適しています。

「テクノロジ系」「マネジメント系」「ストラテジ系」の3領域から出題され、経営やマネジメントに関する知識も問われます。文系の情報系大学院に進学したい方や、将来ITコンサルタントを目指す方にも役立つでしょう。試験は通年開催されており、CBT方式で気軽に受けられます。

基本情報技術者試験

身につけられる知識・スキル

基本情報技術者試験を取得することで、以下のような事項に関する知識やスキルを身につけられます。

  • ネットワークやセキュリティ
  • プロジェクトマネジメント
  • 経営や会計
  • プログラミング
  • データ構造やアルゴリズム

プログラミングやアルゴリズムに関する問題が出題されるため、論理的思考力も高められるでしょう。

中央大学大学院の国際情報研究科

2023年4月、中央大学大学院に「国際情報研究科」が新設されました。

情報化やグローバル化が急激に進展し、加速度的に社会が変化していくなか、AIやデータサイエンスの技術が急速に社会に普及しています。今後は、これらに対応できる人材が求められるようになるでしょう。

また、日本国内では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せており、官民を問わず業務において最新の情報技術を取り入れることが求められています。さらに、生成AIをはじめとするAI技術をビジネスに活用しようとする動きも見られます。

情報システムがインフラ化し高度な運用が求められる社会では、それを制御する法体系が不可欠であることから、情報学と法学が学べる国際情報研究科が誕生しました。

▼国際情報研究科の詳細はこちら
https://www.chuo-u.ac.jp/academics/graduateschool/itl/

国際情報研究科の目的

国際情報研究科の目的は、以下の通りです。

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情報に関連する法律・規範及びその関連諸分野に関する理論並びに諸現象にかかる高度な教育研究を行い、高い研究能力と広く豊かな学識を有し、優れた見識と高度の専門性を必要とする業務を遂行することのできる人材を養成します。
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国際情報研究科で学べる内容

国際情報研究科では、法学分野の研究者を多く擁する中央大学ならではの強みを活かし情報と法学を統合的に学べるのが特徴です。

具体的には、AI・データサイエンスや社会デザイン・社会実装、情報法について専門的に学べます。

そこで学んだ経験は、高度な情報化社会となった現代社会で活躍するうえでの大きなアドバンテージとなるでしょう。

教育課程・カリキュラム

国際情報研究科では、以下の点を踏まえて学生が段階的に能力の伸長が図れるよう、教育体系を整えています。

1年次 ・専門共通科目を通じて情報学と法学の知識基盤を構築

・専門分野科目および「国際情報学研究指導Ⅰ・Ⅱ」の受講

・自身の研究テーマを選択し、関連する専門知識を修得

2年次 ・「国際情報学研究指導Ⅲ・Ⅳ」において、研究テーマの選択方法、研究調査方法などを、それぞれ専門性の異なる指導教員、副指導教員による複数指導により修得する

・修士論文または特定課題研究論文の作成

取得できる学位

国際情報研究科では、修士(国際情報)を取得できます。

授業の特徴

国際情報研究科の授業は、平日夜間と土日に実施されます。

オンライン授業も積極的に活用しているため、学部から進学する方はもちろん、働きながら情報系の専門性を身につけたい社会人にもおすすめです。

学位授与の方針

国際情報研究科では、所定の教育課程を修めたうえで、以下の知識・能力を身につけた者に修士の学位を授与します。

  1. 情報基盤を含む情報学と情報法の専門分野に関する社会課題に対し、具体的な解決策を提示するための方法論を十全に使いこなし、かつ実際に問題を解決することができる
  2. 情報基盤を含む情報学と情報法の理論および研究手法を昇華・統合し、かつ問題解決の新たな方法論を導き出すことができる
  3. 同専門分野に関する深い学識を有し、資料を収集、分析し、かつ高度の専門性を有した問題解決や研究成果を示すことができる

入試情報

国際情報研究科では、一般入学試験、社会人特別入学試験、特別選考入学試験の3つの入学試験を実施します。

試験の種類 試験内容や対象者
一般入学試験 ・『筆答試験』と『口述試験』による入学試験
社会人特別入学試験 ・高い研究意欲を有する社会人に対して、一般学生と同様の教育条件のもとで就学の機会を提供することを目的に実施する試験

・『筆答試験』と『口述試験』による入学試験

特別選考入学試験 ・中央大学を卒業見込みの学部学生を対象とする試験

・学業成績等を主な資料とする『書類審査』と『口述試験』による入学試験

詳細はこちら
https://www.chuo-u.ac.jp/admission/gschool/exam/itl/

まとめ:情報系の大学院で学んだ内容は幅広く活かせる

情報系の大学院では、あらゆる場面で活かせる技術や専門知識を習得できます。ただ、一口に情報系といっても学べる内容は異なるので注意しましょう。各大学院(研究科・専攻)で学べる分野や指導を担当する教員の専門分野をよく調べたうえで、自分の適性や興味に合った大学院を選択してください。

▼中央大学大学院の公式ウェブサイトはこちら
https://graduate.chuo-u.ac.jp/

▼中央大学大学院の資料請求はこちら
https://www.chuo-u.ac.jp/admission/gschool/guidebook/