大学院入試の難易度は、学部入試のように偏差値では測れません。難易度を知るには「合格率」を確認するのが最も現実的な方法です。
大学院入試に関して「どれくらいの難易度か」が気になる学生も多いのではないでしょうか。しかし、偏差値等のデータが出てこないため、把握するのが難しいですよね。
今回は大学院入試の難易度と、文系(人文・社会科学分野)と理系(自然科学分野)、内部進学と外部進学による難易度の比較、学部入試と比べた難易度の違いを解説します。
大学院入試の難易度は偏差値からわかるのか
結論から言うと、大学院入試の難易度は偏差値から測れません。もし難易度を知りたい場合には、後ほど説明する「入学率」から測る方法がおすすめです。
学部の入試は偏差値によって難易度の目安を知ることができますが、大学院入試には偏差値がありません。偏差値は大学入試対策の予備校が独自に作成した指標で、大学院入試においては作成されていないためです。
学部の入試では予備校によって大規模な「全国統一模試」などが行われ、そういった指標が形成されますが、基本的には大学院入試ではそのような模試は基本的に実施されていないため、偏差値から大学院入試の難易度を推定することは難しいです。
そこで、大学院入試の難易度の一つの参考指標としては「入学率」が考えられます。ここからは、入学率から難易度を測る方法を説明します。
入学率から難易度を測る方法
入学率とは「入学者数 ÷ 志願者数」で算出される指標です。一般的には、入学率が低いほど競争が激しく、難易度が高い傾向があります。ただし、入学方式(一般・推薦・社会人選抜など)によって志願者層が異なるため、入学率=難易度とは限りません。
大学院によっては、研究科・専攻や入試方式ごとに志願者数と入学者数のデータを公開しています。それを見れば、ある程度の難易度を推測可能です。
ただし、入試方式が異なれば、試験問題や審査の方法、提出する審査の対象となる書類も異なるため、入学率の高さが、難易度に必ず比例するとは限りません。
なお、「入学率」を算出するための入学者数は、入学試験の合格者数とは異なります。学部に比べると少ないですが、合格しても入学手続きを行わない人がいるためです。そのため、入学試験の難易度の参考とするには、「合格率(合格者数÷志願者数)」も併せて確認するとよいでしょう。
大学院入試の文系と理系の入学率の違い
文系と理系ではどちらが入学率が高いのか、令和6年度の文部科学省学校基本調査(専攻分野別 出身大学の設置者別 大学院入学状況)のデータを元に解説します。
| 専攻分野 | 入学率 (小数第二位で四捨五入) |
| 人文科学 | 0.4 |
| 社会科学 | 0.33 |
| 理学 | 0.70 |
| 工学 | 0.76 |
| 農学 | 0.81 |
| 保健 | 0.71 |
| 商船 | 0.7 |
| 家政 | 0.74 |
| 教育 | 0.48 |
参考:学校基本調査 / 令和6年度 高等教育機関 学校調査 学校調査票(大学・大学院)
このように、文系の入学率は0.3〜0.4、理系の入学率は0.7前後であり、入学率だけで見ると文系の方が難しく見えます。
ただし、受験方式や研究科・専攻によって入試問題の内容や難易度に違いがあるため、入学率が高いからと言って、理系のほうが難易度が低いとは一概に言えません。また、大学院によってこれらの入学率は変わるため、興味のある専攻分野を確認しておくことが望ましいです。
大学院入試の内部進学と外部進学の合格率の違い
次に内部進学と外部進学ではどちらが入学率が高いのか、令和6年度の文部科学省学校基本調査(専攻分野別 出身大学の設置者別 大学院入学状況)を元に解説します。
| 学部 | 内部/外部 | 入学率 (小数第二位で四捨五入) |
| 人文科学 | 内部 | 0.6 4 |
| 外部 | 0.29 | |
| 社会科学 | 内部 | 0.68 |
| 外部 | 0.36 | |
| 理学 | 内部 | 0.82 |
| 外部 | 0.43 | |
| 工学 | 内部 | 0.87 |
| 外部 | 0.46 | |
| 農学 | 内部 | 0.85 |
| 外部 | 0.63 | |
| 保健 | 内部 | 0.83 |
| 外部 | 0.59 | |
| 商船 | 内部 | 0.70 |
| 外部 | 0.5 | |
| 家政 | 内部 | 0.88 |
| 外部 | 0.6 | |
| 教育 | 内部 | 0.76 |
| 外部 | 0.4 | |
| 芸術 | 内部 | 0.68 |
| 外部 | 0.25 |
参考:学校基本調査 / 令和6年度 高等教育機関 学校調査 学校調査票(大学・大学院)
入学率で見ると、内部進学のほうが高い傾向にあります。これには以下のような原因が考えられます。
- 希望指導教員との関係構築が済んでいる
- 先輩の大学院生からアドバイスが貰える
- 内部進学希望者に対象を限定した特別選考入試が実施されている
ただし、文理の難易度の違いと同様に、実際には目指す大学院や研究科・専攻によって難易度は異なります。
ただ、内部進学だと同じ分野の大学院生が身近にいて、先輩からアドバイスをもらいやすい点で、大学院での研究や研究室の様子がわかりやすいということは言えるでしょう。
大学院の入試に備える方法
大学院入試では「専門知識」「語学力」「計画性」「論理能力」など、多面的な能力が評価されます。
そのため、大学入試は国語・英語・数学・理科・社会などといった「教科」について試験を実施するのに対して、大学院入試では「筆答試験(志望する分野の専門科目および外国語」と「口述試験(面接)」で評価されます。また研究計画書や論文等も、審査における評価材料となります。
筆答試験は科目数としては少ないですが、その分、特定分野のより深い知識が求められます。また、筆答試験と口述試験の両方が課される場合がほとんどのため、これらに対応できるよう、準備をするとよいでしょう。
このように、大学院入試と大学入試では科目や評価方法に違いがあります。ここからは、大学院の入試に向けてどのような対策を進めればよいのかを解説します。
英語を勉強する習慣をつけておく
英語対策は、「大学院が独自に実施する筆答試験」と「TOEICなどの外部の検定試験」の両方の対策をしておくことが必要です。
筆答試験では、長文の和訳問題が出題されることが多く、文意を読み取り最適な日本語に翻訳する力が求められます。扱われる文章も、学術的な内容のものが中心です。
そのため日頃から英語の学術論文を読んでおく、英文和訳をするなどの対策をすることが望ましいです。試験問題の傾向を把握するために過去問を解いておくのもよいでしょう。
また、TOEICやTOEFLなどの外部試験のスコア提出によって受験できる大学院も増えているため、ハイスコアを有していると有利になります。TOEICの試験科目はリーディングとリスニングであり、スピーディーに英文を読む力と、正確に英語を聞き取る力が必要になります。
このように、大学院の英語試験やTOEIC、TOEFLでは、読解、和訳、リスニングと幅広い分野が求められるため、普段から英語の勉強をしておかないと難しく感じるかもしれません。
研究計画書を充実させる
大学院入試の面接(口述試験)は、出願時に提出する研究計画書をもとに行われることが多いです。研究計画書に書く内容を充実させておけば、面接の際に自分の過去の研究実績や志望動機を伝えやすくなるでしょう。
また、研究計画書をもとに面接の模擬練習をしたり、面接官からの質問を想定したりしておくことも大切です。面接では「論理的思考力」や「研究への熱意」なども見られているため、自分の研究キャリアについてよく考え、根拠を持って論理的に説明できるようにしておくとよいでしょう。
授業や研究の復習しておく
専門科目は分野をどれだけ理解しているかを問う試験であり、多くが論述問題です。
専門科目の試験に備えるには日頃から学部の授業の予習・復習や自主的に研究テーマに関する知識の修得をしておくことが重要です。過去に学んだ内容は関連する専門的な書籍を読んで理解を深めることも大事です。
また、論述力も重要なので、過去問を解いたり、ゼミや授業の課題レポートなどを教員に添削・フィードバックしてもらうとよいでしょう。
大学院入試に関するよくある質問
大学院入試の難易度や対策に関して、多くの人から寄せられる質問とその回答を紹介します。
Q.大学院入試の難易度は偏差値から測れますか?
大学院入試の難易度は、学部入試のように偏差値から測ることはできません。
学部入試の偏差値は予備校が実施する大規模な全国模試に基づいて作成されますが、大学院入試ではそのような共通の模試が基本的に存在しないため、客観的な偏差値という指標がありません。
Q.大学院入試の難易度を知るには、どのような指標を見ればいいですか?
大学院入試の難易度を知るには、大学院が公開している「研究科・専攻や入試方式ごとの志願者数と入学者数のデータ」を確認するのがおすすめです。
そのデータを確認することで、志願者のうち何人が入学したのかがわかるため、ある程度の難易度を推測できます。
また、合格者数が公表されていれば、志願者のうち何人が合格したのかがわかるため、合格率を知ることもできます。
Q.大学院入試の準備期間はどれくらいが目安ですか?
大学院入試の準備は、受験の1年前から始めるのが望ましいとされています。これは、大学院受験では単なる筆答試験対策だけでなく、多岐にわたる準備が必要になるためです。
【必要となる準備】
- 受験する大学院・研究科・専攻の決定
- 教員訪問(研究室訪問)
- 説明会参加
- 受験する大学院の過去問入手
- 研究計画書などの出願書類の準備
- 筆答試験対策
- 面接(口述試験)の準備
中でも、研究計画書などの出願書類の準備には時間がかかります。さらに、筆答試験や面接は入試の合否に直接影響するため、専門書を読むなどして知識を蓄えるとともに、自身の研究内容を深めておく必要があります。
まとめ:大学院入試の難易度は「合格率」と早期準備で見極める
大学院入試の難易度は、学部入試のように偏差値で測ることはできません。難易度を知りたい場合には、研究科や専攻ごとに公表されている「合格率」や「入学率」などのデータを確認し、どの程度の競争率なのかを把握するとよいでしょう。
行きたい大学院や研究科の目処が立ったら、外国語科目や専門科目といった筆答試験、面接(口述試験)に向けて、早めに準備を進めることが大切です。自分の研究したい分野と向き合いながら、計画的に対策を行っていきましょう。
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