「大学院進学か就職か」という選択に悩む学生は少なくありません。進路選択は人生の大きな岐路であるため、それぞれのメリット・デメリットを比較したうえで慎重に選ぶ必要があります。
本記事では、大学院進学と就職それぞれのメリット・デメリットについて解説します。大学院への進学を決めた場合にすべきことも紹介するため、大学院進学(受験準備)と就職(就活準備)のどちらを選ぶか決めかねている人はぜひ参考にしてください。
就活を先延ばしするための大学院進学はおすすめしない
「入社したい会社がない」「まだ社会人になりたくない」などの理由から、とりあえず大学院に進学することはおすすめできません。研究に関心がないまま、就活の先延ばしのために進学すると、研究を継続するモチベーションを維持できず、途中で退学することになってしまう可能性があります。
修了後には再び就職活動をすることになるため、大学院に進学したからといって就活から逃げられるわけではありません。さらに、大学院への進学には100万円以上の費用がかかるため、経済的な負担も大きいといえます。
そのため、研究や専門性の高い知識・スキルを目的としている場合でなければ、大学院への進学以外の選択肢を考えた方がよいでしょう。
大学院進学と就職で悩んだ場合にすること
_大学院進学と就職で悩んだ場合にすることについて説明します。
- 大学院進学と就職の準備を並行して進める
- 先輩やキャリアセンターに相談する
- 大学院進学と就職のメリット・デメリットを理解する
大学院進学と就職の準備を並行して進める
大学院進学と就職活動の準備は、基本的に並行して行うことができます。多くの大学院の入試は、一般的に秋(9〜10月)と春(1〜3月)に実施されます。一方、就職活動の選考が集中するのは4〜7月であるため、並行して進められます。
4月~7月に大学院入試が実施される場合もありますが、この時期に実施する入試は内部進学者を対象とした学内推薦や特別選考入試が中心であるため、就職も視野に入れる場合への影響は少ないといえます。
ただし、大学院受験と就職活動はどちらも多くの時間と労力を要します。選択肢を増やすためと思って両方に挑戦し、どちらも結果が得られない可能性もあるため、綿密な計画を立てて取り組むことが重要です。適切な時間管理と目標設定をすることで、大学院への進学準備と就職活動の両立を実現できるでしょう。
先輩やキャリアセンターに相談する
進路に迷った際、先輩やキャリアセンターに相談することは大きな助けになるでしょう。先輩は自分と同じような状況を経験しているため、就職活動や大学院進学に関する具体的なアドバイスやリアルな体験談を聞くことができます。
また、キャリアセンターは、就職や大学院進学に関する豊富な情報を持っており、より広い視点で自分の進路を検討できます。進学に関する具体的な質問の場合には、大学院を担当する部署に直接相談するとより詳しい説明を受けられるでしょう。
進路選択は人生の大きな岐路であり、自分一人で考え込むと視野が狭くなってしまいがちです。他者の意見を聞くことによって新しい気づきが得られ、よりよい決断を下せるでしょう。
大学院進学と就職のメリット・デメリットを理解する
大学院進学と就職のどちらを選ぶかを決める際、それぞれのメリット・デメリットを理解しておくことが重要です。両者のメリット・デメリットを十分に理解することにより、自分に最も適した進路を選びやすくなり、後悔するリスクを軽減できます。
自分の人生をどのように歩みたいのか、どのようなスキルや経験を積みたいのか、真剣に考えましょう。そのうえで、大学院進学と就職のメリット・デメリットを比較することにより、後悔しにくい進路選択を行うことができます。
研究に興味がある場合には大学院進学がおすすめ
大学院進学が向いているのは、特定の分野に強い興味を持ち、その分野における専門性を深めたいと考えている人です。大学院では学部よりも専門性の高い教育を受けられるため、興味のある分野について深い知識を身につけられます。
また、研究職の応募資格として、大学院の修士(博士前期)課程修了、すなわち修士号の取得が求められるケースが多いです。将来的に研究職を目指す人にとって、就職の間口を広げるために、大学院進学は有効な選択肢だといえます。
大学院進学のメリット
大学院に進学する主なメリットは、以下の5つです。
- 高い専門性が身につく
- 専門性の高い職に就きやすくなる
- 初任給が高い
- 就職後のキャリアアップで有利に働くことがある
- 大学教員や他の大学院生とのつながりが生まれる
前述の通り、大学院では専門性の高い教育を受けられるため、研究職や専門職など専門性の高い職に就きやすくなります。しかし、大学院進学のメリットはそれだけではありません。
大学院修了者は、大学卒業者と比べて初任給が高めに設定されている傾向があります。さらに、就職後のキャリアアップにおいても有利に働くことがあります。例えば、課長や部長などの役職への社内公募の際、修士号や博士号などの学位を持っていると有利になるケースがあります。
研究職以外の職種においても、大学院で培った専門知識や研究経験が評価され、キャリアアップのチャンスが広がる可能性があります。
また、特に私立中学・高等学校では近年、修士号を取得した人を求めることが多く、学部卒でも就職自体はできますが、大学院を修了していることが大きなプラス要素となるケースが増えています。
以下の記事で大学院に進学するメリット・デメリットについて詳しく解説しています。より詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。
大学院に進学するメリット・デメリット|大学院進学に向いている人の特徴を解説
大学院進学のデメリット
大学院進学にはデメリットもあるため、メリットとあわせて理解しておきましょう。大学院に進学する主なデメリットは、以下の3つです。
- 最低でも2年分の学費が必要になる
- 社会に出るのが遅れる
- 文系(人文科学・社会科学)分野の場合は専門性が職種に直結しにくい
大学院に進学する場合、最低でも2年分の学費の支払いが必要となります。文部科学省の「 国公私立大学の授業料等の推移」によると、国立大学の入学料の平均は282,000円で、授業料の平均は535,800円です。私立大学では授業料はさらに高くなり、経済的な負担は大きくなります。
また、学部卒業者に比べ少なくとも2年は社会に出るのが遅くなり、実務経験を積むのが遅れるというデメリットもあります。さらに、文系(人文科学・社会科学)分野では、大学院で学ぶ専門性の高い知識を求めない企業も少なくありません。せっかく身につけた高い専門性が、採用や就職後の担当業務に直接つながらない場合もあります。
以下の記事で大学院の学費について解説しています。入学金や授業料について知りたい方はぜひ参考にしてください。
実務経験を早く積みたい場合には就職がおすすめ
大学院進学よりも就職が向いているのは、早く社会に出て実務経験を積みたいと考えている人です。仕事で活躍するために必要なスキルや知識を早くから身につけることにより、大学院を修了して就職してくる人たちより先に、社内で高く評価される可能性があります。
基本的に、大学院に進学する場合、研究に多くの時間を費やすことになります。もし研究に対する熱意がないのであれば、就職を検討するのが賢明でしょう。
就職のメリット
大学院に進学せずに就職するメリットは、以下の通りです。
- 大学院修了者よりも早く実務経験を積める
- 就活ではポテンシャルを重視されやすい
- 大学院の学費を支払う必要がない
学部卒の新卒採用では、専門性よりもポテンシャル重視の選考が行われることが多いです。企業は、将来の成長可能性を見込んで採用する傾向があり、就職後は人材育成にお金と時間を投資してくれます。
また、大学院の学費を支払う必要がない点も、就職するメリットです。最低でも2年分の学費を節約できます。さらに、大学院修了者よりも早い段階から安定した収入を得られるため、経済的に自立しやすいです。
就職のデメリット
一方、就職するデメリットには、以下のようなものがあります。
- 専門性の求められる職種に応募できないことがある
- 大学院修了者よりも給与が低い
就職のデメリットは、特定の専門性を必要とする仕事に就くチャンスが限られる点です。特に、研究職や技術職では大学院修了が前提となることが多く、学部卒だけでは応募できない職種もあります。
また、学芸員や心理職のような専門職では、募集において修士号の取得が必須でない場合でも、実際には大学院修了者(修士号取得者)を求めているというケースも多いです。
加えて、大学院修了者に比べると給与が低いというデメリットもあります。厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、学部卒の平均年収は約369万円であるのに対し、大学院修了者の平均年収は約477万円です。大学院修了者は給料が伸びやすく、それを不満に感じてしまうこともあるでしょう。
以下の記事では、初任給や給与・キャリアなどについて、大学院修了と学部卒で詳しく比較しています。興味がある方は、ぜひあわせて参考にしてください。
大学院卒と学部卒の主な違い|メリット・デメリットもわかりやすく解説
大学院への進学を決めた場合にすべきこと
大学院への進学を決めたら、大学院入試に向けた準備をしっかりと整えることが重要です。まず、進学する大学院の情報収集から始め、研究室訪問や受験方式の選択、出願書類の作成など、いくつかの段階を踏む必要があります。大学院進学の準備には時間がかかるため、早めに取りかかり、万全な状態で入試に臨みましょう。
以下に、大学院への進学を決めた場合にすべきことをまとめています。
- 大学院の情報を収集する
- 希望の指導教員(研究室)を選択する
- 受験方式を決める
- 出願に必要な書類を用意する
- 勉強を始める
それぞれについて解説します。
大学院の情報を収集する
パンフレットやウェブサイトを活用し、研究環境や指導教員の専門分野、カリキュラムなどを確認します。学費や奨学金制度、入試の形式や日程、試験科目についてもあわせて確認しておきましょう。
大学院進学で知っておくべき情報まとめ|進学後の生活やすべきことを解説
希望の指導教員(研究室)を選択する
大学院入試では、希望の指導教員(研究室)を選択して出願することがほとんどです。そのためには、入学後に指導を希望する教員や所属を希望する研究室を事前に訪問し、教員や研究室の雰囲気を実際に確認しておくことが重要です。
また、教員に連絡を取り、希望する研究テーマについて指導を受けられるかどうかについても事前に確認(相談)しておくことをおすすめします。事前確認が必須でない場合でも、自分の研究テーマや研究手法とのミスマッチを防ぐために、連絡しておくとよいでしょう。それにより、自分が希望する研究計画に沿った研究活動が行えるかどうか判断できます。
受験方式を決める
大学院入試では、一般入試、特別選考入試、社会人入試などの受験方式が用意されています。それぞれの入試形態を理解したうえで、自分に合ったものを選びましょう。
院試とは?受験時期やスケジュール・研究計画書についてわかりやすく解説
出願に必要な書類を用意する
出願には、願書、成績証明書、卒業(見込)証明書、志望理由書、研究計画書などの書類の提出が必要です。研究計画書には、研究テーマとその意義、研究方法、年次計画などを具体的に記載します。書類の作成には多くの時間がかかるため、余裕を持ってとりかかりましょう。
大学院進学に必要な研究計画書に記載すべき項目とポイントを解説
勉強を始める
過去問題を分析したり、関連分野の文献を読み込んだりして、しっかりと準備を行いましょう。勉強には十分な時間を確保し、計画的に進めることが重要です。
まとめ:自分の興味や将来のキャリアプランを明確にして進路を決めよう
大学院進学と就職、どちらを選ぶかは個人の目標や状況によって異なります。大学院進学は専門性を高め、研究職などの特定の職種に就きやすい一方で、経済的コストがかかります。就職は早い段階で実務経験を積める、経済的自立が早いという魅力がある反面、専門職への道が限られる点がデメリットです。
大学院進学と就職のどちらを選ぶか決めるうえで重要なのは、自分の興味や将来のキャリアプランを考慮することです。本記事で紹介したそれぞれに向いている人の特徴やメリット・デメリットの内容も参考にして、大学院進学と就職のどちらを選ぶのか検討してください。
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