研究・教育

大学院で学ぶデータサイエンスとは?研究する意義や重要性を解説

さまざまなデータの分析や解析を行い有益な洞察を導き出す「データサイエンス」は、現代社会で需要が高く、人気が高まっている研究分野の一つです。

本記事ではデータサイエンスの重要性や大学院でデータサイエンスを学ぶ意義について解説します。後半では、中央大学大学院でデータサイエンスを研究できる研究科・専攻を紹介します。

データサイエンスとは

初めに、データサイエンスとは何かを把握しておきましょう。データサイエンスとは、統計学や機械学習、プログラミングなどの理論を活用しながらデータの分析や解析を行い、有益な洞察を導き出す研究分野です。データサイエンスは、効果的な施策の提案や新たな価値創出に役立てる上で有効であるとされており、近年期待が高まっています。

ビッグデータなどから必要な情報を収集・抽出・分析し、ビジネスの状況改善に向けた施策を立案する職種を「データサイエンティスト」と言います。データサイエンティストには「データをどう分析し、そこから有益な情報をどう抽出するのか」、さらには「その情報を使ってどのような行動をするか」が期待されています。データ活用は、特定の分野や業界だけではなくあらゆる場面で不可欠なため、現在、データサイエンティストの育成が急務とされています。

データサイエンスの重要性

インターネットとビッグデータ、AIの時代を迎え、データサイエンスの重要性はますます高まっています。デジタル技術の発展により、あらゆる分野の「ビッグデータ」が蓄積しやすくなったことにより、会社の経営や社会問題、環境問題などの改善に役立つデータの取得と解析が可能になりました。

データという証拠に基づいた合理的な政策立案プロセスを確立していくことは、あらゆる分野での問題解決に不可欠です。データサイエンスは、環境問題や食糧問題などの社会的な課題をはじめ、企業の経営改善や新規事業の開発に役立つことが期待されています。

データサイエンスが活かせる分野

データサイエンスを活かせる分野は、非常に幅広く、実際にデータサイエンティストを募集している業界は数多く存在します。その一例として以下を挙げます。

  • 情報通信産業
  • エネルギー業
  • 小売業
  • 金融・保険業
  • ヘルスケア
  • 運輸・物流
  • EC・広告
  • アパレル など

このように、データサイエンスは、様々な産業や経済の活性化に役立ちます。以下ではデータサイエンス技術が社会実装されている例を3つ挙げて説明します。

  1. 画像認識
  2. 広告の成果分析
  3. 金融商品価格の予測

1.画像認識

画像認識はデータサイエンスが大きく役立つ分野です。データをAIに学習させることで、画像や動画に何が写っているのかを解析できます。例えば物流では、商品情報を学習させたAIを導入することで、商品の特定と選択が自動化され、ピッキング作業の効率が大幅に向上します。

2.広告の成果分析

広告の売上や費用のデータがあれば、AIに学習させることで、それぞれの広告手段がどれだけ成果に直結しているのかを測定できます。

例えばテレビ番組のCMにより売上が上がった際にSNSなどの他の要因が関係していないか、ただ売上に繋がりやすい顧客層がCMを見てただけだったのではないかなどを、検証できます。

3.金融商品価格の予測

金融業界では金融商品価格の将来予測に、時間の経過にともなう市場や価格の変化を学習したAIが使われています。マーケットのデータを読み込ませ、人間では気付きにくい法則性を取り入れることで、データの複雑な関係を考慮した、精度の高い価格予測を実現しています。

特に金融業界ではAIのニーズが上がっています。経験のある社員が培った知識や判断力をモデル化することで、マニュアル化しにくいノウハウを社内に蓄積できます。また、国や産業、企業など様々な情報を取り入れたAIを作成することで、グローバル化や産業構造の変化に市場の複雑化にも対応できることも要因です。

大学院でデータサイエンスを学ぶ意義

大学院でデータサイエンスを学ぶメリットとして、以下の3点が挙げられます。

  1. 幅広い分野の知見を体系的に習得できる
  2. 自分の市場価値を高められる
  3. 社会で活躍するためのスキルを習得できる

それぞれについて解説します。

1.幅広い分野の知見を体系的に習得できる

大学院では、データサイエンスに必要な統計学やプログラミング言語、機械学習などの数多くの分野を一通り学べます。データサイエンスを学べるテキストやコース、講習などもありますが、体系的に学べるところはまだ少なく、独学には限界があります。

また、専門知識の豊富な教員のもとで研究に打ち込める環境が整っていることも、大学院ならではの魅力です。学会などに参加する機会もあり、自分の視野を広げるチャンスに恵まれています。

実際に、社会人として一度職に就いてからデータサイエンスの重要性に気づき、データサイエンスを専門にした大学院に入学するケースも見られます。

2.自分の市場価値を高められる

現在、大学院でデータサイエンスを専攻している学生は非常に少ないです。今から大学院で学び専門性を高めておけば、あらゆる分野で重宝されるでしょう。

また、データサイエンティストは現時点でも人材不足の傾向にあるにもかかわらず、今後さらに需要が高まるとされています。一度データサイエンスを身につければ大きな武器となるでしょう。

3.社会で活躍するためのスキルを習得できる

データサイエンスを通して、社会で活躍するために必要なポータブルスキルを習得できます。ポータブルスキルとは、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキルで、習得すれば、社会に出てからの活躍の場が一層広がります。データサイエンスを通して身につくスキルの一例は、以下の通りです。

  • 論理的思考力
  • データ分析力
  • プレゼンテーション力
  • 問題解決力

大学院で研究できるデータサイエンスの基礎

大学院ではデータサイエンスについてどのようなことを学べるのかを解説します。

  • 統計学や機械学習の理論
  • 情報工学の基礎
  • データサイエンスの社会実装

統計学や機械学習の理論

大学院のプログラムでは、統計学と機械学習の理論的な背景と実用的なスキルを深く学びます。データサイエンスの分野では、統計学と機械学習は非常に重要な基盤をなしています。

統計学はデータの特徴や規則性を分析する学問です。回帰分析や時系列分析などの手法を学び、データから有意なパターンを抽出したり、影響の大きい変数を特定したりします。

機械学習はAIに大量のデータを読み込ませ、データのパターンを探る技術です。この技術を使って、コンピュータは画像を認識したり、音声を理解したり、さらには複雑な予測や意思決定を行うことができます。大学院のプログラムでは、このような機械学習アルゴリズムをどのように設計し、実際に応用するかを学びます。

情報工学の基礎

情報工学はコンピュータの設計や開発、応用について学ぶ学問です。

データサイエンスを実用するには、計算を実行するコンピュータへの理解も欠かせません。コンピュータがどのように機能するか、どのように活用すれば複雑なデータを解析できるのかを理解しておくことは、データサイエンスの実務にも大きく関わります。

大学院ではハードウェアやソフトウェア、プログラミング言語に対する理解から始まり、アルゴリズムの設計やデータベースの管理方法を学習できます。また、データのセキュリティなど法的な部分に関する理解も深められます。特にコンピュータの基本設計であるコンピュータアーキテクチャについての知識は、計算のパフォーマンスを最適化するのに不可欠です。

データサイエンスの社会実装

大学院では、技術的なスキルだけでなく、データサイエンスを社会で用いる方法や、与える影響についても学びます。

例えば、貧困率の地域間変動、犯罪発生パターン、感染病のリスク分布などのデータを分析し、それらを政策立案に活かす方法を研究します。その他、ビジネス戦略や都市計画など研究分野は多岐にわたります。

研究を行うに連れてデータ倫理についての理解も深まるでしょう。個人情報の保護、データの正しい利用、バイアスのない分析方法など、データサイエンスが社会に与える影響を考慮した倫理感が身につきます。

大学院修了後に拓ける進路

大学院でデータサイエンスを学べば、情報産業や金融業、製造業、インフラ業、建設業などに業界もさまざまな一般職に就職することが可能です。また、データサイエンスは、市場のニーズをリサーチしたり、新製品の開発に携わったりする研究開発職と特に親和性が高いと言えます。さらに、専門知識を活かしてITコンサルタントとして就職するケースもあるようです。

このように、データサイエンティストは幅広い業界で必要とされているため、活躍できる場も幅広く存在します。

中央大学大学院データサイエンスを研究する

中央大学大学院では、「理工学研究科ビジネスデータサイエンス専攻」と「国際情報研究科」でデータサイエンスを研究できます。

理工学研究科では、社会や地球環境を考慮に入れた広い視野に立ち、情報技術を含めた工学的手法の適用を通して、よりよい組織運営を実現するための方法論の教育と研究を行います。

国際情報研究科では、情報化とグローバル化が急激に進展し、加速度的に社会が変化していくなかで、「情報学と法学を統合し、社会のグランドデザインを主導する人材」となるために必要なスキルを修得します。

博士前期(修士)課程では、これらの専門分野で指導的な役割を果たすことのできる技術者・研究者を育成します。博士後期(博士)課程では、より高度な研究活動を通して、自立して研究を遂行する知識と能力を持つ研究者・技術者を養成します。

具体的な授業・研究内容

具体的な研究内容の一部は、以下の通りです。

  • 経営のグローバル化
  • サービス産業の伸展に適応した品質・環境マネジメントの理論と応用
  • 顧客の潜在ニーズを把握する手法の開発と新製品開発への応用
  • 信頼性及び製品安全評価と確保の基礎理論と応用
  • 情報と補完性に着目した企業経営のあり方、データ解析のための統計モデルと方法論

幅広い分野の知見を体系的に習得できる

ビジネスデータサイエンス専攻の属する理工学研究科と国際情報研究科は、いずれも都心キャンパスにあり、企業や他の研究機関との共同研究を行いやすい環境にあります。また、教育・研究上必要な機能を備えた先進的な情報処理施設・環境が整えられているため、研究を深める場として最適です。

まとめ:需要の高まるデータサイエンス

データサイエンスは需要の高まる分野の一つです。データ活用はあらゆる分野や業界で不可欠であるため、人材育成が急務であると言われています。データサイエンティストになりたい方・専門性を磨きたい方は、大学院で研究に励むことも視野に入れるとよいでしょう。