大学院で研究する内容は、専門性が非常に高いです。学部ではある程度幅広い分野を学びますが、大学院では特定分野に絞った研究を行うため、より深い知識と技術が必要です。
また、専門職大学院と一般的な大学院でも学ぶ内容や専門性が異なるので、進学するにあたり、あらかじめ違いを把握しておく必要があります。
そこで本記事では、学部と大学院の専門性の違い、一般的な大学院と専門職大学院の違いを紹介します。
学部と大学院の専門性の違い
学部と大学院の専門性をまとめた内容は、以下の通りです。
項目 | 学部 | 大学院 |
学問的な深度と広がり | 幅広い知識を提供する | 専門分野に焦点を当て、より深く研究する |
研究と応用 | 教育を中心に提供する | 研究を行うことに重点を置き、高度で実践的な知識・技能を身につけられる |
学問的な深度と広がり
学部と大学院の専門性の大きな違いは、学問的深度と広がりです。
大学の学部は、幅広い知識を提供することを目的としています。例えば文学部では、英語や日本語、フランス語など多様な言語をはじめ、文学や歴史、哲学などの広範な分野について学びます。また理学部では、物理学や化学、生物学など幅広い科目について学びます。入学時から専攻が分かれている場合でも、その分野の基礎的な知識を広く習得できるカリキュラムとなっていることが多いです。文系・理系問わず、専門科目のほかにいわゆる”一般教養”の科目の履修もあります。
一方の大学院は、特定の専門分野に焦点を当て、より深く研究を行うことを目的としています。例えば文学研究科では、英文学や日本文学、フランス文学のなかでも、特定の作家や作品を対象に研究を行うなど、特定の専門分野について、より高度な知識や研究技能を身につけられます。
研究と応用
大学の学部は、基礎的な知識を提供することが主な目的であり、実践的な応用は必須ではありません。学部生は講義形式やグループワークなどを通して幅広い知識を習得しますが、その知識をどのように応用するかは個人の選択に委ねられていることが多いです。
大学院は、より高度な知識と研究技能を身につけるため、研究が重要な役割を果たします。教員や研究者と協力して研究プロジェクトに取り組み、研究論文を執筆することもあります。学会に参加して研究成果を発表する機会もあります。
大学院と専門職大学院の違い
ここでは、大学院と専門職大学院の違いを解説します。
項目 | 大学院 | 専門職大学院 |
学ぶ目的 | 研究者の養成、高度な専門知識・技能の習得 | 実務家の養成、専門的な実践的知識・能力の習得 |
学位 | 博士、修士 | 専門職学位 |
授業形式 | 学術研究を重視した講義・演習・研究指導 | 実務重視の講義・演習・実習 |
希望する職業 | 研究者、大学教員、専門職、中学・高等学校教員 | 弁護士、公認会計士、MBA、教員など、具体的な職種に合わせた専門的な職業 |
受験資格等 | 学部卒業・大学院入試、研究計画書の提出 | 学部卒業・大学院入試、または特別な要件を満たした上での受験 |
卒業後の進路 | 大学・研究機関・企業・公的機関など | 希望する職種に就職または開業 |
大学院
一般的な大学院では、研究を遂行するために必要な高い研究能力、その基礎となる専門的な知識を養います。修士課程(博士前期課程)と博士課程(博士後期課程)に分かれており、修了後の進路もさまざまです。大学院によって差はありますが、設置されている研究科は多岐にわたります。
大学院に進学すれば、学部で身につけた知識をさらに深めながら特定分野を研究し、研究者を目指せます。研究者のほかにも、専門職や中学・高等学校の教員等、特定分野の専門性を活かせる進路に進む人も多いです。また、研究を通して得られた専門知識や能力を元に公的機関や民間企業で働きたいという場合も、一般的な大学院への進学を検討するとよいでしょう。
専門職大学院
専門職大学院は、グローバル化や社会の変化に適応する実務家を育成するための大学院です。専門職大学院では、現場で活躍する実務家や教員からより実践的な指導を受けられます。
例えば法科大学院(ロースクール)は、法律に従事する人材(法曹)の養成を行います。法科大学院を修了すれば、司法試験の受験資格を得ることが可能です。そのほかにも、会計大学院やMBA大学院、MOT大学院、教職大学院など職業別に専門職大学院があります。
専門職大学院で得た知識や能力は、現場での即戦力として大いに活かせます。専門職大学院への進学は、弁護士や会計士、教員など特定の職業に就きたい場合に適しているでしょう。
なお、大学院と専門職大学院は、大学によって運営形態や専攻分野がさまざまです。具体的な情報は、各大学のウェブサイトや入試情報を確認しましょう。
進学する大学院を選ぶ際のポイント
一般的な大学院と専門職大学院のどちらに進学するかは、進学する目的や志望する職種に合わせて選択するのが望ましいです。
一般的な大学院は、学術研究を志す人や教育・研究者を目指す人に向いています。学部教育で得た知識を深め、専門的な研究に取り組むことで、大学教員や研究者、公的機関の職員など、専門性の高い知識や技能が求められる分野でのキャリアを目指せます。また、大学院での研究経験は企業や官公庁などの公的機関、民間企業でも評価されるため、幅広いキャリアを選択できます。他にも、中学・高等学校教員、学芸員や心理職をはじめとする専門職も一般的な大学院修了後の進路として挙げられます。
一方の専門職大学院は、職業に特化した実践的な教育を受けたい人に向いています。法科大学院、会計大学院、MBA大学院、教職大学院など職種によって異なりますが、実践的なスキルや専門知識を習得することで就職や昇進の際に評価されることがあります。そのため、法曹や公認会計士、教員など目指す職業が明確な人に適しているでしょう。
一般的な大学院の選ぶ際のポイント
一般的な大学院への進学を検討する場合、以下のポイントを検討しながら進学先を決めましょう。
- 自身が希望する研究テーマで研究科ができる大学院か、あるいはその大学院の教員の研究分野に興味があるか
- 研究環境が整っているか
- 研究費や奨学金などの支援があるか
- 学生生活を送りやすい環境か
- 修了後の進路(研究者や大学教員、各種専門職を目指す、企業や官公庁への就職を目指すなど)に合ったカリキュラムがあるか
専門職大学院の選ぶ際のポイント
専門職大学院への進学を検討する場合、以下のポイントを検討しながら進学先を決めましょう。
- 就きたい職業に必要な資格や能力を取得できるか
- 実践的な知識や能力を身につけられるカリキュラムがあるか
- 修了後の進路につながるカリキュラムがあるか
- 専門職大学院の卒業生の就職実績や評判がどうか
- 学生生活を送りやすい環境か
進路を決定する前には、各大学院の公式サイトや資料をしっかりと確認し、入念な情報収集を行うことも大切です。
まとめ:高い専門性を習得できる大学院
大学院では、研究指導教員の指導のもと高度な研究活動を行うため、高い学識が求められます。研究を通して自分の専門性を磨けるので、将来の選択肢も広がるでしょう。大学院には一般的な大学院と専門職大学院の2種類があります。研究したいことやキャリアを考えたうえでどちらに進学するか検討しましょう。